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06 恋愛指導②

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「ああ。良い質問だ。リンゼイ。ジョヴァンニは王族で、幼い頃からの婚約者が居る。この学園は君以外は生まれも育ちも貴族な訳だから、そういった理由で話しかけない」

「確かにそうですね……」

 乙女ゲーム内でその常識を本当に知らない平民リンゼイは、どんどん距離を縮めて好感度を上げていくことになる。

「その上、あいつは会長で人事権を持っている。生徒会入りするためには、一番頼みやすく最短距離と言えるだろう」

「それは……そうです。ブルゴーニュ会長が、生徒会メンバー入りの許可を出しますから」

「そうだ。もし、他メンバーに頼めば、そのメンバーに気があると思われてしまう。よって、リンゼイの場合はジョヴァンニ本人に頼むのが、一番適当だと思われる」

「はー……流石です。レオナルド先輩」

 私がジョヴァンニ本人に生徒会に興味があると直接伝えれば良い理由を、筋道立てて根拠を説明してくれたレオナルドに感心して思わず拍手してしまった。

 全て兼ね備えた攻略対象者で頭が良いのは当たり前なんだろうけれど、私が他メンバーに頼んだ場合のデメリットまで考えてくれている。

 私はそこまで考えて、行動なんて出来ていない。そもそも、恋愛下手以前の問題だったのかもしれない。

「前にも言ったが、ジョヴァンニは婚約者が居るとは言え、相性は良くなく不仲だ」

「……マリアローゼ様のことですね」

 マリアローゼは、本当に悪役令嬢らしい悪役令嬢なのだ。親戚にあたるレオナルドは本当に彼女の事をあまり良く思っていないようで、名前を出しただけで渋い表情になってしまっている。

「本来ならば、王族に近しい者しか発顕しないはずの聖魔力を持つリンゼイにだって、王家に嫁ぐ可能性はあるんだ。マリアローゼが居るからと、話す前から諦めることはない」

「……はい」

 確かに『ここたた』ヒロインであるリンゼイ・アシュトンは、魔力の種類の中でも、とても珍しい聖魔力を持っている。

 そして、聖魔力を使いゲームのエンディング直前で、世界を救うことが出来る。いかにもヒロインっぽい能力を、所持しているのだ。

 何故聖魔力を持っているかと言うと、リンゼイは暗殺されたと思われていた二代前の国王の王女様の落とし胤で……元王女の孫娘であったから。

 つまり、私は王族の濃い血を引いている事が判明するゲーム終盤では、王族や貴族令息である攻略対象者たちと結婚することが出来る身分を持っていると周囲に認められてしまう。

 そして、悩ませるような障害は何もかも無くなり、二人の幸せしかないような晴々としたハッピーエンドへと繋がるのだ。

「……ジョヴァンニは、本当に良い奴だ。リンゼイの気持ちを受け入れれば、すぐにマリアローゼとの関係を解消するように動くだろうし、諦めずに努力する価値はある」

「わかりました」

 確かに、その通りだ。ジョヴァンニは誠実だし、乙女ゲーム内でも悪役令嬢マリアローゼに対し、婚約者として不誠実な真似はしない。

 攻略サイトを見つつポチポチしていただけなので、うっすらとしか覚えていないけれど、ジョヴァンニはリンゼイと明確な恋愛関係になる前に、マリアローゼと婚約解消しようとして、リンゼイに嫌がらせしていた彼女と一悶着起こってしまう。

 それを、二人で協力して解決し、いよいよ恋愛関係になる……というところで、マリアローゼは神殿に封印された邪神を解き放つのだ。

 そこで役に立ったのが、私の持っている聖魔力。

 ……レオナルドは、本当に優しい。私の恋が上手くいけば良いと、心から考えてくれているのだろう。

 完全に恋愛対象外にされているようで、なんだか寂しい。

「……どうした? 何か困ったことでもあったのか?」

 ええ。先生、聞いてもらえます?

 好きな人に好きな人を勘違いされて、恋愛相談に乗ってもらうことになったんですけど、誤解を解くためにはどうすれば良いですか?

 ……なんて、レオナルド本人になんて、聞けるはずもなく。

「今日の数学の小テスト……あまり、点数が良くなくて」

 曖昧に微笑んだ私を不思議そうに見たけど、そういう時もあるのかとひとり納得したのか、明日ジョヴァンニに話しかけるための作戦を黒板に書き始めた。

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