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7章 「森下 葵」
1月12日【記載なし】
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そして1晩は涼香と同じような牢屋で過ごした。
葵と真季の安否も聞かせて貰えなかった。
「髙野遥希さん、社長がお呼びですよ。」
そして俺はまた社長室に呼び出された。
「さあ、君の父親の記憶を聞かせてくれ。」
手首を拘束されたまま、来客用の椅子に座らされ、尋問が始まった。
「涼香を解放するのが先だ。」
「…。わかった、君の話が終わったら解放しよう。」
「信用できない。」
「立場がわかってないのか?君が話さないなら、夏目涼香に痛い目を見てもらうだけだ。」
「そんなことをすれば、俺が見た記憶は永遠に闇の中だ。涼香をここに連れてこい。せめて、それが最低条件だ。」
「ふん。いいだろう。」
しばらくして、涼香が連行されてきた。俺と同じく手を拘束されている。
「は、遥希くん…。これ…なんなの?」
「今から説明する。涼香も聞いてくれ。」
「嘘はつくなよ。こっちには、嘘を見破る能力がある。」
(はったり…とは言えないか…。)
「今から話すのは、父親の記憶だ。母から聞いた話だから真実とも限らない。」
「いいだろう。」
「俺の父親と母親が幼い頃育てられた孤児院は、現SCCの運営する孤児院だった。俺が育ったところとは別で、今のSCCも別の団体だったようだ。
俺の両親が、その孤児院で働いていた博士に聞いた話だ。
そのSCCの前身である会社は、隕石の研究をしていた。
あるとき、大気圏で燃え尽きた隕石の調査をしていた博士は、本来衝突する予測がされていた地点付近を調査していた。すると、近所の家で両親が不審死し、物心もついてない1人の娘が病院にいると言う話を聞きつけたそうだ。
博士はその娘、俺の母親に目をつけた。孤児院で預かる手続きをすませ、育てていると不思議なことがあったらしい。
記憶力が並外れていた。燃え尽きた隕石から、微弱な電波かウイルスか、何らかの影響が漏れていたのだろう。
母は、記憶を切り取り、保存する能力を得ていた。保存した記憶は、自分が設定した条件で思い出すことができる。
博士は人智を超えた能力に目を輝かせ、もう一度同じ地域をくまなく調査したが、それに類する話は聞くことができなかった。
博士は、母親の能力の研究を重ねた。母の両親の不審死は、能力への不適合によるものだと思われた。
そのため、人体実験は死の可能性が伴う。
断固として反対する博士を、SCCは自分たちが所有する島に幽閉した。
そして、残った研究員たちで実験は進められた。まず、孤児院にいる子どもへ、母親の遺伝情報を取り込ませた。
結果は成功した。能力に目覚める子どもを何人も手中に収めた。
しかし、能力にも差異があった。何より、母のような人生を変える能力は発現しなかった。オリジンと呼ばれる能力だな。
時を同じくして、博士は幽閉された島で、能力の研究を進めていた。博士の探究心は依然、能力に向いていたため、人体実験以外の面で研究を進めさせていたSCCは、全国で収集した情報を送り続けていた。
そして、他にも能力者がいること、SCCが与えた能力以外には記憶に干渉するなどの共通点があった。」
「そう、それが聞きたいんだ!館山博士は1つもその結果を残さず、お前の両親と城の下敷きになった!」
「そう、病院で俺の両親はその館山博士からこの能力について聞いた。そして、身ごもった子はまず間違いなくオリジンの能力者。SCCは喉から手が出るほど欲しい。そこで館山博士や俺の母親を脅し、殺し、俺を手元においた。博士たちが命をかけて守った情報だ。でも、俺はその情報を友だちを守るために使う。だから…約束を破ったら許さない…」
「あぁ、わかったよ。話が終われば君たちを解放しよう。」
