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ヘアピンは恋を結ぶ
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高校2年生の春。主人公のリョウタは、ある日、授業中に何かが光るのに気づいてふと机の下を見ると、そこにさくらんぼの飾りがついた小さなヘアピンが落ちていた。「誰のだろう?」と興味本位で拾い上げてみたが、思い当たる顔がない。
周りを見渡すと、すぐそばの席に座っているミサキと目が合った。彼女は明るくて元気いっぱいで、いつもクラスを盛り上げるムードメーカーだ。実はリョウタも、ミサキにほのかに好意を抱いていた。「もしかして、ミサキのかな?」と思い切って聞いてみることにする。
「ミサキ、このヘアピン落とした?」
突然の質問に驚いた顔をしたミサキだったが、少し戸惑いながら答えた。「え?それ、私のじゃないよ。でも…気に入っちゃったかも!」と微笑む。リョウタはその笑顔にどきりとしながらも、どうしたものかと考えあぐねていた。
その日以来、リョウタは机の中にそのヘアピンをそっとしまっていたが、気づけば何となくヘアピンを見つめる癖がついてしまっていた。そして、ミサキの笑顔と「気に入っちゃった」という言葉が頭から離れない。「せっかくだし、何か理由をつけてもう一度ミサキに声をかけようか…」と悶々とするリョウタ。
そして数日後、リョウタは意を決してミサキに再度話しかけてみることにした。「あのさ、やっぱりミサキがこのヘアピンを持っていたほうが似合うと思うんだ」と、少し照れくさそうに彼女にヘアピンを差し出す。
ミサキはびっくりした様子だったが、少し顔を赤らめて「…じゃあ、もらっていいの?」と嬉しそうに聞いた。リョウタは思わず「もちろん!むしろ、絶対そのほうがいいって!」と大きく頷いてしまった。ミサキはふといたずらっぽい笑みを浮かべ、「じゃあ、お礼に放課後ラーメンでもごちそうしてよ!」と軽やかに提案した。
「え、ラーメン?」と一瞬驚いたリョウタだったが、ミサキと一緒に出かけられる口実ができたことに心が踊った。
放課後、二人は学校近くのラーメン屋へ向かった。おいしいラーメンを一緒にすすりながら、リョウタはなんだか不思議な気持ちに包まれていた。ミサキがリョウタの隣で夢中に麺をすする姿を見ていると、まるで昔からの友達のように気楽な雰囲気に思える。
その後、ふと会話が途切れ、ミサキがヘアピンの話を持ち出した。「ねえ、リョウタって、なんでこのヘアピンを持ってたの?」と、少し茶化すように聞いてきた。リョウタは「いや、ほんとに偶然見つけただけで…」と照れくさく笑いながらも、「なんでだろうね、気づいたらずっと持ってたんだ」と素直に答えた。
すると、ミサキが急に真剣な表情でリョウタを見つめ、「リョウタ、もしかして、私に何か言いたいことあるんじゃないの?」と小声で聞いてきた。リョウタは突然の問いに顔が熱くなり、返す言葉が見つからなくなる。
「え、そ、そういうわけじゃ…」と焦るリョウタだったが、ミサキが「そっか」と少しさびしそうに視線をそらしたのを見て、勇気を出して「いや、あの…その、ミサキが、なんていうか、気になるんだよ!」と半ば勢いで言ってしまった。
ミサキは驚いた顔をした後、ふわりと笑い、「そうだったんだ」と静かにうなずいた。そして、小声で「私も…同じかも」と返事をした。その瞬間、二人の間に漂っていた微妙な距離感が一気に消えたような気がした。
次の日から、リョウタとミサキは学校でも自然に一緒に過ごす時間が増えた。教室で目が合うと微笑み合い、昼休みには一緒にお弁当を食べ、帰り道も話が尽きることはない。二人の仲は誰の目から見ても「なんだか最近、いい感じ」と映るようになっていた。
そんなある日、リョウタがふとミサキの髪を見ると、あのさくらんぼのヘアピンがさりげなく付けられているのに気がついた。「それ、ちゃんと使ってるんだな」と少し照れながら言うと、ミサキは笑顔で「当たり前じゃん!リョウタがくれたんだから」と言って、少し照れた様子で自分の髪を触った。
そして、ミサキがふと何かを思い出したように「あのヘアピン、結局誰のか分からなかったけど、これがなかったらリョウタとここまで仲良くなれなかったかもね」とぽつりとつぶやいた。
リョウタはその言葉に胸が熱くなり、「そうだな、ありがとうな、ヘアピン」と心の中で感謝を込めてつぶやいた。そして、小さなきっかけが彼らの間に生まれたことを、どこか運命的なものだと感じた。
