2 / 10
02 偶然
しおりを挟む
そりゃあ、私だってここで明るく声を掛けて「えー! マックロイさんって、あの集合住宅に住んでるんですか!? 私もなんです! 同じ階!? すっごく偶然ですね★」と、わざとらしく近所に住んでますアピールしてしまえば、良いことだって理解している。
男性の集まる冒険者ギルドの受付を仕事にしておいて、何言ってるんだって言われそうだけど、実際のところ私は男性と話すのがあまり得意ではない。仕事の話だと淀みなく話せるけど、異性だと思うと上手く話せないし自分本当に不器用なんです。
マックロイさんの中ではかなりヤバい女と認識されていることを理解しつつ、こうして彼を後ろを尾けているかのようにして同じ道を進むしかない。
マックロイさんは集合住宅の入り口で、後ろを振り返り私の姿を確認した。いかにも不審者を見るような鋭い視線を向けられた。
……ええ。もう、なんでも良いんです。変な女が居ると憲兵に通報されても、私は本当に貴方と同じ階に住んでいるだけの住人なんです。むしろ間接的に私の言いたいことが伝わるので、その方が良いかもしれないまで思えて来た。
そして、集合住宅にひとつしかない階段を私は上がり始めた。
カツンカツンとゆっくり靴音がして、部屋にある三階へと上がる。
そして、私はこの辺で尿意が込み上げて来た。今すぐ、トイレに駆け込みたい。寒くなった日には、たまにこういう時があった。もう少しでトイレに駆け込める私の部屋のすぐ近くで、良かった。
マックロイさんは部屋に入る前にも、チラッと後ろを確認し、私の姿を確認したようだった。
ええ。もうヤバい女と思って頂いて、本当に大丈夫です。私もすぐに部屋に入ってトイレに行きたいんで、貴方も早く部屋に入ってください。
私は彼がパタンと扉を閉めた瞬間に、自分の部屋へと向かって足早に急ぎ始めた。
そして、彼の部屋の前を通り抜ける瞬間、グイッと強い力で腕を取られて、私はマックロイさんの部屋に引き込まれた。
「……え?」
私は玄関の壁側にまで押し付けられて詰め寄られ、マックロイさんの整った顔はすぐ近くにあった。
「え? じゃねえ。俺の部屋にまで尾けて来るんだったら、一回は訪ねて来いよ」
「へ……? ええ!?」
完全に付き纏いの迷惑ファンである認識はされていたのは、間違いなくその通りのようだった……けど、訪ねて……? 一回は訪ねて来いよ……?
「お前。一体。なんなんだよ! たまーに部屋まで尾けて来ると思ったら、何もせずに帰りやがって。何か言えよ。何か俺に言いたいことあるから、ここまで来てるんじゃねえの?」
「なななな……ない……です」
男性の集まる冒険者ギルドの受付を仕事にしておいて、何言ってるんだって言われそうだけど、実際のところ私は男性と話すのがあまり得意ではない。仕事の話だと淀みなく話せるけど、異性だと思うと上手く話せないし自分本当に不器用なんです。
マックロイさんの中ではかなりヤバい女と認識されていることを理解しつつ、こうして彼を後ろを尾けているかのようにして同じ道を進むしかない。
マックロイさんは集合住宅の入り口で、後ろを振り返り私の姿を確認した。いかにも不審者を見るような鋭い視線を向けられた。
……ええ。もう、なんでも良いんです。変な女が居ると憲兵に通報されても、私は本当に貴方と同じ階に住んでいるだけの住人なんです。むしろ間接的に私の言いたいことが伝わるので、その方が良いかもしれないまで思えて来た。
そして、集合住宅にひとつしかない階段を私は上がり始めた。
カツンカツンとゆっくり靴音がして、部屋にある三階へと上がる。
そして、私はこの辺で尿意が込み上げて来た。今すぐ、トイレに駆け込みたい。寒くなった日には、たまにこういう時があった。もう少しでトイレに駆け込める私の部屋のすぐ近くで、良かった。
マックロイさんは部屋に入る前にも、チラッと後ろを確認し、私の姿を確認したようだった。
ええ。もうヤバい女と思って頂いて、本当に大丈夫です。私もすぐに部屋に入ってトイレに行きたいんで、貴方も早く部屋に入ってください。
私は彼がパタンと扉を閉めた瞬間に、自分の部屋へと向かって足早に急ぎ始めた。
そして、彼の部屋の前を通り抜ける瞬間、グイッと強い力で腕を取られて、私はマックロイさんの部屋に引き込まれた。
「……え?」
私は玄関の壁側にまで押し付けられて詰め寄られ、マックロイさんの整った顔はすぐ近くにあった。
「え? じゃねえ。俺の部屋にまで尾けて来るんだったら、一回は訪ねて来いよ」
「へ……? ええ!?」
完全に付き纏いの迷惑ファンである認識はされていたのは、間違いなくその通りのようだった……けど、訪ねて……? 一回は訪ねて来いよ……?
