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27 帰り道②
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「僕の言ってること信じられない?」
「う、ううん。これは、鷹羽くん側でなくて私の問題。私なんかに、鷹羽くんに好きになってもらう要素あるのかなって……そう思っただけ」
「私なんかって?」
少し真面目な顔をして鷹羽くんは私を見た。
「私みたいな……その、何の取り柄もない人間にって思っちゃって」
「許せないな」
「えっ?」
「僕の好きな人にそんなこと言って欲しくない。例え、有馬本人でも」
私のことをじっと見つめる眼鏡の奥が真剣だから、私はふっと笑ってしまった。
ふわふわ雲の上を歩いている気分。帰り道はあの曲がり角を曲がったらもう家に着く。この道がずっとずっと続けば良いのになんて、そんなことを思ってしまった。
「変なの」
「変? なんで?」
「私のことで鷹羽くんが怒るなんて変だよ」
「どうして……僕は有馬が好きなのに」
私は立ち止まってはあって息をついた。顔が熱くて、暗い中街灯の光しかなくて本当に良かったと思ってしまった。
「もうむり。心臓……飛び出る……」
「え?」
「良くそんなこと言えるよね。……慣れてる?」
「そんなことないよ。自分から告白したのは……これで最初」
「……告白されたのは?」
ぐっと鷹羽くんは詰まった。そうだよね。なんだか、意地悪な気持ちで思った。
同学年の子も人気なんだけど、鷹羽くんはこの春に後輩になった一年生の子達にも人気あるものね。
「有馬が本当に聞きたいなら、ちゃんと言う」
「ふっ……ごめん。ちょっと意地悪したかっただけだよ」
私の笑った顔を見て鷹羽くんは顔をしかめた。もっとも薄明かりだからもしかしたら彼は笑っているのかもしれない。今はそれがどっちだかわからないくらい、そのくらいの暗さだ。
「有馬は……明日からも、あの虎井と付き合うふりするの?」
「あ、そうだ。それは、忘れてた」
私はそれを聞いて、慌ててしまった。
その辺の話をどうするのか、行高と話するのを忘れてた。
けれど、体育のサッカーの時に皆に言っていたようだし、当分は付き合っている振りをすることになるのかも。
「紹介してくれた寧々ちゃんと、話してみるね」
「うん。何も言わなかった僕のことでそうなったのは、これでもうわかっているんだけど……」
「けど?」
「気分良くないなって思っただけ。ごめん。全部、自業自得なんだけど」
曲がり角まで来た。私は鷹羽くんに向き直って言った。
「ここで良いよ。家すぐそこなの。送ってくれてありがとう」
「……うん。また明日ね。有馬」
にこっと笑った鷹羽くんの顔は、少しだけさみしそうに見えた。
「う、ううん。これは、鷹羽くん側でなくて私の問題。私なんかに、鷹羽くんに好きになってもらう要素あるのかなって……そう思っただけ」
「私なんかって?」
少し真面目な顔をして鷹羽くんは私を見た。
「私みたいな……その、何の取り柄もない人間にって思っちゃって」
「許せないな」
「えっ?」
「僕の好きな人にそんなこと言って欲しくない。例え、有馬本人でも」
私のことをじっと見つめる眼鏡の奥が真剣だから、私はふっと笑ってしまった。
ふわふわ雲の上を歩いている気分。帰り道はあの曲がり角を曲がったらもう家に着く。この道がずっとずっと続けば良いのになんて、そんなことを思ってしまった。
「変なの」
「変? なんで?」
「私のことで鷹羽くんが怒るなんて変だよ」
「どうして……僕は有馬が好きなのに」
私は立ち止まってはあって息をついた。顔が熱くて、暗い中街灯の光しかなくて本当に良かったと思ってしまった。
「もうむり。心臓……飛び出る……」
「え?」
「良くそんなこと言えるよね。……慣れてる?」
「そんなことないよ。自分から告白したのは……これで最初」
「……告白されたのは?」
ぐっと鷹羽くんは詰まった。そうだよね。なんだか、意地悪な気持ちで思った。
同学年の子も人気なんだけど、鷹羽くんはこの春に後輩になった一年生の子達にも人気あるものね。
「有馬が本当に聞きたいなら、ちゃんと言う」
「ふっ……ごめん。ちょっと意地悪したかっただけだよ」
私の笑った顔を見て鷹羽くんは顔をしかめた。もっとも薄明かりだからもしかしたら彼は笑っているのかもしれない。今はそれがどっちだかわからないくらい、そのくらいの暗さだ。
「有馬は……明日からも、あの虎井と付き合うふりするの?」
「あ、そうだ。それは、忘れてた」
私はそれを聞いて、慌ててしまった。
その辺の話をどうするのか、行高と話するのを忘れてた。
けれど、体育のサッカーの時に皆に言っていたようだし、当分は付き合っている振りをすることになるのかも。
「紹介してくれた寧々ちゃんと、話してみるね」
「うん。何も言わなかった僕のことでそうなったのは、これでもうわかっているんだけど……」
「けど?」
「気分良くないなって思っただけ。ごめん。全部、自業自得なんだけど」
曲がり角まで来た。私は鷹羽くんに向き直って言った。
「ここで良いよ。家すぐそこなの。送ってくれてありがとう」
「……うん。また明日ね。有馬」
にこっと笑った鷹羽くんの顔は、少しだけさみしそうに見えた。
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