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03 好感度

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「え? 待って……クロエ。それは、どう言うこと?」

「ねえ。レイラ。この、乙女ゲームの案内役……サポートキャラの黒うさぎのトリスタンを覚えてる?」

「ええ。もちろんよ……好感度を見るのも、迷った時にどうすれば良いかを聞くのも、あのトリスタンだもの」

 この乙女ゲームをプレイしていれば、当たり前のような知識をなんでここで聞くの?

 黒うさぎのトリスタンは、首に赤リボンを結んだとても可愛らしい外見を裏切るかのように、ギャップのある関西弁を喋るおじさんが中身に入っている。

 何を言いたいのかわからずに、質問に慎重に答えた私の言葉を聞いて、意味ありげに目を細めて微笑んだクロエは頷いた。

「……実は、昨夜私が乙女ゲームをクリアした時に、トリスタンが言ったの。せっかくこうしてクリアしたんだから、ひとつだけ願いを叶えてくれるって」

「え。そんな設定……あったんだ?」

 なんだか、この流れは嫌な予感がしかしない。

 クロエは前世から可愛くて甘え上手で、とてもちゃっかりしていて。

 仲は良いとは思っているけど、前世から面倒と言う面倒は押し付けられ続けてきたのが私……利用されていると思いたくないけど、良く周囲の子から「大丈夫なの?」と、忠告されることがあった。

「そうなの。だから……私。トリスタンに、お願いしたの。ギャビンとジョルジュ、そして、ハイドの好感度を私からレイラに移してあげて下さいって♡」

 個別ルートに入る前の三人居る主要ヒーローの好感度は、まだ落ちていない。

 何故かと言うと隠しヒーロー騎士団長オーギュスト攻略は、それほどにまで条件が厳しい最難関ルートで、乙女ゲームの攻略wikiの掲示板でも「また駄目だった!」という、オーギュストを攻略しようとしていたイケオジ派たちの阿鼻叫喚に溢れていたものだった。

「え。待って。それって……クロエ。まさか」

 オーギュスト様とのハッピーエンドに、好感度MAX状態にある三人が邪魔だから……それを、私に押し付けたってこと……?

「その、まさかなの♡ これからは乙女ゲームのヒロイン役、よろしくね。レイラ」

「え。待って。嘘でしょ?」

 彼女の言っていることが、どういう意味かを悟り思わず声が震えてしまった私に、両手を合わせたクロエはピンク色の瞳を細めつつ申し訳なさそうに微笑んだ。

「なんだかレイラに、三人を押し付けるみたいになっちゃって……ほんとごめんねぇ♡  誰かを選んでも選ばなくても、これから本当に面倒なことになると思うけど、レイラならきっと大丈夫。何とかなると思う! お幸せにねぇ♡」
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