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20 再会①

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「お母様。ご心配をお掛けしてしまって、本当にごめんなさい」

 私の家出が原因で心配のあまり倒れてしまったという母ナディーヌへと駆け寄り彼女へ謝ると、妹オレリーに良く似た美しいお母様は涙を流して頷いた。

「……先ほど、ここに来たお父様からある程度の事情は聞いたわ。ミシェル。護衛騎士のジュストと、恋仲になったんですって?」

 お父様……私がオレリーと廊下で話している隙に、父はこちらへとやって来て母へと事情を説明したらしい。それを聞いてすぐに怒っていた父とは対称的に、母は穏やかな笑顔で嬉しそうに微笑んでいた。

 娘の私から正直に言わせると、この両親二人だって、恋愛結婚を選んだのに……という気持ちがどうしてもある。本来ならば祖母たちの願いを叶えるのは、この母のはずだったのだ。

 ナディーヌお母様は、すでに中年と言える年齢に達しているにも関わらず、儚げで美しく生活感がない。お父様が夜会で一目見て恋に落ちたと聞いても、全く不思議ではなかった。

「そうよ……けれど、それは家出した後のことで、それが原因で私は家出をした訳ではないわ。お母様」

 護衛騎士ジュストと結婚したいからという理由で家出をした訳ではないと私が言えば、お母様はすべてわかっていると言わんばかりに微笑んで頷いた。

「私はわかっているわ。ミシェル……」

 その時、お母様は意味ありげに微笑んだけれど、その理由は言わなかった。

 ……ここには、私の家出の原因となったオレリーが居るからだ。

「お姉様! 待って。ジュストと恋仲なんて、駄目よ!」

 オレリーは手を繋ぎ合っていた私と母の会話を聞いていて、後ろからそう叫んだ。

「オレリー……」

「だって、お姉様には婚約者ラザール様がいらっしゃるでしょう? 将来は皆が憧れるクロッシュ公爵夫人になれるのよ。申し分のない嫁入り先なのに……あんな一介の護衛騎士など、比べものにならないくらいの素敵な旦那様なのに、どうして……」

 ……それは、そんなラザール様が貴女に恋をしたから。

 そんなことが、何の罪もないオレリーに言えるはずもなかった。

「ジュストはお父様が功績を認められて叙爵された貴族でもあるし、そんなお父様が結婚されたという義理のお母様から従属爵位を譲って頂けることになったそうよ。だから、一介の護衛騎士ではないわ。彼は未来を約束された貴族で伯爵なの」

 私から話を聞いて、オレリーは信じられないと言わんばかりの、ぽかんとした表情になっていた。

「ジュストのお父様が、叙爵を受けたですって……? それは、確かに私は知らなかった。けれど、公爵と伯爵ではあまりにも身分差があるわ。お姉様は誰よりも、幸せになるはずの人なのに……」

 これはオレリーがジュスト本人を馬鹿にしているといったわけではなく、貴族と平民の身分の違いは明確で、彼女はそれを言いたいのだと思う。

 一時的な恋愛感情に流されてしまい、不幸になった人たちは多いからだ。

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