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関係あるかもしれないしないかもしれない話
きっと悪役はわたし 前編
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誓って、当初殿下に恋情は持っていませんでした。
王族皇族には政略の駒として出せる女児が多い方がよいと世間では思われているようですが、子供を育てるということは予算がそれなりにかかることですし、王族皇族ともなれば使い捨てに近い駒にも品質を求めるというもの。誰彼構わず差し出さなければならないほど立場が弱いわけでもないことですし。
わたしは身分の低い側妃の娘のうえその品質が少しばかり悪くございました。
順番としても第六皇女という微妙なもので、とりあえず早く生まれたというだけで、仮に多少微妙でも価値をつけるために教育や美容に早期から力を注がれるため一定水準以上に達することになる第一第二でも、その影響が色濃く残る第三辺りでもなく、その下ともなればよほど容姿や能力に優れているとか、生母やその実家の立場が強いなどの付加価値がなければ、どこかおざなりに育てられるもの。
もう少し後に生まれればお姉様方では年齢的に合わない相手に嫁ぐなどの場合のために状況によって扱いは違うのでしょうけれど、ちょうどわたしはそこから外れています。その上お姉様方は小細工なしでも美しく聡明ですので、今更わたしが注目されることはないでしょう。
もちろん皇女としてはわたし以下に扱われているものもいます。けれどそこまでいけば母親が臣下に下賜されたのについて行きその家のお嬢様として育てられるとか、いっそ市井に降りて城ほどの生活は出来ないものの自由を手に入れられた方もいるそうです。
それでも全員が生きて幸せになれる訳ではないのだから皇帝陛下の慈悲に感謝しなさいと子供の頃は特によく言われましたわ。皇帝陛下にです、お父様にじゃありません。わたしの今の生活がだけでなく、存在そのものが皇帝陛下の慈悲の結果であり、父親に対する何かを求めるな、と。
ある意味では間違っていませんわね、気まぐれに侍女に手をつけた結果だと聞いた事があります。
なのに外には出られずに、お姉様方の輪にも入れず、傲慢かもしれませんが孤独を感じておりました。
そんなわたしにも義務はきっちり回ってきます、場合によっては死んできてもいいという捨て駒に近いものですが。
もしそうなってもきっちり利用なさるんでしょうね、本当に皇族というものは因果ですこと。
なので今現在関係が微妙な隣国の学園へ外交を理由に留学いたしました。
少しでも均衡が崩れれば、向こうはわたしを人質にするでしょうし、それを理由に皇帝陛下は攻め込むおつもりでしょう。もちろんわたしの身の安全は考慮されません。
近しいものはとにかく、陛下は無事を望んではくれません。問題を起こさず模範的に過ごすことを求められ……ただけならばまだ心配して下さった可能性もあるのですけれど、端々に出来るなら向こうの弱みの一つも探ってこいと匂わせる辺り、どう考えてもわたしの穏やかで安定した生活自体は二の次でしょう。
そのくせ何かをやって万一失敗したら、そんな事は命じていないと切り捨てるおつもりなのでしょう。
そしてわたしは成り行き上、見事に期待に応えて帰ってきたわけで。
関係が微妙といっても、一応こちらの国の方が強いためか、第六皇女でも概ね邪険に扱われることはありませんでした。
特に同じ学園の上級生である第一王子殿下は、内心思うことはおありでしょうのに、丁寧にもてなして下さいました。
それは王族としての責任感も多々あったでしょうが、きっと元々のお人柄もよいのだろうと充分に思えるものでした。
隣国とその王族に対して好感を持ちました。
それを私情と呼ぶのならある意味間違いではないのでしょうが。
ある日、その殿下の婚約者を名乗る方に空き教室に呼び出され……最終的には閉じ込められました。
王族関係者といえど一枚岩ではないと分かってはいましたが、いきなり閉じ込められるとまでは考えなかったのはこちらの失態ですわね。
彼女によるとわたしは殿下に一目惚れしてあの手この手で誘惑したそうで……皇族として招待を受けたのが彼女にとってはわたしが誘惑したことになるんですのね。色仕掛けをした記憶はありませんし、我が国の盛装の露出度が高いなんてこともないのですが。怪しい薬などむしろどうやったら持ち込めるのかと聞きたいくらいなものです。
他にもお姉様方にだったら逆に通じないような直接的な罵詈雑言を浴びせられ、脅しともとれる捨て台詞とともに突き飛ばされ、後ろに転ばされうっかり呆然としている隙に扉と錠を閉めらました。
そのあとご丁寧にも何か重い物を引きずるような音が聞こえてきました。そういえば不自然な箱が置いてあったような?
