38 / 61
37 隠し事①
しおりを挟む
「……僕が何でこちらへ呼び出されたのか。あの男を見て理解致しました。陛下」
臣下に連れられ現れたクロッシュ公爵令息ラザール様は苦々しくそう言い、悲しげに振舞うジュストを睨み付けた。そんな中、私は内心冷や汗をかいていた。
確かに、国王陛下の言っていることはもっともなのだ。
私側の意見だけではなく、ラザール様の言い分だって聞かなければならない。そうでなければ、公平な判断を下したとはとても言えないだろう。
ジュストはここでラザール様が何を言い出すのか、事前にわかっているみたいだ。
……私には全然わからないのに。いえ。そもそもジュストがこの先どうするか読めたことなんて、これまでに一度もなかったわ。
「クロッシュ公爵令息ラザール。それでは、話は早いようだ。彼ら二人の事情は、先んじて聞いている。そこで、次は君の意見が聞きたいのだが」
国王陛下はさっそく、わざわざ呼び出したラザール様へと話を聞く事にしたらしい。
こんなことになるなんて、ほんの少し前まで知らなかった私は、夜会で共に入場した彼と目を極力合わせないようにした。
……もちろん。私だって、言い分はある。
ラザール様は婚約者の私に対し、結構な酷いことをしたと、誰しも思うだろう。けれど、結局のところは私と結婚しようと思い直したと言えば、許してあげるべきだと思う人が居るとも思う。
公平な判断を下すというのなら、正式な婚約者であるラザール様に軍配が上がるかもしれない。
……ううん。駄目よ。ジュストを信じるって、私はそう決めたでしょう。
「僕とミシェルは、幼い頃より婚約者です。貴族の結婚には政略的な意味合いが強いとは言え、僕たちはお互いに気持ちを深めながら過ごして来ました……確かに、僕には一度彼女の気持ちを傷付けたことがあるのは認めます。妹と婚約者を交換出来ないか、彼女の父に打診したことがありました。ですが、あれは一時の気の迷いでした。同じ姉妹とは言え、失礼なことをしたと反省し、それを彼女自身にも詫びています」
ラザール様は自分の過ちを先んじて認め、私にも謝罪したと認めた。
そうよね。これは話題にならざるを得ないしジュストの口からこれが明かされるくらいなら、自分の口から説明した方が良いのかもしれない。
「だとすると、ラザールはそちらのサラクラン伯爵令嬢と、不和があったことを認めた上でやり直し結婚したいと望んでいるんだな?」
国王陛下も一度は過ちを犯すくらいはあるだろうと思ってか、再度確認し、頷いたラザール様を見て何か考え込んでいる様子だった。
やり直したいと思っているなら、その程度の気の迷い許してやれば良いのにと思っていそう……。
「隠し子の件は、どうなのですか。ミシェルはあれを聞き、日々泣き暮らしておりました。あんな人と結婚したくないと、遠い辺境の村にまで家出までしたのです。それを追い掛けたのが僕。泣いているミシェルを追い掛け慰め、彼女が傷付けられるくらいならと、すべてを捨てて愛し合うことに決めました」
……え?