「お前。一体。なんなんだよ! たまーに部屋まで尾けて来ると思ったら、何もせずに帰りやがって。何か言えよ。何か俺に言いたいことあるから、ここまで来てるんじゃねえの?」
「なななな……ない……です」
25
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
追放されましたが、私は幸せなのでご心配なく。
cyaru
恋愛
マルスグレット王国には3人の側妃がいる。
ただし、妃と言っても世継ぎを望まれてではなく国政が滞ることがないように執務や政務をするために召し上げられた職業妃。
その側妃の1人だったウェルシェスは追放の刑に処された。
理由は隣国レブレス王国の怒りを買ってしまった事。
しかし、レブレス王国の使者を怒らせたのはカーティスの愛人ライラ。
ライラは平民でただ寵愛を受けるだけ。王妃は追い出すことが出来たけれど側妃にカーティスを取られるのでは?と疑心暗鬼になり3人の側妃を敵視していた。
ライラの失態の責任は、その場にいたウェルシェスが責任を取らされてしまった。
「あの人にも幸せになる権利はあるわ」
ライラの一言でライラに傾倒しているカーティスから王都追放を命じられてしまった。
レブレス王国とは逆にある隣国ハネース王国の伯爵家に嫁いだ叔母の元に身を寄せようと馬車に揺られていたウェルシェスだったが、辺鄙な田舎の村で馬車の車軸が折れてしまった。
直すにも技師もおらず途方に暮れていると声を掛けてくれた男性がいた。
タビュレン子爵家の当主で、丁度唯一の農産物が収穫時期で出向いて来ていたベールジアン・タビュレンだった。
馬車を修理してもらう間、領地の屋敷に招かれたウェルシェスはベールジアンから相談を受ける。
「収穫量が思ったように伸びなくて」
もしかしたら力になれるかも知れないと恩返しのつもりで領地の収穫量倍増計画を立てるのだが、気が付けばベールジアンからの熱い視線が…。
★↑例の如く恐ろしく、それはもう省略しまくってます。
★11月9日投稿開始、完結は11月11日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
私のバラ色ではない人生
野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。
だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。
そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。
ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。
だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、
既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。
ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです
れもんぴーる
ファンタジー
実母に殺されそうになったのがきっかけで前世の記憶がよみがえった赤ん坊カティ。冷徹で優秀な若き宰相エドヴァルドに引き取られ、カティの秘密はすぐにばれる。エドヴァルドは鬼畜ぶりを発揮し赤ん坊のカティを特訓し、諜報員に仕立て上げた(つもり)!少しお利口ではないカティの言動は周囲を巻き込み、無表情のエドヴァルドの表情筋が息を吹き返す。誘拐や暗殺などに巻き込まれながらも鬼畜な義父に溺愛されていく魔法のある世界のお話です。
シリアスもありますが、コメディよりです(*´▽`*)。
*作者の勝手なルール、世界観のお話です。突っ込みどころ満載でしょうが、笑ってお流しください(´▽`)
*話の中で急な暴力表現など出てくる場合があります。襲撃や尋問っぽい話の時にはご注意ください!
《2023.10月末にレジーナブックス様から書籍を出していただけることになりました(*´▽`*)
規定により非公開になるお話もあります。気になる方はお早めにお読みください! これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる