我が罪への供物

こうやさい

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一緒には行かない

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「一緒に行こうね、置いていかないでね」
 そう言いながら、何時も彼女は私より先に行ってしまう。

 女子は無意味につるみたがるというが、少なくともこの同学年の母方の従妹に関しては当てはまっているだろう。
 過疎化が進んだとはいえ、この学年にクラスは辛うじて二つあったので終了時間の微妙なズレや移動教室などの関係上休み時間ごとに懐きに来ることはなかったが、長めの休み時間となる昼休みや、合同での授業となる体育などでは何時もこちらにくっついてくる。

 冬の体育となると校外マラソンが定番だという話はよく聞くが本当にそうなのだろうか?
 ただこの辺りの小中学校がそうである事は拒否できない。
 小学校の高学年辺りくらいから、あちこちで「途中で歩こうね」とか「一緒にゴールしようね」なんて言葉が聞こえてくるようになった。これはゆとり教育の弊害ではなく昔からの伝統だと祖母が言っていた。

「一緒に行こうね、置いていかないでね」

 中学も二年だというのに従妹は同じ事を言う。
 そう言いながら何時も従妹は最後にスパートをかけさっさとゴールしてしまう。
 こちらがそれを抗議すらしないのは諦めたというより体力の限界の差だ。
 全力で走ったとしても従妹には勝てない。
 なのに何回も同じ事をいい、何回も裏切っていく。

 だからたまにはこちらが裏切ってやるのもいいだろう。
 もちろんマラソンでは勝てないけれど。

 私たちは身近に伝承を一つ持っている。
 海神様に嫁ぐこと、それを血族の女性にのみ伝えていくこと。
 つまり一人いけにえに差し出せと言われている訳だけれど。

 従妹は卒業の春嫁ぐ予定だった。
 だから私が先に行く。

「一緒に行こうね、置いていかないでね」

 状況が状況だから、追いかけては来れないだろう。
 けれどそれは報いなのだから。
 何時も私を置き去りにしたのだから。
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