とある日

ぼくのすてきな日常

ぼくの名前はミケ。白と黒のまだら模様の猫だ。毎日窓辺に座って外を眺めるのが好きだけど、最近、ふとした瞬間に思うことがある。「人間になりたいな」と。

人間は不思議だ。彼らは立って歩き、話し、色々なことをしている。特に、ママと話すときの楽しそうな表情を見ると、自分もその一部になりたいと願ってしまう。今日はそんな思いが強くなっていた。

「ミケ、今日はお散歩に行こうか」と、ママが声をかけてくれた。ぼくは嬉しくて、すぐに尻尾を立てた。外に出ると、風が心地よく、草の香りが漂ってきた。お散歩の途中、他の猫たちともすれ違ったが、ぼくの心はいつもと違う方向に向かっていた。

「もし人間になれたら、ママともっと話せるし、遊びに行けるかもしれない」と考える。そんなとき、ふと目の前に現れたのは、不思議な猫だった。まるで夢の中から出てきたような、長い毛並みのグレーの猫だ。

「お前、何を悩んでいる？」と、その猫が言った。ぼくは驚いた。「え、話せるの？」と答えると、猫はにっこり笑って「実は、お前の願いを叶えてあげられるかもしれない」と続けた。

「本当に？　僕、人間になりたいんだ！」ぼくの心は高鳴った。猫はうなずき、「ならば、満月の夜に、特別な儀式をすることが必要だ」と教えてくれた。ぼくはすぐにその日を待ちわびることにした。

数日後、ついにその夜がやってきた。月が明るく輝いている。ぼくはあの猫の言った場所へ向かう。すると、あのグレーの猫が待っていた。

「準備はいいか？」と、彼は言った。「ここで心の中で本当に願うことが大切だ。」ぼくは目を閉じて、心の底から願った。「人間になりたい！　ママと話したい！」

すると、周りの空気が変わり、何かが光り始めた。ぼくはふわふわと浮かんでいる気がした。やがて、地面に戻ると、体が変わっていることに気づいた。足が立っている！　手もある！　ぼくは鏡の前に立って、自分の姿を確認した。

「人間になった…！」ぼくは興奮した。しかし、すぐに不安も訪れた。人間の姿になったとはいえ、何をしたらいいのかわからない。どうやってママと話せばいいのか、動き方もよくわからない。

「大丈夫、ミケ」と、グレーの猫が言った。「まずは、ママのところへ行ってみるといい。」ぼくはドキドキしながら、ママのいる家へと急いだ。

ドアを開けると、ママが驚いた表情で振り向いた。「ミケ…？　どうして人間に…！」ぼくは焦りながらも、「ママ、僕だよ！　ミケだよ！」と叫んだ。ママの顔に笑顔が戻ると、彼女は泣きそうになりながら抱きしめてくれた。

「ミケ、どうしてこんなことに…！」彼女は混乱していたけれど、同時に喜びも感じているようだった。ぼくも嬉しかったが、どこか落ち着かない。

しばらくの間、ママと楽しく会話をした。けれど、やがて気づいたことがあった。人間の生活は、猫の時とは全然違う。走り回ったり、自由に飛び跳ねたりできないのだ。話せるのは楽しいけれど、窮屈に感じることも多い。

一晩過ぎ、ぼくは考えた。「本当に人間になりたいのか？」。そう思ったとき、グレーの猫がまた現れた。「どうだったか？」と彼は聞いた。ぼくは真剣な表情で、「やっぱり、猫のままでいたい」と答えた。

「それが本心か。じゃあ、もう一度願えば、元の姿に戻れる」と彼は言った。ぼくは再び満月の夜を待ち、願った。「元の猫に戻りたい！」

するとまた、ふわふわとした感覚が広がり、気がつくと、ぼくは窓辺で丸くなっていた。自分の体を見てみると、猫の姿に戻っていた。とてもホッとした。

「ミケ、元気？」とママが声をかける。ぼくは嬉しくて、彼女の足元にスリスリした。人間になりたいという願いは消えたけれど、今のままで幸せだと感じた。ママと一緒にいることが、ぼくにとっての最高の幸せだ。

それからというもの、ぼくは猫としての生活を楽しむことにした。友達と遊んだり、窓辺で日向ぼっこしたり。ぼくは大好きなママと一緒にいることが、何よりも幸せだと知った。