91 / 151
第一部
ナイトプール
しおりを挟む
「うわあっ、すごい! きれーい!! 子竜さんこのお部屋すごいです!」
私はプライベートプール付の部屋の大きな窓から見える、大きな満月が浮かぶ星空と海の共演に感動した。
ランチを食べたレストランからホテルへと移動した私たちはプールで遊んで疲れた後、せっかくだからとホテル内にあるエステでくつろいで夕飯を食べてから子竜さんにとっておきの景色があると言われてこの部屋へとやって来た。
「お褒めに預かり光栄です。今夜この部屋が空いてて良かったよ。どうする? また泳ぐ?」
大仰な礼をしながら聞いて来た子竜さんに、私はプライベートプールの水面に浮かぶ満月を見て大きく頷いた。
今度用意された水着はすごく可愛いけどやっぱり面積が少ない。
じっとそれを見てからなんとなく、まあ良いか、と思った。子竜さんは雄吾さんと違って場慣れしてそうだし、私が水着姿になったからってなんとも思ってなさそう。お風呂の脱衣所で手早く水着に着替えて髪をまとめると、プールのある部屋を覗き込む。
「……子竜さん?」
子竜さんはプールの中にいた。器用に仰向けになりながら、月を見ているのか目が遠くを見ている。
「子竜さん、お待たせしました」
「……いえいえ、女の子を待つのは慣れているって言ったろ?」
私と目を合わせず、月を見ている。その時私は気がついた。ふわふわと浮いている中に鮮やかな赤い尻尾も浮いているのだ。
くすくすと笑い出してしまう。
「もしかして、興奮してます?」
「好きな女の子のビキニ姿を見られると知っていて興奮しない雄はいないかな」
苦笑した顔をしながらも私の方を向いた。
私は微笑んでプールに浸かると、満月の浮いている水面の水をすくった。当たり前なんだけど、それで空の上にあるお月さまが手に入るわけじゃない。
「ビキニ用意したのって子竜さんですよね?」
「……いや、秘書だよ。報告は聞いていたけど、本当に良い仕事するな。あいつ」
じっと私の黒地に白の水玉模様のビキニを見てくる。
「見る目がいやらしいです」
「いやらしくない雄なんか居る?」
本当に不思議そうな顔をして聞くから私は吹き出した。
「子竜さんてそう言うことにあまり興味がないのかと思っていました」
「……それはどうして?」
「なんとなく……です。大人だから?」
「残念でした、俺は大人じゃないよ。臆病なだけ。透子ちゃんには絶対に嫌われたくないからね」
ふっと笑って水に潜った。ざばっと音がして、浮き上がると一気に泳ぎ出した。子竜さんて本当に泳ぎが上手いんだよね。それにフォームがすごく綺麗。もしかしたら学生の頃、水泳の選手だったのかもしれない。
あっという間にプールの端と端になってしまった。
「それって、私が何かしないと、何もしないってことですか?」
顔を上げたままの平泳ぎで着いて行く。
やっと追いついた子竜さんは鮮やかな赤い髪から水滴をぽたぽたと落としながら首を傾げた。
「もしそうだとしたら……してくれるの?」
私はプライベートプール付の部屋の大きな窓から見える、大きな満月が浮かぶ星空と海の共演に感動した。
ランチを食べたレストランからホテルへと移動した私たちはプールで遊んで疲れた後、せっかくだからとホテル内にあるエステでくつろいで夕飯を食べてから子竜さんにとっておきの景色があると言われてこの部屋へとやって来た。
「お褒めに預かり光栄です。今夜この部屋が空いてて良かったよ。どうする? また泳ぐ?」
大仰な礼をしながら聞いて来た子竜さんに、私はプライベートプールの水面に浮かぶ満月を見て大きく頷いた。
今度用意された水着はすごく可愛いけどやっぱり面積が少ない。
じっとそれを見てからなんとなく、まあ良いか、と思った。子竜さんは雄吾さんと違って場慣れしてそうだし、私が水着姿になったからってなんとも思ってなさそう。お風呂の脱衣所で手早く水着に着替えて髪をまとめると、プールのある部屋を覗き込む。
「……子竜さん?」
子竜さんはプールの中にいた。器用に仰向けになりながら、月を見ているのか目が遠くを見ている。
「子竜さん、お待たせしました」
「……いえいえ、女の子を待つのは慣れているって言ったろ?」
私と目を合わせず、月を見ている。その時私は気がついた。ふわふわと浮いている中に鮮やかな赤い尻尾も浮いているのだ。
くすくすと笑い出してしまう。
「もしかして、興奮してます?」
「好きな女の子のビキニ姿を見られると知っていて興奮しない雄はいないかな」
苦笑した顔をしながらも私の方を向いた。
私は微笑んでプールに浸かると、満月の浮いている水面の水をすくった。当たり前なんだけど、それで空の上にあるお月さまが手に入るわけじゃない。
「ビキニ用意したのって子竜さんですよね?」
「……いや、秘書だよ。報告は聞いていたけど、本当に良い仕事するな。あいつ」
じっと私の黒地に白の水玉模様のビキニを見てくる。
「見る目がいやらしいです」
「いやらしくない雄なんか居る?」
本当に不思議そうな顔をして聞くから私は吹き出した。
「子竜さんてそう言うことにあまり興味がないのかと思っていました」
「……それはどうして?」
「なんとなく……です。大人だから?」
「残念でした、俺は大人じゃないよ。臆病なだけ。透子ちゃんには絶対に嫌われたくないからね」
ふっと笑って水に潜った。ざばっと音がして、浮き上がると一気に泳ぎ出した。子竜さんて本当に泳ぎが上手いんだよね。それにフォームがすごく綺麗。もしかしたら学生の頃、水泳の選手だったのかもしれない。
あっという間にプールの端と端になってしまった。
「それって、私が何かしないと、何もしないってことですか?」
顔を上げたままの平泳ぎで着いて行く。
やっと追いついた子竜さんは鮮やかな赤い髪から水滴をぽたぽたと落としながら首を傾げた。
「もしそうだとしたら……してくれるの?」
38
お気に入りに追加
1,894
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる