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34 真実①
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「……カミーユ。あの……私には何のことを仰られているのか、理解出来ません」
ルシアが手渡した裏帳簿を開いて頁を捲り何度か頷き一人納得している様子のカミーユは、ある項目を指差した。
「これを見てくれ。これは、ルブラン王国から輸入した物資について書かれているな?」
(何の話なの……? ルブラン王国にある商会は、お得意様。だから、距離があって航路も時間がかかるけれど、良く取引をしている)
ルシアは彼に指示された通りそれを確認し、そのようだと頷いた。
「……ええ。こちらは我がユスターシュ伯爵家と深い繋がりがあり、良く取引のある商会ですね。私も書類など関わっておりますが、この品については、隠されて輸入していたようですね」
「ああ。君が聞けば、驚くような代物だ……」
「驚くような……」
彼が何を言わんとしているのかわからず戸惑うルシアに、カミーユは慎重に切り出した。
「……実はルシア。君からの提案書を読んで、俺は良い案だと思ったし、費用対効果が素晴らしい。すぐにでも軍で取り入れるべきだと思った。だが、兄上からユスターシュ伯爵家を使うのならば、あの家にある疑惑を晴らすようにと指示され、それまでは君にも一切関わることは許さぬと言われていたんだ」
「カミーユのお兄様、王太子アダムス様ですか……? それに、ユスターシュ伯爵家に疑惑とはどんな……?」
ルシアは自分の関わっている部分に関しては、法を犯していないと言い切れた。
父の裏帳簿を見ても高い関税を抜けるために禁製品を密輸していると思ったが、それにしても、それまでは一切関わってはならぬという王太子の厳しい指示が大袈裟なように思えるのだ。
「……君の叔父に、騎士マーティン・ユスターシュが居るな?」
叔父マーティンは両親に虐げられているルシアを、唯一守ってくれる肉親だ。だが、何故ここで彼の名前が出て来るのだろうとルシアは不思議だった。
「はい。マーティン叔父様は、私をすごく可愛がってくださっておりますが……」
ルシアが叔父をそう表現したことを聞き、カミーユは何かに納得したかのように頷いた。
「実は彼から兄夫婦を調査して欲しいと、何度も申し立てがあったと言うんだ。それは、兄夫婦がある時を境に、まるで人が変わったようになってしまったと……だから、もしかしたら……彼らは別人が成り代わってしまったのではないかと」
確かにマーティンは姪のルシアを心配しては兄に意見していたし、母キャリスンについては嫌悪して口も聞かないほどだった。
それは、真面目な性格の叔父と享楽的な生活を好む両親の相性が悪いだけなのかと、ルシアはずっと思っていたのだが……。
「……え? 別人ですか?」
「もちろん。当主の弟ユスターシュ卿が兄夫婦を陥れたいと考え、財産目的でそんな疑いを申し立てたと見る向きもあった。ユスターシュ伯爵は知り合いに会って昔の話をしても、話に齟齬などはない。だから、少々性格が荒くなったのも、加齢によるものではないかと思われて、捜査は難航していたんだ」
「そうですか……ですが、カミーユは先程すべての証拠が揃ったと言われておりましたが……それは、もしかして……」
(嘘でしょう……実の娘にしては、あまりにも酷い扱い……それは、もしかして……)
「ああ。ルシア。君は騙されていたんだ。それに、君を軍で使うのなら、より詳しく調査するようにと兄上から通達された。そして、調査が進んで麻薬取引の疑惑が出て来たため、そんなユスターシュ伯爵家には利益を与えることは出来なかった……だから、これまでルシアの提案を受けることも、関係を明らかにすることも出来なかったんだ」
「……あれは、私の両親ではない?」
震える声で呟いたルシアに、痛みを堪えるような顔をしたカミーユは頷いた。
「君には酷なことを言うようだが……おそらく、本物の彼らは娘の君を人質に、すべての情報を引き出され、顔を奪われたんだ。そうでなければ、説明のつかないことが多い」
「そんな……嘘でしょう」
ルシアは愕然としていて、前世の記憶を思い出した船中でのことを考えていた。
ルシアが手渡した裏帳簿を開いて頁を捲り何度か頷き一人納得している様子のカミーユは、ある項目を指差した。
「これを見てくれ。これは、ルブラン王国から輸入した物資について書かれているな?」
(何の話なの……? ルブラン王国にある商会は、お得意様。だから、距離があって航路も時間がかかるけれど、良く取引をしている)
ルシアは彼に指示された通りそれを確認し、そのようだと頷いた。
「……ええ。こちらは我がユスターシュ伯爵家と深い繋がりがあり、良く取引のある商会ですね。私も書類など関わっておりますが、この品については、隠されて輸入していたようですね」
「ああ。君が聞けば、驚くような代物だ……」
「驚くような……」
彼が何を言わんとしているのかわからず戸惑うルシアに、カミーユは慎重に切り出した。
「……実はルシア。君からの提案書を読んで、俺は良い案だと思ったし、費用対効果が素晴らしい。すぐにでも軍で取り入れるべきだと思った。だが、兄上からユスターシュ伯爵家を使うのならば、あの家にある疑惑を晴らすようにと指示され、それまでは君にも一切関わることは許さぬと言われていたんだ」
「カミーユのお兄様、王太子アダムス様ですか……? それに、ユスターシュ伯爵家に疑惑とはどんな……?」
ルシアは自分の関わっている部分に関しては、法を犯していないと言い切れた。
父の裏帳簿を見ても高い関税を抜けるために禁製品を密輸していると思ったが、それにしても、それまでは一切関わってはならぬという王太子の厳しい指示が大袈裟なように思えるのだ。
「……君の叔父に、騎士マーティン・ユスターシュが居るな?」
叔父マーティンは両親に虐げられているルシアを、唯一守ってくれる肉親だ。だが、何故ここで彼の名前が出て来るのだろうとルシアは不思議だった。
「はい。マーティン叔父様は、私をすごく可愛がってくださっておりますが……」
ルシアが叔父をそう表現したことを聞き、カミーユは何かに納得したかのように頷いた。
「実は彼から兄夫婦を調査して欲しいと、何度も申し立てがあったと言うんだ。それは、兄夫婦がある時を境に、まるで人が変わったようになってしまったと……だから、もしかしたら……彼らは別人が成り代わってしまったのではないかと」
確かにマーティンは姪のルシアを心配しては兄に意見していたし、母キャリスンについては嫌悪して口も聞かないほどだった。
それは、真面目な性格の叔父と享楽的な生活を好む両親の相性が悪いだけなのかと、ルシアはずっと思っていたのだが……。
「……え? 別人ですか?」
「もちろん。当主の弟ユスターシュ卿が兄夫婦を陥れたいと考え、財産目的でそんな疑いを申し立てたと見る向きもあった。ユスターシュ伯爵は知り合いに会って昔の話をしても、話に齟齬などはない。だから、少々性格が荒くなったのも、加齢によるものではないかと思われて、捜査は難航していたんだ」
「そうですか……ですが、カミーユは先程すべての証拠が揃ったと言われておりましたが……それは、もしかして……」
(嘘でしょう……実の娘にしては、あまりにも酷い扱い……それは、もしかして……)
「ああ。ルシア。君は騙されていたんだ。それに、君を軍で使うのなら、より詳しく調査するようにと兄上から通達された。そして、調査が進んで麻薬取引の疑惑が出て来たため、そんなユスターシュ伯爵家には利益を与えることは出来なかった……だから、これまでルシアの提案を受けることも、関係を明らかにすることも出来なかったんだ」
「……あれは、私の両親ではない?」
震える声で呟いたルシアに、痛みを堪えるような顔をしたカミーユは頷いた。
「君には酷なことを言うようだが……おそらく、本物の彼らは娘の君を人質に、すべての情報を引き出され、顔を奪われたんだ。そうでなければ、説明のつかないことが多い」
「そんな……嘘でしょう」
ルシアは愕然としていて、前世の記憶を思い出した船中でのことを考えていた。
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