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13 誤解
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「ねえ。お願いだから。話を聞いて。私を死なせないために、婚約解消しようとまでしたんでしょう? そんなことを結婚式直前の土壇場の今してしまえば、自分の社会的地位も信用も何もかも失ってしまうのをわかってて。一回もう死んだと思って、私の言葉を信じてからでも……良いんじゃない?」
「レティシア」
ようやく、誤解だとわかったジークは私の言葉を聞いてくれるようになったみたいだった。それにしても、彼の心の傷は深そう。だって、私とアルベールの二人は彼にまだ何も言ってないもの。
「ね。資料室に戻ろう。私たち二人がこれからやろうと思っていることを、ちゃんと説明するから……そして、ジークも被害者として、意見出来るところは教えて欲しい」
◇◆◇
ジークは私と一緒に資料室へと戻り、何で私たち二人がお揃いの魔除けの指輪を付けているのか説明すると、勘違いしたことを素直に謝ってくれた。
「すまない。二人を見て、頭に血が昇ってしまって……勘違いをした。申し訳ない。許して欲しい」
「本当に、そうだよ……なんか、良くわからぬ内に悪どい間男役にされているが、僕だって自分ではない男を好きな女性を寝取るような趣味はない」
「アルベール……」
難しい顔をしたアルベールの言わんとしていることは、もっともだと言えた。そして、彼と共に一緒に居ただけで疑われた私だって、そうだ。
ジークを裏切ろうなんて、本当に一切考えもしていない。けど、実際にもしそれがあったとしたなら、何らかの理由があったはずだ。
「お前は、何だって自分だけで悩んで、解決すれば良いと思っているんだろう。この事だって、すぐに僕とレティシアに相談して居れば、そんなに何度も心から傷付くこともなかっただろうに……まあ、もう良い。終わったことだ。今回はどうにかしてひっくり返せば、良いだけのことだ」
「すまない……」
「ねえ。もう良いでしょう。何度も辛い思いをしたのよ。ジークを、もうこれ以上責めないであげて……」
私はまた憔悴した様子で肩を落としてアルベールに謝るジークを見ていられなくて、思わず声を上げてしまった。
「はいはい。君のことが死ぬほど大好きな婚約者に免じて、とりあえずここは許してやることにするか……では、ジーク。僕たちには、君を救うための情報が圧倒的に足りてないんだ。今は思い返すのも辛いとは思うが、覚えている限りで良い。何でも良いから、これから僕たちに起こるだろう未来のことを教えてくれ」
その時のアルベールの厳しい目は、完全に職務上の捜査に携わる副団長、そのもの……だった。
そして、私たちの話に話に耳を傾けてくれて、前向きに協力してくれることになったジークが言うには、私たち二人の裏切りが発覚する舞台は、何故かいつも同じ夜会だったらしい。
その後は、それからのジークの動きによって展開が分岐したりするらしいけど、必ず私たち二人がジークに見せつけるようにして二人で踊って恋仲だと主張するのが、その夜会だったそうだ。
ジークも、流石に今まで繰り返した全てを正直覚えてはいないそうだ。何度も悲劇が起こるのをどうにかしようとして頑張ったけど、徒労に終わった。そして、私を生かすためにすべて諦めようとして、心が折れてしまったみたい。無理もない、話だと思う。
「まぁ……十中八九、その夜会には、術師が確認のために来ているな。そして、自分の企みが首尾よく上手くいったかを、そこで確認しているんだろう」
「レティシア」
ようやく、誤解だとわかったジークは私の言葉を聞いてくれるようになったみたいだった。それにしても、彼の心の傷は深そう。だって、私とアルベールの二人は彼にまだ何も言ってないもの。
「ね。資料室に戻ろう。私たち二人がこれからやろうと思っていることを、ちゃんと説明するから……そして、ジークも被害者として、意見出来るところは教えて欲しい」
◇◆◇
ジークは私と一緒に資料室へと戻り、何で私たち二人がお揃いの魔除けの指輪を付けているのか説明すると、勘違いしたことを素直に謝ってくれた。
「すまない。二人を見て、頭に血が昇ってしまって……勘違いをした。申し訳ない。許して欲しい」
「本当に、そうだよ……なんか、良くわからぬ内に悪どい間男役にされているが、僕だって自分ではない男を好きな女性を寝取るような趣味はない」
「アルベール……」
難しい顔をしたアルベールの言わんとしていることは、もっともだと言えた。そして、彼と共に一緒に居ただけで疑われた私だって、そうだ。
ジークを裏切ろうなんて、本当に一切考えもしていない。けど、実際にもしそれがあったとしたなら、何らかの理由があったはずだ。
「お前は、何だって自分だけで悩んで、解決すれば良いと思っているんだろう。この事だって、すぐに僕とレティシアに相談して居れば、そんなに何度も心から傷付くこともなかっただろうに……まあ、もう良い。終わったことだ。今回はどうにかしてひっくり返せば、良いだけのことだ」
「すまない……」
「ねえ。もう良いでしょう。何度も辛い思いをしたのよ。ジークを、もうこれ以上責めないであげて……」
私はまた憔悴した様子で肩を落としてアルベールに謝るジークを見ていられなくて、思わず声を上げてしまった。
「はいはい。君のことが死ぬほど大好きな婚約者に免じて、とりあえずここは許してやることにするか……では、ジーク。僕たちには、君を救うための情報が圧倒的に足りてないんだ。今は思い返すのも辛いとは思うが、覚えている限りで良い。何でも良いから、これから僕たちに起こるだろう未来のことを教えてくれ」
その時のアルベールの厳しい目は、完全に職務上の捜査に携わる副団長、そのもの……だった。
そして、私たちの話に話に耳を傾けてくれて、前向きに協力してくれることになったジークが言うには、私たち二人の裏切りが発覚する舞台は、何故かいつも同じ夜会だったらしい。
その後は、それからのジークの動きによって展開が分岐したりするらしいけど、必ず私たち二人がジークに見せつけるようにして二人で踊って恋仲だと主張するのが、その夜会だったそうだ。
ジークも、流石に今まで繰り返した全てを正直覚えてはいないそうだ。何度も悲劇が起こるのをどうにかしようとして頑張ったけど、徒労に終わった。そして、私を生かすためにすべて諦めようとして、心が折れてしまったみたい。無理もない、話だと思う。
「まぁ……十中八九、その夜会には、術師が確認のために来ているな。そして、自分の企みが首尾よく上手くいったかを、そこで確認しているんだろう」
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