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83 countless eyes★(1)

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「本当に……大丈夫?」

 落ち込み項垂れた様子のロミオの手を引き、ベッドに上がると彼が顔を曇らせ心配そうに聞いた。ここでやはり嫌だと言えば、きっと彼は戦ってくれるだろう。

 けれど、どれだけエレクゼイドが力を持っているのかわからないが、自分たち三人は無事に済むとは到底考えられない。

 もし怪我もなく、全員無事で帰りたいと思うのなら。是も非もなくこれをしないと、生きては帰れないだろう。

 ミルドレッドは、彼と目を合わせたままでしっかりと頷いた。

 こちらの生きて帰して欲しいと言う勝手な願いを聞いてくれたエレクゼイドという、とてつもなく力を持つ魔物から見れば、自分の住んでいる洞窟を荒らすという契約違反は許し難いことのはずだ。

 彼にとってみればただの気まぐれで、軽く殺せてしまえる存在を生きて帰してくれるという譲歩してくれるというのだから。どんな条件だとしても、諾々と呑むべきだろう。

「ロミオ。私は、大丈夫だから……いつも通りに、して」

 ミルドレッドが彼の蒼い目を真っ直ぐに見てそう伝えれば、ロミオは顔を歪め一度エレクゼイドが座ったままでいる後方を見て、無数の数え切れない目が浮かぶ周囲を見渡して、そしてもう一度向き直って言った。

「わかった。君がそう言うなら……そうする。俺の事だけ、見ていて。他に何も見ないで。俺の声だけ……聞いて」

 ロミオが震える声でそう言うと、冷やかすような口笛や彼ら特有の言葉なのか。こちらには意味がわからない囁きが、方々から聞こえた。

(大丈夫。こんなの、全然大した事じゃない。ロミオと、生きたい。それを叶えたい。誰よりも愛している人と、これからもずっと生きたい)

 はじまりの口づけは、ミルドレッドがした。

 いつもは彼からされるままで、何もかもして貰うばかりだった。ちゅっと音をさせて一度顔を離すと、ロミオは少し呆気に取られた驚いた顔をしていた。

 そういうことに慣れてないミルドレッドがそんな事をするとは、思ってもいなかったに違いない。そんな彼に不意打ちを重ねるように、また顔を近づけてちろりと舌を出すとロミオはやっと我に返ったようになり柔らかな舌を吸い込み絡ませる。

 小さな水音が響き、周囲は水を打ったようにしんとした。

 粘膜の接触に没頭している二人を観察しているような、無数の視線を感じた。剥き出しになっている腕の柔肌に刺さるような、とても無遠慮なものだ。

 今の状況を如何ともし難いのか、辛そうに顔を歪めたロミオはこの状況にあったとしても出来るだけ服を脱がさないように済ませたいらしい。舌を絡ませつつ服の上から胸の膨らみを撫で回し、胸の尖りを掴むように刺激した。

 思わず口を離して高い声を出したミルドレッドに、ロミオは一度触れるだけのキスをした。聖女の身分を表す白い服の裾を捲り、その中に手を入れて愛撫をしようとしてか、一度身を引こうとした。

「……服も、脱いでくれ。良く見えない」

 この空間の中で、間違いなく君臨する王のような幼い少年を振り返り、彼の正体を表すような超然とした表情にロミオは息をついた。

 エレクゼイドは二人の戸惑いをも面白がっているようにも、その行為は本当にどういったものなのかと興味深そうにも見える。

 彼の言葉を聞いたロミオは眉を寄せ困った顔をして、これをどうするかと伺うようにミルドレッドに目を向けた。

「私は、大丈夫。大丈夫だから……続けて」

 ミルドレッドは凛とした声で、それを言った。

(そうしないと、きっと生きては帰れない……彼を失ってしまうなんて、考えられない。絶対に嫌)

 ミルドレッドが今一番怖いのは洞窟を荒らしたのはお前だからと、このロミオ一人だけを殺されてしまう事だった。ここで自分が我慢すれば彼の命が助かるのなら、何だってするつもりだった。

 覚悟を決めて立ち上がり自ら服を落とすと、周囲に居る魔物たちが息を呑んだような音が聞こえた。唖然としている表情を浮かべたままのロミオの前で続いて下着も、脱いだ。

 闇の中に眩く光るような白い肌が晒されて、エレクゼイドは満足そうな声で言った。

「美しい……それがどうやって乱れるのか。見せてくれ。僕たちが満足出来るように」
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