私はこれまでに想像もしたことのなかった情報を聞き、耳を疑った。
臣下に連れられ現れたクロッシュ公爵令息ラザール様は苦々しくそう言い、悲しげに振舞うジュストを睨み付けた。そんな中、私は内心冷や汗をかいていた。
確かに、国王陛下の言っていることはもっともなのだ。
私側の意見だけではなく、ラザール様の言い分だって聞かなければならない。そうでなければ、公平な判断を下したとはとても言えないだろう。
ジュストはここでラザール様が何を言い出すのか、事前にわかっているみたいだ。
……私には全然わからないのに。いえ。そもそもジュストがこの先どうするか読めたことなんて、これまでに一度もなかったわ。
「クロッシュ公爵令息ラザール。それでは、話は早いようだ。彼ら二人の事情は、先んじて聞いている。そこで、次は君の意見が聞きたいのだが」
国王陛下はさっそく、わざわざ呼び出したラザール様へと話を聞く事にしたらしい。
こんなことになるなんて、ほんの少し前まで知らなかった私は、夜会で共に入場した彼と目を極力合わせないようにした。
……もちろん。私だって、言い分はある。
ラザール様は婚約者の私に対し、結構な酷いことをしたと、誰しも思うだろう。けれど、結局のところは私と結婚しようと思い直したと言えば、許してあげるべきだと思う人が居るとも思う。
公平な判断を下すというのなら、正式な婚約者であるラザール様に軍配が上がるかもしれない。
……ううん。駄目よ。ジュストを信じるって、私はそう決めたでしょう。
「僕とミシェルは、幼い頃より婚約者です。貴族の結婚には政略的な意味合いが強いとは言え、僕たちはお互いに気持ちを深めながら過ごして来ました……確かに、僕には一度彼女の気持ちを傷付けたことがあるのは認めます。妹と婚約者を交換出来ないか、彼女の父に打診したことがありました。ですが、あれは一時の気の迷いでした。同じ姉妹とは言え、失礼なことをしたと反省し、それを彼女自身にも詫びています」
ラザール様は自分の過ちを先んじて認め、私にも謝罪したと認めた。
そうよね。これは話題にならざるを得ないしジュストの口からこれが明かされるくらいなら、自分の口から説明した方が良いのかもしれない。
「だとすると、ラザールはそちらのサラクラン伯爵令嬢と、不和があったことを認めた上でやり直し結婚したいと望んでいるんだな?」
国王陛下も一度は過ちを犯すくらいはあるだろうと思ってか、再度確認し、頷いたラザール様を見て何か考え込んでいる様子だった。
やり直したいと思っているなら、その程度の気の迷い許してやれば良いのにと思っていそう……。
「隠し子の件は、どうなのですか。ミシェルはあれを聞き、日々泣き暮らしておりました。あんな人と結婚したくないと、遠い辺境の村にまで家出までしたのです。それを追い掛けたのが僕。泣いているミシェルを追い掛け慰め、彼女が傷付けられるくらいならと、すべてを捨てて愛し合うことに決めました」
……え?
私はこれまでに想像もしたことのなかった情報を聞き、耳を疑った。
362
お気に入りに追加
1,141
あなたにおすすめの小説
敵国軍人に惚れられたんだけど、女装がばれたらやばい。
水瀬かずか
BL
ルカは、革命軍を支援していた父親が軍に捕まったせいで、軍から逃亡・潜伏中だった。
どうやって潜伏するかって? 女装である。
そしたら女装が美人過ぎて、イケオジの大佐にめちゃくちゃ口説かれるはめになった。
これってさぁ……、女装がバレたら、ヤバくない……?
ムーンライトノベルズさまにて公開中の物の加筆修正版(ただし性行為抜き)です。
表紙にR18表記がされていますが、作品はR15です。
illustration 吉杜玖美さま
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
静かで穏やかな生活を望む死神と呼ばれた皇子と結婚した王女の人生
永江寧々
恋愛
小さな国の王女として生まれたアーデルは警戒心が強く、人の輪に入っていくのが苦手。怒声や人の感情の起伏を見ていると心臓がおかしくなりそうなほど怖くなる。だから結婚相手は優しくて物静かな人で、結婚生活は静かで穏やかなものがいいと望んでいた。
そんなアーデルに突然結婚話が持ち上がる。ヒュドール帝国からの申し出があったと。相手は公務にもほとんど顔を出さない第七皇子ラビ。陰で根暗と呼ばれるほど暗い彼と会った事はないが、そう呼ばれている事を知っていたから結婚を許諾した。
顔の半分を仮面で覆ってはいたが、引っ込み思案ですぐに謝罪する人見知り。とても優しい人で結婚への不安などなかった。
望んだ穏やかな生活が手に入ったと喜ぶアーデルだが、そうもいかない事情が彼にはあって……それが穏やかな生活を脅かす影となり付きまとうことになるとはアーデルは想像もしていなかった。
※番外編は全5話となっております。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる