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37 隠し事①

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「……僕が何でこちらへ呼び出されたのか。あの男を見て理解致しました。陛下」

 臣下に連れられ現れたクロッシュ公爵令息ラザール様は苦々しくそう言い、悲しげに振舞うジュストを睨み付けた。そんな中、私は内心冷や汗をかいていた。

 確かに、国王陛下の言っていることはもっともなのだ。

 私側の意見だけではなく、ラザール様の言い分だって聞かなければならない。そうでなければ、公平な判断を下したとはとても言えないだろう。

 ジュストはここでラザール様が何を言い出すのか、事前にわかっているみたいだ。

 ……私には全然わからないのに。いえ。そもそもジュストがこの先どうするか読めたことなんて、これまでに一度もなかったわ。

「クロッシュ公爵令息ラザール。それでは、話は早いようだ。彼ら二人の事情は、先んじて聞いている。そこで、次は君の意見が聞きたいのだが」

 国王陛下はさっそく、わざわざ呼び出したラザール様へと話を聞く事にしたらしい。

 こんなことになるなんて、ほんの少し前まで知らなかった私は、夜会で共に入場した彼と目を極力合わせないようにした。

 ……もちろん。私だって、言い分はある。

 ラザール様は婚約者の私に対し、結構な酷いことをしたと、誰しも思うだろう。けれど、結局のところは私と結婚しようと思い直したと言えば、許してあげるべきだと思う人が居るとも思う。

 公平な判断を下すというのなら、正式な婚約者であるラザール様に軍配が上がるかもしれない。

 ……ううん。駄目よ。ジュストを信じるって、私はそう決めたでしょう。

「僕とミシェルは、幼い頃より婚約者です。貴族の結婚には政略的な意味合いが強いとは言え、僕たちはお互いに気持ちを深めながら過ごして来ました……確かに、僕には一度彼女の気持ちを傷付けたことがあるのは認めます。妹と婚約者を交換出来ないか、彼女の父に打診したことがありました。ですが、あれは一時の気の迷いでした。同じ姉妹とは言え、失礼なことをしたと反省し、それを彼女自身にも詫びています」

 ラザール様は自分の過ちを先んじて認め、私にも謝罪したと認めた。

 そうよね。これは話題にならざるを得ないしジュストの口からこれが明かされるくらいなら、自分の口から説明した方が良いのかもしれない。

「だとすると、ラザールはそちらのサラクラン伯爵令嬢と、不和があったことを認めた上でやり直し結婚したいと望んでいるんだな?」

 国王陛下も一度は過ちを犯すくらいはあるだろうと思ってか、再度確認し、頷いたラザール様を見て何か考え込んでいる様子だった。

 やり直したいと思っているなら、その程度の気の迷い許してやれば良いのにと思っていそう……。

「隠し子の件は、どうなのですか。ミシェルはあれを聞き、日々泣き暮らしておりました。あんな人と結婚したくないと、遠い辺境の村にまで家出までしたのです。それを追い掛けたのが僕。泣いているミシェルを追い掛け慰め、彼女が傷付けられるくらいならと、すべてを捨てて愛し合うことに決めました」

 ……え?

 私はこれまでに想像もしたことのなかった情報を聞き、耳を疑った。

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