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02 同級生

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「いっ……居ます」

 本当は、私には妹なんて居ない。その名前は、私本人。けれど、この過去と未来が交差したような事態を、彼になんて言うの? 

 告白も出来ずに、すぐ近くから居なくなってしまった初恋相手に、どう説明すれば良いかなんて、私にはわからない。

「あの……余計なお世話だったら、すみません。さっきから、とても悲しそうな顔をしていたけど、何かあったんですか? もしかして……心配事ですか?」

 どうするべきかと考えていて無言のままだった私に、七瀬くんは慎重な口調で尋ねた。

 高校生の時は、同級生で同じクラス。同じ美化委員だった私たち二人は、連絡事項などを話すこともままあった。 

 こんな風に、慎重になんて話しかけられたことなんてない。だから、何だか新鮮だった。

 あの時は、いつもたわいもない話をしていたと思う。今では何を話していたかなんて、思い出せないけど。

 それでも、毎日楽しくて彼を見れただけで嬉しくて、大声で笑っていたはずだ。

「……あの、三日前に……私……婚約を解消したの。妹には、これは言わないでくれる? 平気だと言っていて恥ずかしいから」

「えっ……あ。もちろんです! というか、誰にも言いません。大丈夫です! 俺はお姉さんのことを、知っている人も、居ませんし……」

 苦笑して話した私に、七瀬くんは慌てた様子で、そう言った。

 そして、既に私は彼がこの秘密を守ってくれたことを知っている。

 だって……私はこれまでに、彼から居ない姉の話をされたことなんて、一度だってないんだから。

「ふふふ。ありがとう……婚約者の……いえ、元婚約者ね。以前に付き合っていた人が、事故に遭って……今は意識を失って、ずっと彼の名前を呼んでいるらしいの。だから、意識が戻るまででも、傍に居てあげたいって言われて……」

「え……けど、それだと……」

 口ごもった七瀬くんが言わんとしていることは、理解している。事故に遭って、意識不明。明日意識が戻るかもしれないけど……。

「そうなの。意識はいつ戻るかわからないから……両者合意の元で、私たちは婚約解消することになったの」

「それは、とても災難でしたね……お姉さんは、それで良いんですか?」

 お見合いしてから婚約はしたけれど、私たちは、まだ結婚式の話もしていないし……キャンセル料だって何も発生しない。

 そうしたいと言った彼の気持ちを思えば、致し方ない理由だし、私側には不満は無かった。

 お世話になった仲人も居て仲が良い親同士は、婚約解消に非常に残念がってはいたけど、それは、もう仕方ないことだ。

 私たちには、ご縁がなかった。
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