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06 探していた

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「ああ。この能力を持たぬ君には想像もつかないかもしれないが、絶対に好かれると思っている相手に好かれても、嬉しくないし楽しくもないんだ。だから、君のような存在をずっと探していた。僕の能力に元から耐性を持ち、王族に嫁ぐに相応しい身分。それに、外見も僕の好みだ。美しい」

 にっこりと微笑んだアレックス殿下に、正面から褒められて、私は顔が熱くなってしまった。違う違う。反応するところはそこではないわよね……?

 待って……! 待って。そんな能力なんてなくても、うら若き女性はアレックス殿下のことを好きになりませんか!?

「……あのですね。私には理解しかねる部分が多いのですが、アレックス殿下には女性を惑わせてしまう能力を持ち、私には耐性があるようだ。そこまでは、理解いたしました……けれど、アレックス殿下は王族であり、非常に容姿も良いです。だとするならば、女性ならば誰しも殿下に好意を持ってしまうのは必然の結果ではないでしょうか?」

「それは良い質問だ。ローズ。実はこの能力に気がついた経緯というのが、僕の乳母やお付きの侍女もその能力に抗えなかったという事実だ。仕事として傍に居た彼女たちは幼い僕に対する異常な執着を見せたが、三日ほど距離をおけば自分を取り戻した。よって、僕の世話係は常に男性しか居ない」

 アレックス殿下は幼い頃より、女性に好かれ過ぎることについて、悩んでいたということ? それは気の毒かもしれない。

「そのようなお話は、私は聞いたことがありませんでした」

 アレックス殿下の噂は美しい女性と見れば声を掛けて、飽きたら捨ててしまうということだけ。

 その流れはそうなのだろうけれど、まさか、こんな理由であるとは。

「仕事上で知った王族の私的な生活内容を、広げるような命知らずも居まい」

 確かに、それは彼の言った通りだ。

 誘われて断られるという一連の流れは、当の貴族令嬢でなくとも、彼女たちの身の回りの者も知るところだけど、アレックス殿下に変な能力があるらしいと流すことは不敬に値するだろう。

「……私は遠目でしか殿下を見たこともなく、手紙でお断りしただけです。なのに、何故ここにいらっしゃったのですか?」

 そうだ。一度会ったのならば、私に耐性があるとわかっただろうけれど、会いもしていないのに、アレックス殿下はこうして会いに来た。
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