それ以来、二人は何かあるたびに「あのヘアピンがきっかけだからな」と互いに茶化しながら笑い合うようになった。そして、そのさくらんぼのヘアピンは、二人にとっての「特別なもの」として、ミサキの髪の中でさりげなく輝き続けるのだった。
あれから数か月が過ぎ、季節は梅雨を越えて初夏を迎えた。夏服に変わった制服で登校してきたミサキは、教室に入るなりリョウタの方を見てにっこりと微笑んだ。ミサキの髪には、例のさくらんぼのヘアピンが変わらず留められている。それを見たリョウタは、少し照れくさそうに笑い返し、「さくらんぼの季節って感じだな」と言った。
ミサキはリョウタの言葉に軽く肩をすくめ、「ホントだね!でも、このヘアピンのせいでみんなからさくらんぼ好きって思われちゃってるかも」とおどけた表情で返した。実際、最近ではクラスの友達からさくらんぼの飴やガムをもらうことが増えたそうだ。
放課後、リョウタとミサキは学校を出て、帰り道にある小さな公園に寄った。そこは二人のお気に入りの場所で、放課後や休日によく訪れるようになっていた。ベンチに座ると、リョウタは少し恥ずかしそうにポケットから何かを取り出した。
「ミサキ、これ、あげる」と差し出したのは、小さなさくらんぼのチャームが付いたキーホルダーだった。
ミサキは驚きつつも目を輝かせ、「え、かわいい!でも、何でまたさくらんぼなの?」と聞いた。リョウタは照れ隠しで後頭部をかきながら「いや…ヘアピンがさくらんぼだったから、ミサキにぴったりかなって思って」と言った。
ミサキは嬉しそうにキーホルダーを手に取り、「ありがとう、大事にするね!」と微笑んだ。二人はその後もベンチに座ってのんびりと話を続け、時折お互いを見つめ合っては照れくさそうに笑っていた。
その日、家に帰ったミサキは、自分の机の引き出しにヘアピンとキーホルダーを並べて置いた。ふとヘアピンを見つめながら、あの日のことを思い出し、思わず一人で笑ってしまった。「これがなかったら、リョウタとここまで近づくこともなかったんだよね…」とつぶやくと、自然と心が温かくなった。
それからというもの、二人はお揃いのさくらんぼのアイテムを身につけて過ごすようになった。周囲の友人たちからは「またさくらんぼ?」と冷やかされることもあったが、二人にとってはそんなことも全てが楽しく、特別な時間だった。
リョウタとミサキにとって、「さくらんぼ」はただの果物以上の意味を持つものになり、それを見るたびにお互いの存在を再確認するようになった。そして二人の青春は、さくらんぼのように甘酸っぱく、少し照れくさいものとして、これからも続いていくのだった。
周りを見渡すと、すぐそばの席に座っているミサキと目が合った。彼女は明るくて元気いっぱいで、いつもクラスを盛り上げるムードメーカーだ。実はリョウタも、ミサキにほのかに好意を抱いていた。「もしかして、ミサキのかな?」と思い切って聞いてみることにする。
「ミサキ、このヘアピン落とした?」
突然の質問に驚いた顔をしたミサキだったが、少し戸惑いながら答えた。「え?それ、私のじゃないよ。でも…気に入っちゃったかも!」と微笑む。リョウタはその笑顔にどきりとしながらも、どうしたものかと考えあぐねていた。
その日以来、リョウタは机の中にそのヘアピンをそっとしまっていたが、気づけば何となくヘアピンを見つめる癖がついてしまっていた。そして、ミサキの笑顔と「気に入っちゃった」という言葉が頭から離れない。「せっかくだし、何か理由をつけてもう一度ミサキに声をかけようか…」と悶々とするリョウタ。
そして数日後、リョウタは意を決してミサキに再度話しかけてみることにした。「あのさ、やっぱりミサキがこのヘアピンを持っていたほうが似合うと思うんだ」と、少し照れくさそうに彼女にヘアピンを差し出す。
ミサキはびっくりした様子だったが、少し顔を赤らめて「…じゃあ、もらっていいの?」と嬉しそうに聞いた。リョウタは思わず「もちろん!むしろ、絶対そのほうがいいって!」と大きく頷いてしまった。ミサキはふといたずらっぽい笑みを浮かべ、「じゃあ、お礼に放課後ラーメンでもごちそうしてよ!」と軽やかに提案した。
「え、ラーメン?」と一瞬驚いたリョウタだったが、ミサキと一緒に出かけられる口実ができたことに心が踊った。
放課後、二人は学校近くのラーメン屋へ向かった。おいしいラーメンを一緒にすすりながら、リョウタはなんだか不思議な気持ちに包まれていた。ミサキがリョウタの隣で夢中に麺をすする姿を見ていると、まるで昔からの友達のように気楽な雰囲気に思える。
その後、ふと会話が途切れ、ミサキがヘアピンの話を持ち出した。「ねえ、リョウタって、なんでこのヘアピンを持ってたの?」と、少し茶化すように聞いてきた。リョウタは「いや、ほんとに偶然見つけただけで…」と照れくさく笑いながらも、「なんでだろうね、気づいたらずっと持ってたんだ」と素直に答えた。
