65 / 91
65 adonis(1)
しおりを挟む
「あー……なんか。すごく買って貰ったんだね。良かったね。多分。ロミオの鞄の中にも、沢山の贈り物が、どうせ入ってんだろうけど?」
アランは待ち合わせ場所にしていた広場まで来て、ロミオと彼の事を待っていたミルドレッドの持っている大きな花束とひと目見ればわかる程に高級な首飾りを見て、驚きに目を丸くした。
可愛らしいお店でお茶を飲んだ後に買い物をしようと二人で歩き出し、ミルドレッドが大通りにある店に興味を示せば、ロミオが欲しそうだと判断した物をなんでもあっさりと買ってしまうからだ。
最終的には「こんなに沢山は、要りませんから!」と主張しなければ、彼は店ごと買ってしまいそうだった。
彼に話し掛けられたミルドレッドが何かを言うより前に、ロミオがアランに低い声で言った。
「どうだった?」
「上々。依頼主が言ってる事は、間違いない。けど、あの洞窟の奥に迷い込んでも、特に問題なく出て来たって話もある。中はそれほど強いモンスターが居たという話は、なかった。まあ、供物捧げていればそれで済む約束なら、それを続けていれば良さそうなもんだけどねー」
よく分からないとアランが首を捻りつつ苦笑すると、ロミオが渋い表情をした。
「それは……俺に言うなよ。ま、どっちにしても、入ってからの出たとこ勝負になるな。明日辺りから、浅いところからマッピングしていくか」
「りょーかい。今はもう何処のダンジョンも、入る前に完全な地図が買えるもんなー……延々道が変わり続ける暗黒迷宮は、置いといて。新規のダンジョンなんて、俺たち初めてじゃね? 久々に楽しくなってきたー」
腕が鳴るとウキウキした様子のアランは、購入した情報を書いてあるのか一枚の紙をロミオへと渡した。ロミオはそれを一瞥してから、胸のポケットへと仕舞った。
自分一人だけ完全に置いてけぼりで進んでいく彼らの会話に、ミルドレッドは不思議そうに首を傾げた。
(そういえば、ロミオがまだ神殿に居るのは、何か仕事をしなければいけないからと言っていた。その仕事って、神殿の近くの新規のダンジョンの開拓……?)
数多の冒険者たちが職場としているモンスターが数多く棲むダンジョンは、もうあらかた踏破されているはずだ。ダンジョンの主と呼ばれるモンスターは、必ず定期的に蘇り彼らの守る宝箱には、何かが入っている。復活を繰り返す、彼らの王と同じように。
「さ。帰ろ帰ろ。俺の手握ってね。ロミオ、そんな顔で見るなよ。俺がこうしているの、お前に頼まれたからだし。全然悪くないからね」
ミルドレッドがアランに促されるままに彼の手を握れば、一瞬で周囲の景色は溶けた。
アランは待ち合わせ場所にしていた広場まで来て、ロミオと彼の事を待っていたミルドレッドの持っている大きな花束とひと目見ればわかる程に高級な首飾りを見て、驚きに目を丸くした。
可愛らしいお店でお茶を飲んだ後に買い物をしようと二人で歩き出し、ミルドレッドが大通りにある店に興味を示せば、ロミオが欲しそうだと判断した物をなんでもあっさりと買ってしまうからだ。
最終的には「こんなに沢山は、要りませんから!」と主張しなければ、彼は店ごと買ってしまいそうだった。
彼に話し掛けられたミルドレッドが何かを言うより前に、ロミオがアランに低い声で言った。
「どうだった?」
「上々。依頼主が言ってる事は、間違いない。けど、あの洞窟の奥に迷い込んでも、特に問題なく出て来たって話もある。中はそれほど強いモンスターが居たという話は、なかった。まあ、供物捧げていればそれで済む約束なら、それを続けていれば良さそうなもんだけどねー」
よく分からないとアランが首を捻りつつ苦笑すると、ロミオが渋い表情をした。
「それは……俺に言うなよ。ま、どっちにしても、入ってからの出たとこ勝負になるな。明日辺りから、浅いところからマッピングしていくか」
「りょーかい。今はもう何処のダンジョンも、入る前に完全な地図が買えるもんなー……延々道が変わり続ける暗黒迷宮は、置いといて。新規のダンジョンなんて、俺たち初めてじゃね? 久々に楽しくなってきたー」
腕が鳴るとウキウキした様子のアランは、購入した情報を書いてあるのか一枚の紙をロミオへと渡した。ロミオはそれを一瞥してから、胸のポケットへと仕舞った。
自分一人だけ完全に置いてけぼりで進んでいく彼らの会話に、ミルドレッドは不思議そうに首を傾げた。
(そういえば、ロミオがまだ神殿に居るのは、何か仕事をしなければいけないからと言っていた。その仕事って、神殿の近くの新規のダンジョンの開拓……?)
