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仮に王子でなかったとしても魅力的な部分はあるのだから、そのこと自体はおかしくないけれど。
それでも現実を見た以上辛いことになるのは分かっているのに。
気持ちを押さえられると思っていたのに。
王子様と上手く行く現実的でない妄想は出会う前にたくさんした。
そのせいか、殿下が現実になってしまったせいか、逃避ですら幸せな思考にはならない。
上手く行かない理由ばかりを考えついて。
一緒にいられることまでは無理矢理考えられても。
夫婦にはなれなかった。
そもそも王族と、そこまで大きなくくりにしなくともあたしと殿下のかもしれないけれど、夫婦観が同じとは限らないんだけれど。
あたしの中の夫婦は役目の違いはあれど本質的に対等だった。
それを当てはめてしまうとあたしでは殿下の隣には並べない。
好き勝手やっているだけなら出来るとは、殿下をみているからこそ思えない。
だからなれない。
将来は望めない。
逆に殿下の方が平民になって、なんて戯れに考えた事もある。
……案外とそれでも大丈夫そうと思ういろいろな意味での有能さは、そこいら辺の見下すことしかしない下級貴族よりもちろんあるけれど。
殿下は血筋だけじゃなく在り方が王族だから。
きっと無責任に投げ出したりはしない。
そして国にとってかけがえのない存在になるだろうから。
それを失わせるわけにはいかない。
この特殊な場所から出れば交わることはきっとない。
それでも恋はするのだから感情というのは勝手だ。
それ以前に殿下はあたしにそんな感情を持っていないことを思い出しへこんだ。
そもそも出会う前から婚約者がいるのに。
婚約者さまは貴族の中にいてもなお特別という言葉が似合うような人なのに。
それでも何か役に立ちたいと思うけれど。
些細な事すらお付きがいるのだから手伝えることなどない。
難しい事は手伝おうにもこの学園で一番理解出来ない立場にいるだろう。
それだけが、純粋に残る事実。
ならはそれを使えばいい。
王といえど、王なればこそ、直接的か間接的かはとにかく平民に関わるようになるはず。
特に殿下は平民だからと見捨てたりはしないはず。
けれど一緒に授業を受けるような距離で長期間関わる機会もそうないはず。
一人では片よりもするけれど、それでも貴族だけと関わるよりは視野が広がるはず。
そうすればきっともっといい王様になるはず。
当人も幅広い価値観を持ちたいと言ってらしたし。
そうやって、つけた屁理屈で、一方的な思い込みで、一般的な意味ではないけれど、恋を成就させたつもりだった。
それでも好きな人の役に立てたという自己満足を抱いて。
……いずれは普通に誰かと結婚して。
もし女の子が生まれたら、昔ちょっと王様に会うことがあって恋をしたのよ、なんて秘密めかして話せる日もいつか来るんだろうと。
その時にはもう、殿下が気持ちを寄せてくれることがあるなんて欠片も考えなくなっていた。
それでも現実を見た以上辛いことになるのは分かっているのに。
気持ちを押さえられると思っていたのに。
王子様と上手く行く現実的でない妄想は出会う前にたくさんした。
そのせいか、殿下が現実になってしまったせいか、逃避ですら幸せな思考にはならない。
上手く行かない理由ばかりを考えついて。
一緒にいられることまでは無理矢理考えられても。
夫婦にはなれなかった。
そもそも王族と、そこまで大きなくくりにしなくともあたしと殿下のかもしれないけれど、夫婦観が同じとは限らないんだけれど。
あたしの中の夫婦は役目の違いはあれど本質的に対等だった。
それを当てはめてしまうとあたしでは殿下の隣には並べない。
好き勝手やっているだけなら出来るとは、殿下をみているからこそ思えない。
だからなれない。
将来は望めない。
逆に殿下の方が平民になって、なんて戯れに考えた事もある。
……案外とそれでも大丈夫そうと思ういろいろな意味での有能さは、そこいら辺の見下すことしかしない下級貴族よりもちろんあるけれど。
殿下は血筋だけじゃなく在り方が王族だから。
きっと無責任に投げ出したりはしない。
そして国にとってかけがえのない存在になるだろうから。
それを失わせるわけにはいかない。
この特殊な場所から出れば交わることはきっとない。
それでも恋はするのだから感情というのは勝手だ。
それ以前に殿下はあたしにそんな感情を持っていないことを思い出しへこんだ。
そもそも出会う前から婚約者がいるのに。
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それでも何か役に立ちたいと思うけれど。
些細な事すらお付きがいるのだから手伝えることなどない。
難しい事は手伝おうにもこの学園で一番理解出来ない立場にいるだろう。
それだけが、純粋に残る事実。
ならはそれを使えばいい。
王といえど、王なればこそ、直接的か間接的かはとにかく平民に関わるようになるはず。
特に殿下は平民だからと見捨てたりはしないはず。
けれど一緒に授業を受けるような距離で長期間関わる機会もそうないはず。
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そうすればきっともっといい王様になるはず。
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そうやって、つけた屁理屈で、一方的な思い込みで、一般的な意味ではないけれど、恋を成就させたつもりだった。
それでも好きな人の役に立てたという自己満足を抱いて。
……いずれは普通に誰かと結婚して。
もし女の子が生まれたら、昔ちょっと王様に会うことがあって恋をしたのよ、なんて秘密めかして話せる日もいつか来るんだろうと。
その時にはもう、殿下が気持ちを寄せてくれることがあるなんて欠片も考えなくなっていた。
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