すると、ミサキが急に真剣な表情でリョウタを見つめ、「リョウタ、もしかして、私に何か言いたいことあるんじゃないの?」と小声で聞いてきた。リョウタは突然の問いに顔が熱くなり、返す言葉が見つからなくなる。
「え、そ、そういうわけじゃ…」と焦るリョウタだったが、ミサキが「そっか」と少しさびしそうに視線をそらしたのを見て、勇気を出して「いや、あの…その、ミサキが、なんていうか、気になるんだよ!」と半ば勢いで言ってしまった。
ミサキは驚いた顔をした後、ふわりと笑い、「そうだったんだ」と静かにうなずいた。そして、小声で「私も…同じかも」と返事をした。その瞬間、二人の間に漂っていた微妙な距離感が一気に消えたような気がした。
次の日から、リョウタとミサキは学校でも自然に一緒に過ごす時間が増えた。教室で目が合うと微笑み合い、昼休みには一緒にお弁当を食べ、帰り道も話が尽きることはない。二人の仲は誰の目から見ても「なんだか最近、いい感じ」と映るようになっていた。
そんなある日、リョウタがふとミサキの髪を見ると、あのさくらんぼのヘアピンがさりげなく付けられているのに気がついた。「それ、ちゃんと使ってるんだな」と少し照れながら言うと、ミサキは笑顔で「当たり前じゃん!リョウタがくれたんだから」と言って、少し照れた様子で自分の髪を触った。
そして、ミサキがふと何かを思い出したように「あのヘアピン、結局誰のか分からなかったけど、これがなかったらリョウタとここまで仲良くなれなかったかもね」とぽつりとつぶやいた。
リョウタはその言葉に胸が熱くなり、「そうだな、ありがとうな、ヘアピン」と心の中で感謝を込めてつぶやいた。そして、小さなきっかけが彼らの間に生まれたことを、どこか運命的なものだと感じた。
それ以来、二人は何かあるたびに「あのヘアピンがきっかけだからな」と互いに茶化しながら笑い合うようになった。そして、そのさくらんぼのヘアピンは、二人にとっての「特別なもの」として、ミサキの髪の中でさりげなく輝き続けるのだった。
あれから数か月が過ぎ、季節は梅雨を越えて初夏を迎えた。夏服に変わった制服で登校してきたミサキは、教室に入るなりリョウタの方を見てにっこりと微笑んだ。ミサキの髪には、例のさくらんぼのヘアピンが変わらず留められている。それを見たリョウタは、少し照れくさそうに笑い返し、「さくらんぼの季節って感じだな」と言った。
ミサキはリョウタの言葉に軽く肩をすくめ、「ホントだね!でも、このヘアピンのせいでみんなからさくらんぼ好きって思われちゃってるかも」とおどけた表情で返した。実際、最近ではクラスの友達からさくらんぼの飴やガムをもらうことが増えたそうだ。
放課後、リョウタとミサキは学校を出て、帰り道にある小さな公園に寄った。そこは二人のお気に入りの場所で、放課後や休日によく訪れるようになっていた。ベンチに座ると、リョウタは少し恥ずかしそうにポケットから何かを取り出した。
「ミサキ、これ、あげる」と差し出したのは、小さなさくらんぼのチャームが付いたキーホルダーだった。
ミサキは驚きつつも目を輝かせ、「え、かわいい!でも、何でまたさくらんぼなの?」と聞いた。リョウタは照れ隠しで後頭部をかきながら「いや…ヘアピンがさくらんぼだったから、ミサキにぴったりかなって思って」と言った。
ミサキは嬉しそうにキーホルダーを手に取り、「ありがとう、大事にするね!」と微笑んだ。二人はその後もベンチに座ってのんびりと話を続け、時折お互いを見つめ合っては照れくさそうに笑っていた。
その日、家に帰ったミサキは、自分の机の引き出しにヘアピンとキーホルダーを並べて置いた。ふとヘアピンを見つめながら、あの日のことを思い出し、思わず一人で笑ってしまった。「これがなかったら、リョウタとここまで近づくこともなかったんだよね…」とつぶやくと、自然と心が温かくなった。
それからというもの、二人はお揃いのさくらんぼのアイテムを身につけて過ごすようになった。周囲の友人たちからは「またさくらんぼ?」と冷やかされることもあったが、二人にとってはそんなことも全てが楽しく、特別な時間だった。
リョウタとミサキにとって、「さくらんぼ」はただの果物以上の意味を持つものになり、それを見るたびにお互いの存在を再確認するようになった。そして二人の青春は、さくらんぼのように甘酸っぱく、少し照れくさいものとして、これからも続いていくのだった。
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