数多の冒険者たちが職場としているモンスターが数多く棲むダンジョンは、もうあらかた踏破されているはずだ。ダンジョンの主と呼ばれるモンスターは、必ず定期的に蘇り彼らの守る宝箱には、何かが入っている。復活を繰り返す、彼らの王と同じように。
「さ。帰ろ帰ろ。俺の手握ってね。ロミオ、そんな顔で見るなよ。俺がこうしているの、お前に頼まれたからだし。全然悪くないからね」
ミルドレッドがアランに促されるままに彼の手を握れば、一瞬で周囲の景色は溶けた。
5
お気に入りに追加
288
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
魔力なしと虐げられた令嬢は孤高の騎士団総長に甘やかされる
橋本彩里(Ayari)
恋愛
五歳で魔力なしと判定され魔力があって当たり前の貴族社会では恥ずかしいことだと蔑まれ、使用人のように扱われ物置部屋で生活をしていた伯爵家長女ミザリア。
十六歳になり、魔力なしの役立たずは出て行けと屋敷から追い出された。
途中騎士に助けられ、成り行きで王都騎士団寮、しかも総長のいる黒狼寮での家政婦として雇われることになった。
それぞれ訳ありの二人、総長とミザリアは周囲の助けもあってじわじわ距離が近づいていく。
命を狙われたり互いの事情やそれにまつわる事件が重なり、気づけば総長に過保護なほど甘やかされ溺愛され……。
孤高で寡黙な総長のまっすぐな甘やかしに溺れないようにとミザリアは今日も家政婦業に励みます!
※R15については暴力や血の出る表現が少々含まれますので保険としてつけています。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*表紙イラスト/倉河みおり様
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
本日をもって、魔術師団長の射精係を退職するになりました。ここでの経験や学んだことを大切にしながら、今後も頑張っていきたいと考えております。
シェルビビ
恋愛
膨大な魔力の引き換えに、自慰をしてはいけない制約がある宮廷魔術師。他人の手で射精をして貰わないといけないが、彼らの精液を受け入れられる人間は限られていた。
平民であるユニスは、偶然の出来事で射精師として才能が目覚めてしまう。ある日、襲われそうになった同僚を助けるために、制限魔法を解除して右手を酷使した結果、気絶してしまい前世を思い出してしまう。ユニスが触れた性器は、尋常じゃない快楽とおびただしい量の射精をする事が出来る。
前世の記憶を思い出した事で、冷静さを取り戻し、射精させる事が出来なくなった。徐々に射精に対する情熱を失っていくユニス。
突然仕事を辞める事を責める魔術師団長のイースは、普通の恋愛をしたいと話すユニスを説得するために行動をする。
「ユニス、本気で射精師辞めるのか? 心の髄まで射精が好きだっただろう。俺を射精させるまで辞めさせない」
射精させる情熱を思い出し愛を知った時、ユニスが選ぶ運命は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる