そうして怪談だけが残った

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　少しずつ人が消えていった。
　そうして代わりに増えていくスマホの中ただひとりまだ人でいる。
　スマホはまた持ち歩くようになった。
　どこからも着信はない。
　かけてもどこにも繋がらない。
　もちろん歌も歌わない。
　ずっとここに取り残されたままなのだろうか？

　ふと思い立ちこのスマホの番号をタップする。基本アドレス帳を使うので番号をタップなんてどれくらいぶりだろう。
　もちろん繋がるはずはない。
　ところが短い呼び出し音の後、どこかに繋がる。
　無音という表現すらうるさすぎた。
　口を開く。
　正しい音程は知っているはずなのに、震えているからか、ずれた音を聴きすぎたのか、それを正しくなぞれない。
　マイクを通して別人の声のような歌が聞こえる。
「ハッピバースディーディア――」
　ほんの一瞬、どう歌うべきか悩む。
　そこで意識は暗転した。