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06 疑問符の嵐①
しおりを挟む「え?! 告白されたけど、断ったのー? なんで?!」
私は寧々ちゃんの素っ頓狂な声を聞いて、口に人差し指を当てて周りを確認した。結構な人数が私たちの近くを通り過ぎて、自分の教室へと向かっている。特に気にしてないみたいだ。よかった。
私に告白してきた相手が、まさか鷹羽くんだと思っていないせいなのかもしれない。
「鷹羽くんと付き合うなんて、考えらたこともないし……突然、告白されてもう頭が真っ白になっちゃって」
もうどうして良いかわからなかったのだ。口をもごもごしながら、私は答えた。
なんでって聞かれても、こっちがなんでって聞きたい。
「もったいない! あの鷹羽くんだよ?! 何が不満なの? 顔よし性格よし頭もよし、そして……」
「そして?」
「バスケ部で鍛えられた長身の身体もよし!」
はぁと私はため息をついた。寧々ちゃんは、すぐに暴走する。
けど、自分の中で留めておくには大きな出来事すぎて、朝来てすぐに人通りが少なめの廊下で、昨日図書室であったことを聞いてもらった。
最初は確かにひそひそ声だったけど、寧々ちゃんの声は興奮で、結構な音量になってきている。
「だって、良く知らないし……」
「付き合ってから、知ったら良いじゃーん。鷹羽くんと付き合えるなら、代わって欲しい人たくさん居ると思うよ?」
「確かに格好良いと思うけど……隣に立っていたとしたら別世界の住人だもん。付き合うなんて、考えたこともない。好きって良く分からなくて」
「もー、澪ってば、そんな恋愛なんてわからないみたいなこと言って……今からでも間に合うから、やっぱり私と付き合おうって言ったら?」
「え?」
寧々ちゃんは、意気揚々と私の顔を指さした。
「だって、澪。告白を断ったのを、後悔してるって顔に書いてある」
「そんなこと……」
ないよって言おうとして、私は顔を両手で覆った。顔に熱が集まって来た。
「わかる」
「なにが」
寧々ちゃんはメトロノームみたいにチッチッと指を左右に振った。
「あの鷹羽くんと、付き合えるんだよ? 悪魔に魂売っても良いって子も居ると思うようなこの状況だよ? 私も夢だと思うと思う。けど、絶対告白は断ってないと思う」
「言いたいことはわかるけど、そこまで?」
「例えば、だよー。分かってないなぁ」
「寧々ちゃん。もう。声大きいよ」
ヒートアップすると声が大きくなりがちな寧々ちゃんは、肩を竦めてぺろりと舌を出した。
「鷹羽くんは澪と付き合いたい、澪は鷹羽くんが気になる。じゃあ、付き合えば良いじゃん」
「気になるとか……別に、そういうのではなくて」
「なんなの」
私は腕組みをして考えた。昨日までは雲の上の人だと思って、正直言えば意識すらしていなかった。
そんな人を今、どう思って居るんだろう?
「すごく不思議。鷹羽くんから見て私の何が良いかも、良くわかんないもん」
そんな言葉が、しっくりときた。
あんな漫画や小説だと主人公かライバル役、主要キャラになるような人が、なんで背景と同化していてもおかしくないモブの私に告白して来たんだろう?
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