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「あー……なんか。すごく買って貰ったんだね。良かったね。多分。ロミオの鞄の中にも、沢山の贈り物が、どうせ入ってんだろうけど?」
アランは待ち合わせ場所にしていた広場まで来て、ロミオと彼の事を待っていたミルドレッドの持っている大きな花束とひと目見ればわかる程に高級な首飾りを見て、驚きに目を丸くした。
可愛らしいお店でお茶を飲んだ後に買い物をしようと二人で歩き出し、ミルドレッドが大通りにある店に興味を示せば、ロミオが欲しそうだと判断した物をなんでもあっさりと買ってしまうからだ。
最終的には「こんなに沢山は、要りませんから!」と主張しなければ、彼は店ごと買ってしまいそうだった。
彼に話し掛けられたミルドレッドが何かを言うより前に、ロミオがアランに低い声で言った。
「どうだった?」
「上々。依頼主が言ってる事は、間違いない。けど、あの洞窟の奥に迷い込んでも、特に問題なく出て来たって話もある。中はそれほど強いモンスターが居たという話は、なかった。まあ、供物捧げていればそれで済む約束なら、それを続けていれば良さそうなもんだけどねー」
よく分からないとアランが首を捻りつつ苦笑すると、ロミオが渋い表情をした。
「それは……俺に言うなよ。ま、どっちにしても、入ってからの出たとこ勝負になるな。明日辺りから、浅いところからマッピングしていくか」
「りょーかい。今はもう何処のダンジョンも、入る前に完全な地図が買えるもんなー……延々道が変わり続ける暗黒迷宮は、置いといて。新規のダンジョンなんて、俺たち初めてじゃね? 久々に楽しくなってきたー」
腕が鳴るとウキウキした様子のアランは、購入した情報を書いてあるのか一枚の紙をロミオへと渡した。ロミオはそれを一瞥してから、胸のポケットへと仕舞った。
自分一人だけ完全に置いてけぼりで進んでいく彼らの会話に、ミルドレッドは不思議そうに首を傾げた。
(そういえば、ロミオがまだ神殿に居るのは、何か仕事をしなければいけないからと言っていた。その仕事って、神殿の近くの新規のダンジョンの開拓……?)
数多の冒険者たちが職場としているモンスターが数多く棲むダンジョンは、もうあらかた踏破されているはずだ。ダンジョンの主と呼ばれるモンスターは、必ず定期的に蘇り彼らの守る宝箱には、何かが入っている。復活を繰り返す、彼らの王と同じように。
「さ。帰ろ帰ろ。俺の手握ってね。ロミオ、そんな顔で見るなよ。俺がこうしているの、お前に頼まれたからだし。全然悪くないからね」
ミルドレッドがアランに促されるままに彼の手を握れば、一瞬で周囲の景色は溶けた。
アランは待ち合わせ場所にしていた広場まで来て、ロミオと彼の事を待っていたミルドレッドの持っている大きな花束とひと目見ればわかる程に高級な首飾りを見て、驚きに目を丸くした。
可愛らしいお店でお茶を飲んだ後に買い物をしようと二人で歩き出し、ミルドレッドが大通りにある店に興味を示せば、ロミオが欲しそうだと判断した物をなんでもあっさりと買ってしまうからだ。
最終的には「こんなに沢山は、要りませんから!」と主張しなければ、彼は店ごと買ってしまいそうだった。
彼に話し掛けられたミルドレッドが何かを言うより前に、ロミオがアランに低い声で言った。
「どうだった?」
「上々。依頼主が言ってる事は、間違いない。けど、あの洞窟の奥に迷い込んでも、特に問題なく出て来たって話もある。中はそれほど強いモンスターが居たという話は、なかった。まあ、供物捧げていればそれで済む約束なら、それを続けていれば良さそうなもんだけどねー」
よく分からないとアランが首を捻りつつ苦笑すると、ロミオが渋い表情をした。
「それは……俺に言うなよ。ま、どっちにしても、入ってからの出たとこ勝負になるな。明日辺りから、浅いところからマッピングしていくか」
「りょーかい。今はもう何処のダンジョンも、入る前に完全な地図が買えるもんなー……延々道が変わり続ける暗黒迷宮は、置いといて。新規のダンジョンなんて、俺たち初めてじゃね? 久々に楽しくなってきたー」
腕が鳴るとウキウキした様子のアランは、購入した情報を書いてあるのか一枚の紙をロミオへと渡した。ロミオはそれを一瞥してから、胸のポケットへと仕舞った。
自分一人だけ完全に置いてけぼりで進んでいく彼らの会話に、ミルドレッドは不思議そうに首を傾げた。
(そういえば、ロミオがまだ神殿に居るのは、何か仕事をしなければいけないからと言っていた。その仕事って、神殿の近くの新規のダンジョンの開拓……?)
数多の冒険者たちが職場としているモンスターが数多く棲むダンジョンは、もうあらかた踏破されているはずだ。ダンジョンの主と呼ばれるモンスターは、必ず定期的に蘇り彼らの守る宝箱には、何かが入っている。復活を繰り返す、彼らの王と同じように。
「さ。帰ろ帰ろ。俺の手握ってね。ロミオ、そんな顔で見るなよ。俺がこうしているの、お前に頼まれたからだし。全然悪くないからね」
ミルドレッドがアランに促されるままに彼の手を握れば、一瞬で周囲の景色は溶けた。
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