異形どものパレヰド

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メリーさん篇

ショートケーキ危機一髪

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 【もしもし、私メリーさん。今コンビニを出たの。……ねえ、なんで私がこんなことしなきゃいけないの】
「いや、電話うざかったから。つかケーキまだ?遅くね?」
【……またかけるわ】
わあ、可哀想。電話かけるのがアイデンティティなんやで許したりィ。まあ口には出さんけど。というかメリーはんも難儀やなあ、いちいち自分の場所伝えるんか。面倒くさいなァ。電話一発目で背後に出て喰うたればええのに。わてならそうするんやけどなァ。最近の子は食に困らんのやろか。
 それにしても異形にパシらせるなんてこいつ鬼やな。人でありつつ人でなしやな。おもろ。
「なァなァ人でなし」
「なんだ産業廃棄物、今すぐ便所に突っ込まれたいのか」
「正直すまんかった」
あーこわ。こんなんに使役されるなんて、わて、ツイてへんわ。アンラッキィボォイやわ。あとこんなんに電話してしもたメリーはんもツイてへんわ。アンラッキィガァルやわ。
「あ、メリーはんにパシらせたショートケーキ、わても食ってええんやろ?」
「……貸しひとつな」
「ほんま?おおきにー!ヨミ、愛してるで!」
「うっわキモ、何この老いぼれ狐…きっつ……」
「え、酷ない?なあ、酷ない?わて神様やで?なあ?」
「神だろうとなんだろうとキモいもんはキモい」
いややわ、生理?なんて言うたら右の脇腹に回し蹴りキメられてしもた。痛い。どんくらい痛いか言うたらな、せやな、階段十段くらい転げ落ちた感じやな。多分。わて転げ落ちたことないで知らんけど、まあこんくらい痛いはずや。
 お、またヨミのスマホが鳴り出したで。難儀やねェ、ほんまに。
【もしもし、私メリーさん。今あなたの家の前にいるの】
「ケーキは?まだ?蝸牛かお前」
【なっ…!いつもならあと四段階は踏むのに、私、…私こうして頑張って……ぐすっ……頑張って走った、のに…!】
「…泣くなよ。ケーキは?」
「えっ、メリーはん泣いたん?これいじめやで!いじめ駄目やでヨミ!」
【両手が塞がって扉を開けれないの……開けてよぉ…】
「琥珀、私の部屋に通しといて」
「あいよ」
血も涙も無い鬼やと思うとったけどちっとは動揺しとるみたいやな。そりゃ泣き出す異形なんて見たことなかったんやろうけど。それにしてもわてを無視するなんて酷い子ォやね、まったく。
 「いらっしゃーい。……およ、えらい可愛らしお嬢ちゃんやこと」
「ひっ!やだ、お化け!」
「失敬な。わて、一応神様やで?まあそんな話はええわ、あがりィや」
「……お、お邪魔します」
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