幸いだったのは、彼女に信頼できる協力者がいなかったのか、素早く攫って、乗り物でどこか分からなくするために移動して、郊外の小屋に閉じ込めて、火をかける……なんてことをしなかったところですわね。
さすがに学校に火はつけないでしょうしつけてもわたしが死ぬ前に鎮火させられそうですし、空き教室とはいえ何日も人が通りかかることすらないことはまずないでしょう。あいにくと鍵がないと開かない錠のようですが屋内のものですからそこまで頑丈でもないでしょうから最悪の場合壊せばいいわけですし、箱も彼女一人で動かせる程度の重さならよほど巧妙な置かれ方でもしていない限り何とかなるでしょう。
それに王族も通う場所なのですから教室内にも少人数ならば幾日かは籠城できる準備や場所も助けを呼ぶ方法も隠されております。必要に迫られた――多少場所は変えるにしろ将来のその場所に対する対策を取られる危険性より、今わたしに万一のことがあったとき何とか出来るよう安全性をとった――とはいえ、他国の皇族であるわたしが一部分とはいえ教えて頂けたのに殿下の婚約者が知らないとはなんて滑稽なのでしょう。
それとも騙りだったのでしょうか? 紹介しては頂けていませんし。
王族皇族には政略の駒として出せる女児が多い方がよいと世間では思われているようですが、子供を育てるということは予算がそれなりにかかることですし、王族皇族ともなれば使い捨てに近い駒にも品質を求めるというもの。誰彼構わず差し出さなければならないほど立場が弱いわけでもないことですし。
わたしは身分の低い側妃の娘のうえその品質が少しばかり悪くございました。
順番としても第六皇女という微妙なもので、とりあえず早く生まれたというだけで、仮に多少微妙でも価値をつけるために教育や美容に早期から力を注がれるため一定水準以上に達することになる第一第二でも、その影響が色濃く残る第三辺りでもなく、その下ともなればよほど容姿や能力に優れているとか、生母やその実家の立場が強いなどの付加価値がなければ、どこかおざなりに育てられるもの。
もう少し後に生まれればお姉様方では年齢的に合わない相手に嫁ぐなどの場合のために状況によって扱いは違うのでしょうけれど、ちょうどわたしはそこから外れています。その上お姉様方は小細工なしでも美しく聡明ですので、今更わたしが注目されることはないでしょう。
もちろん皇女としてはわたし以下に扱われているものもいます。けれどそこまでいけば母親が臣下に下賜されたのについて行きその家のお嬢様として育てられるとか、いっそ市井に降りて城ほどの生活は出来ないものの自由を手に入れられた方もいるそうです。
それでも全員が生きて幸せになれる訳ではないのだから皇帝陛下の慈悲に感謝しなさいと子供の頃は特によく言われましたわ。皇帝陛下にです、お父様にじゃありません。わたしの今の生活がだけでなく、存在そのものが皇帝陛下の慈悲の結果であり、父親に対する何かを求めるな、と。
ある意味では間違っていませんわね、気まぐれに侍女に手をつけた結果だと聞いた事があります。
なのに外には出られずに、お姉様方の輪にも入れず、傲慢かもしれませんが孤独を感じておりました。
そんなわたしにも義務はきっちり回ってきます、場合によっては死んできてもいいという捨て駒に近いものですが。
もしそうなってもきっちり利用なさるんでしょうね、本当に皇族というものは因果ですこと。
なので今現在関係が微妙な隣国の学園へ外交を理由に留学いたしました。
