52 / 66
51 守る②
しおりを挟む
◇◆◇
「……あの子は、納得したんだな」
お父様は私から話を聞き、安心して胸を撫でおろしていたようだった。
オレリーが可愛いのは、私もお父様も一緒だ。わかりやすい嘘でも、あの子を弾劾するような事態にならなくて良かった。
「ええ。ジュストとのことは、嘘だと認めたわ。それに、特効薬を飲んで健康になったあの子には、私はもう甘やかさないと伝えたの。お父様もそうして……それが、家族としてあの子のことを愛するということだと思うわ」
私たちは命の期限のあるオレリーを、揃ってとても甘やかした。けれど、健康になり普通に生きていくのなら、そういう訳にはいかない。
私たちは、ずっと傍には居てあげられないのだ。
「わかっている。お前には、本当に苦労をかけた。今回のことについてもだ。ジュストとの結婚を許そう」
私はその言葉を聞いて、隣に居たジュストと目を合わせた。
……これで、私たちの間にある障害はすべて取り除かれた。
「サラクラン伯爵……感謝します。幼かった僕をサラクラン伯爵邸に置いてくれたことも、ミシェルと出会えたことも、すべて感謝しています」
「……お父様。本当にありがとうございます」
私たち二人から感謝の言葉を聞いて、お父様はどこか照れくさそうだった。お父様だって幼い頃から我が家に居たジュストは、成長を間近で見ていたし可愛かったに違いない。
「ああ……もうここまで来たら、もう仕方ない。私の負けだ。ジュスト。お前は本当に諦めない男だ。誰もが不可能だと思うようなことを、驚くような方法で成し遂げたな。立派だ。それだけ愛されているのならば、必ず娘ミシェルを幸せにしてくれるだろう」
「約束します。命に懸けて」
ジュストの決意の言葉を聞いて、大きく息をついたお父様は胸元から手紙を取り出した。
「……それと、国王陛下からお前たち二人に、三日後のお茶会の招待状が届いている」
私たち二人はそれを聞いて、不思議に思い顔を見合わせた。
……国王陛下からの招待状?
「この前にあったクロッシュ公爵家のラザール様との婚約解消の王命の件だ。陛下としては婚約解消で臣下たる二つの家にしこりが残るようなことは避けたいと仰って、ラザール様と改めて言葉を交わして欲しいと」
「……僕はもちろん構いません。確かに僕もサラクラン伯爵としても、クロッシュ公爵家と遺恨の残るようなことは避けたいですね」
クロッシュ公爵家は、ローレシア王国で大きな権力を握っている。
けれど、婚約解消の王命を下した国王陛下主催のお茶会で、両者腹を割って話せと言うのならば、私たちやラザール様だって表向きは仲直りしたという姿勢を見せることになる。
「わかりました。私もあの場ではあまりお話が出来なかったので、このような機会を与えてくださった陛下に感謝しています」
娘夫婦となる私たち二人が参加する意志を見せれば、お父様はほっと安堵して頷いていた。
「……あの子は、納得したんだな」
お父様は私から話を聞き、安心して胸を撫でおろしていたようだった。
オレリーが可愛いのは、私もお父様も一緒だ。わかりやすい嘘でも、あの子を弾劾するような事態にならなくて良かった。
「ええ。ジュストとのことは、嘘だと認めたわ。それに、特効薬を飲んで健康になったあの子には、私はもう甘やかさないと伝えたの。お父様もそうして……それが、家族としてあの子のことを愛するということだと思うわ」
私たちは命の期限のあるオレリーを、揃ってとても甘やかした。けれど、健康になり普通に生きていくのなら、そういう訳にはいかない。
私たちは、ずっと傍には居てあげられないのだ。
「わかっている。お前には、本当に苦労をかけた。今回のことについてもだ。ジュストとの結婚を許そう」
私はその言葉を聞いて、隣に居たジュストと目を合わせた。
……これで、私たちの間にある障害はすべて取り除かれた。
「サラクラン伯爵……感謝します。幼かった僕をサラクラン伯爵邸に置いてくれたことも、ミシェルと出会えたことも、すべて感謝しています」
「……お父様。本当にありがとうございます」
私たち二人から感謝の言葉を聞いて、お父様はどこか照れくさそうだった。お父様だって幼い頃から我が家に居たジュストは、成長を間近で見ていたし可愛かったに違いない。
「ああ……もうここまで来たら、もう仕方ない。私の負けだ。ジュスト。お前は本当に諦めない男だ。誰もが不可能だと思うようなことを、驚くような方法で成し遂げたな。立派だ。それだけ愛されているのならば、必ず娘ミシェルを幸せにしてくれるだろう」
「約束します。命に懸けて」
ジュストの決意の言葉を聞いて、大きく息をついたお父様は胸元から手紙を取り出した。
「……それと、国王陛下からお前たち二人に、三日後のお茶会の招待状が届いている」
私たち二人はそれを聞いて、不思議に思い顔を見合わせた。
……国王陛下からの招待状?
「この前にあったクロッシュ公爵家のラザール様との婚約解消の王命の件だ。陛下としては婚約解消で臣下たる二つの家にしこりが残るようなことは避けたいと仰って、ラザール様と改めて言葉を交わして欲しいと」
「……僕はもちろん構いません。確かに僕もサラクラン伯爵としても、クロッシュ公爵家と遺恨の残るようなことは避けたいですね」
クロッシュ公爵家は、ローレシア王国で大きな権力を握っている。
けれど、婚約解消の王命を下した国王陛下主催のお茶会で、両者腹を割って話せと言うのならば、私たちやラザール様だって表向きは仲直りしたという姿勢を見せることになる。
「わかりました。私もあの場ではあまりお話が出来なかったので、このような機会を与えてくださった陛下に感謝しています」
娘夫婦となる私たち二人が参加する意志を見せれば、お父様はほっと安堵して頷いていた。
330
お気に入りに追加
1,307
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢のシェリラは王子の婚約者として常に厳しい教育を受けていた。
五歳の頃から厳しい淑女教育を受け、少しでもできなければ罵倒を浴びせられていたが、すぐ下の妹は母親に甘やかされ少しでも妹の機嫌をそこなわせれば母親から責められ使用人にも冷たくされていた。
優秀でなくては。
完璧ではなくてはと自分に厳しくするあまり完璧すぎて氷の令嬢と言われ。
望まれた通りに振舞えば婚約者に距離を置かれ、不名誉な噂の為婚約者から外され王都から追放の後に修道女に向かう途中事故で亡くなるはず…だったが。
気がつくと婚約する前に逆行していた。
愛してくれない婚約者、罵倒を浴びせる母に期待をするのを辞めたシェリアは本当に愛してくれた人の為に戦う事を誓うのだった。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
もう、あなたを愛することはないでしょう
春野オカリナ
恋愛
第一章 完結番外編更新中
異母妹に嫉妬して修道院で孤独な死を迎えたベアトリーチェは、目覚めたら10才に戻っていた。過去の婚約者だったレイノルドに別れを告げ、新しい人生を歩もうとした矢先、レイノルドとフェリシア王女の身代わりに呪いを受けてしまう。呪い封じの魔術の所為で、ベアトリーチェは銀色翠眼の容姿が黒髪灰眼に変化した。しかも、回帰前の記憶も全て失くしてしまい。記憶に残っているのは数日間の出来事だけだった。
実の両親に愛されている記憶しか持たないベアトリーチェは、これから新しい思い出を作ればいいと両親に言われ、生まれ育ったアルカイドを後にする。
第二章
ベアトリーチェは15才になった。本来なら13才から通える魔法魔術学園の入学を数年遅らせる事になったのは、フロンティアの事を学ぶ必要があるからだった。
フロンティアはアルカイドとは比べ物にならないぐらい、高度な技術が発達していた。街には路面電車が走り、空にはエイが飛んでいる。そして、自動階段やエレベーター、冷蔵庫にエアコンというものまであるのだ。全て魔道具で魔石によって動いている先進技術帝国フロンティア。
護衛騎士デミオン・クレージュと共に新しい学園生活を始めるベアトリーチェ。学園で出会った新しい学友、変わった教授の授業。様々な出来事がベアトリーチェを大きく変えていく。
一方、国王の命でフロンティアの技術を学ぶためにレイノルドやジュリア、ルシーラ達も留学してきて楽しい学園生活は不穏な空気を孕みつつ進んでいく。
第二章は青春恋愛モード全開のシリアス&ラブコメディ風になる予定です。
ベアトリーチェを巡る新しい恋の予感もお楽しみに!
※印は回帰前の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる