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シナリオを変えようと婚約をしてみたけれど

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 わたくしにそれを言わない代わりにお義兄さまは更に優しくなりました。
 恐らく本来リーゼロッテが恋情を自覚するのはここではなかったかと思うほど。
 それまでは好きではあっても家族愛との境目が分からず、そして貴族といえど女の子ですもの、王子様に多少の憧れを持っていたとしてもおかしくはありません。
 それがあれですのよ?
 わたくしはある程度そういう輩だと知っていたせいと前世で年齢としを重ねていた分諦観に似た感情を覚えただけですけれど、もしその年齢の夢を見ている女の子だったとしたらショックを受けないはずがありません。
 状況によってはもっと酷い言葉を投げかけられることとなったでしょう。
 その後慰めてくれる存在がいればそれが猫でも惚れていたかもしれませんわ。
 ましてや元から大好きなお義兄さまなら依存に近い状態で好きになっても何ら不思議はありません。
 そんな関係の中に現れたヒロインは邪魔者というよりむしろ異物に近いものでしょう。
 異物は排除するのが正しいもの。それをすることに良心が痛むはずがありませんわ。
 記憶が戻る前のあの優しいリーゼロッテがどうして断罪されたりましてや殺されるほど憎まれるようになるほど変わるのかと思いましたけれど、少し病んでらしたんですね。

 猫といえば先日住み込みの使用人の子供が拾って参りまして。
 少しでもわたくしの慰めになればと、普段なら処分するはずなのにうちで飼われることになったのですけど。
 その猫、ルーク様ルートでリーゼロッテにいじめられるヒロインを、慰めるもふもふ枠の猫でしたの。
 ……そういえば「お前もリーゼロッテ様にいじめられたのね、かわいそうに」とかってヒロインの台詞があったような。
 どちらなのでしょう? 濡れ衣だと言いたいところですけれど。
 むしろ今子猫相手だというのに八つ当たりしたい気持ちでいっぱいですから、自信がありませんわ。
 わたくしのために飼って下さったのに酷いですわよね。
 けれど変えられないシナリオを見せつけられているようで正直苦しいです。
 今回も、この子はわたくしに懐かないのでしょうね。
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