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59 危険物②
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◇◆◇
私たちは別れて馬車に乗り、アシュラム伯爵邸へと帰ることになった。
滑るように進む真新しい高価な馬車の中で、私はひそひそ声で隣に座っていたジュストに聞いた。
「……全部、最初から……知っていたの?」
私は誰かに聞かれてはならないと、声を出来るだけ抑えていたんだけど、ジュストは特に心配ないようで普通の音量で話した。
「ええ。あちらには、僕のスパイが居るもので。ラザールの動きは、筒抜けなんです。とても残念なことに。これで、彼は僕らに何も出来なくなりましたね」
にっこり微笑んだジュスト。私には頼りになることには間違いないけれど、敵に回してしまったラザールには悪夢のようだろう。
「……ねえ。ザカリーに、どれだけのお金を渡したの?」
彼のスパイは、侍従のザカリー以外あり得ない。ジュストは微笑んで、それは出来ないと首を横に振った。
「きっと……ミシェルは言っても、信じてくれませんよ。僕はミシェル以外には特に欲しい物もなく、楽しむ趣味はありませんし……本当につまらない男ですね」
クロッシュ公爵家の侍従なんて、そうそうなれる職業でもないのに……それを裏切ることの出来る金額って、天文学的な数字なのではないかしら。
「趣味……なかったかしら。そういえば、ジュストはあまり外出もしないわよね」
私は本を読んだりレースを編んだりすることが、趣味と言えば趣味かもしれない。
「いえ。強いて言えば、僕の趣味はミシェルなんです」
はっと気がついたようにジュストがそう口にして、私はなんとも言えない気持ちになった。
嬉しい……嬉しいけど、なんだか少し怖い。ジュストって、私のこと好き過ぎではない?
「もう……何、言ってるの。恥ずかしいわ」
「いえいえ。ミシェル。趣味が妻なんて、すごく良くないですか。ミシェルと一緒に居ると楽しくて時間が経つのが早過ぎて、それが僕は嫌だったんです。ああ……そうでした。もうすぐ一生一緒に居られますね。君と居ると体感にすると、すぐに死んでしまうんだろうな。困ったな」
「え……ジュスト。怖い」
私がわざとらしく少し後ずさると、いつものように私を引き寄せた。
「けど、好き、なんでしょう? 光栄です。僕のお嬢様」
にこにこと微笑むジュストの可愛い顔を見ると、私はついうっかりなんでも許してしまいそうになってしまうので、本当に彼は危険物指定されるべきだと思うわ。
私たちは別れて馬車に乗り、アシュラム伯爵邸へと帰ることになった。
滑るように進む真新しい高価な馬車の中で、私はひそひそ声で隣に座っていたジュストに聞いた。
「……全部、最初から……知っていたの?」
私は誰かに聞かれてはならないと、声を出来るだけ抑えていたんだけど、ジュストは特に心配ないようで普通の音量で話した。
「ええ。あちらには、僕のスパイが居るもので。ラザールの動きは、筒抜けなんです。とても残念なことに。これで、彼は僕らに何も出来なくなりましたね」
にっこり微笑んだジュスト。私には頼りになることには間違いないけれど、敵に回してしまったラザールには悪夢のようだろう。
「……ねえ。ザカリーに、どれだけのお金を渡したの?」
彼のスパイは、侍従のザカリー以外あり得ない。ジュストは微笑んで、それは出来ないと首を横に振った。
「きっと……ミシェルは言っても、信じてくれませんよ。僕はミシェル以外には特に欲しい物もなく、楽しむ趣味はありませんし……本当につまらない男ですね」
クロッシュ公爵家の侍従なんて、そうそうなれる職業でもないのに……それを裏切ることの出来る金額って、天文学的な数字なのではないかしら。
「趣味……なかったかしら。そういえば、ジュストはあまり外出もしないわよね」
私は本を読んだりレースを編んだりすることが、趣味と言えば趣味かもしれない。
「いえ。強いて言えば、僕の趣味はミシェルなんです」
はっと気がついたようにジュストがそう口にして、私はなんとも言えない気持ちになった。
嬉しい……嬉しいけど、なんだか少し怖い。ジュストって、私のこと好き過ぎではない?
「もう……何、言ってるの。恥ずかしいわ」
「いえいえ。ミシェル。趣味が妻なんて、すごく良くないですか。ミシェルと一緒に居ると楽しくて時間が経つのが早過ぎて、それが僕は嫌だったんです。ああ……そうでした。もうすぐ一生一緒に居られますね。君と居ると体感にすると、すぐに死んでしまうんだろうな。困ったな」
「え……ジュスト。怖い」
私がわざとらしく少し後ずさると、いつものように私を引き寄せた。
「けど、好き、なんでしょう? 光栄です。僕のお嬢様」
にこにこと微笑むジュストの可愛い顔を見ると、私はついうっかりなんでも許してしまいそうになってしまうので、本当に彼は危険物指定されるべきだと思うわ。
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