少しでも均衡が崩れれば、向こうはわたしを人質にするでしょうし、それを理由に皇帝陛下は攻め込むおつもりでしょう。もちろんわたしの身の安全は考慮されません。
近しいものはとにかく、陛下は無事を望んではくれません。問題を起こさず模範的に過ごすことを求められ……ただけならばまだ心配して下さった可能性もあるのですけれど、端々に出来るなら向こうの弱みの一つも探ってこいと匂わせる辺り、どう考えてもわたしの穏やかで安定した生活自体は二の次でしょう。
そのくせ何かをやって万一失敗したら、そんな事は命じていないと切り捨てるおつもりなのでしょう。
そしてわたしは成り行き上、見事に期待に応えて帰ってきたわけで。
関係が微妙といっても、一応こちらの国の方が強いためか、第六皇女でも概ね邪険に扱われることはありませんでした。
特に同じ学園の上級生である第一王子殿下は、内心思うことはおありでしょうのに、丁寧にもてなして下さいました。
それは王族としての責任感も多々あったでしょうが、きっと元々のお人柄もよいのだろうと充分に思えるものでした。
隣国とその王族に対して好感を持ちました。
それを私情と呼ぶのならある意味間違いではないのでしょうが。
ある日、その殿下の婚約者を名乗る方に空き教室に呼び出され……最終的には閉じ込められました。
王族関係者といえど一枚岩ではないと分かってはいましたが、いきなり閉じ込められるとまでは考えなかったのはこちらの失態ですわね。
彼女によるとわたしは殿下に一目惚れしてあの手この手で誘惑したそうで……皇族として招待を受けたのが彼女にとってはわたしが誘惑したことになるんですのね。色仕掛けをした記憶はありませんし、我が国の盛装の露出度が高いなんてこともないのですが。怪しい薬などむしろどうやったら持ち込めるのかと聞きたいくらいなものです。
他にもお姉様方にだったら逆に通じないような直接的な罵詈雑言を浴びせられ、脅しともとれる捨て台詞とともに突き飛ばされ、後ろに転ばされうっかり呆然としている隙に扉と錠を閉めらました。
そのあとご丁寧にも何か重い物を引きずるような音が聞こえてきました。そういえば不自然な箱が置いてあったような?
幸いだったのは、彼女に信頼できる協力者がいなかったのか、素早く攫って、乗り物でどこか分からなくするために移動して、郊外の小屋に閉じ込めて、火をかける……なんてことをしなかったところですわね。
さすがに学校に火はつけないでしょうしつけてもわたしが死ぬ前に鎮火させられそうですし、空き教室とはいえ何日も人が通りかかることすらないことはまずないでしょう。あいにくと鍵がないと開かない錠のようですが屋内のものですからそこまで頑丈でもないでしょうから最悪の場合壊せばいいわけですし、箱も彼女一人で動かせる程度の重さならよほど巧妙な置かれ方でもしていない限り何とかなるでしょう。
それに王族も通う場所なのですから教室内にも少人数ならば幾日かは籠城できる準備や場所も助けを呼ぶ方法も隠されております。必要に迫られた――多少場所は変えるにしろ将来のその場所に対する対策を取られる危険性より、今わたしに万一のことがあったとき何とか出来るよう安全性をとった――とはいえ、他国の皇族であるわたしが一部分とはいえ教えて頂けたのに殿下の婚約者が知らないとはなんて滑稽なのでしょう。
それとも騙りだったのでしょうか? 紹介しては頂けていませんし。
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