「オリジンの能力者、その共通点は血筋だ。菅原道真の子孫、それもそれぞれの長子のみに発現したらしい。」
「…どおりで…少ないわけだ。」
「そして、能力を受け取れるのは子どもだけ。隕石の影響を受けたであろう、オリジンたちはみな、子どもの時だった。同じ現場にいた大人はみな、突然死している。」
「まだあるぞ。髙野遥希、お前の能力は結局なんなんだ。」
「俺の能力は、博士のデータにあったよ。他に同じ能力者がいたみたいだ。自分の知りたいと思ったことと、他人の記憶を照らし合わせ、糸口となる情報量に応じて糸が絡まって見えるらしい。
人の記憶に干渉し、勝手に照らし合わせてヒントを得る。」
「やはりオリジン、素晴らしい能力だ…。」
「さっきの嘘を見抜く能力の話も、疑ってお前を見たが糸は変わらなかった。本当なんだろう。」
「そうだな。そして、ここまでの話に嘘も無さそうだな。」
「当たり前だろ。さぁ、話は終わりだ。俺たちを解放してくれ。」
「…何を言っている?聞きたいことはまだある。おい、2人で元の部屋に戻しておけ。」
「了解しました。」
「おい!ふざけるな!話せることは話した!涼香は解放しろよ!」
「遥希くん…私は…」
しかし両手が縛られた状態では無力で、また牢屋のような部屋に涼香と閉じ込められた。
「ごめんね…私のせいだよね…。」
「涼香…違うよ。さっき話しただろ。やつらは、涼香でも実験してるんだ。俺の能力が欲しくて。俺が巻き込んだんだよ。」
布団は部屋に1つしかなく、凍えるため2人で背中をつけあって布団に入っている。
涼香の落ち込んだ気持ちが、背中越しに伝わってくる。
「遥希くんは、この世界に生まれてきただけだよ。私を巻き込もうとしたわけじゃない。でも、私は私の意思で、遥希くんを騙した。」
「俺のためだと思ってたんだろ?騙したのは奴らさ。涼香じゃない。」
「…やっぱり、優しいね…」
葵と真季の安否も聞かせて貰えなかった。
「髙野遥希さん、社長がお呼びですよ。」
そして俺はまた社長室に呼び出された。
「さあ、君の父親の記憶を聞かせてくれ。」
手首を拘束されたまま、来客用の椅子に座らされ、尋問が始まった。
「涼香を解放するのが先だ。」
「…。わかった、君の話が終わったら解放しよう。」
「信用できない。」
「立場がわかってないのか?君が話さないなら、夏目涼香に痛い目を見てもらうだけだ。」
「そんなことをすれば、俺が見た記憶は永遠に闇の中だ。涼香をここに連れてこい。せめて、それが最低条件だ。」
「ふん。いいだろう。」
しばらくして、涼香が連行されてきた。俺と同じく手を拘束されている。
「は、遥希くん…。これ…なんなの?」
「今から説明する。涼香も聞いてくれ。」
「嘘はつくなよ。こっちには、嘘を見破る能力がある。」
(はったり…とは言えないか…。)
「今から話すのは、父親の記憶だ。母から聞いた話だから真実とも限らない。」
「いいだろう。」
「俺の父親と母親が幼い頃育てられた孤児院は、現SCCの運営する孤児院だった。俺が育ったところとは別で、今のSCCも別の団体だったようだ。
俺の両親が、その孤児院で働いていた博士に聞いた話だ。
そのSCCの前身である会社は、隕石の研究をしていた。
あるとき、大気圏で燃え尽きた隕石の調査をしていた博士は、本来衝突する予測がされていた地点付近を調査していた。すると、近所の家で両親が不審死し、物心もついてない1人の娘が病院にいると言う話を聞きつけたそうだ。
博士はその娘、俺の母親に目をつけた。孤児院で預かる手続きをすませ、育てていると不思議なことがあったらしい。
記憶力が並外れていた。燃え尽きた隕石から、微弱な電波かウイルスか、何らかの影響が漏れていたのだろう。
母は、記憶を切り取り、保存する能力を得ていた。保存した記憶は、自分が設定した条件で思い出すことができる。
博士は人智を超えた能力に目を輝かせ、もう一度同じ地域をくまなく調査したが、それに類する話は聞くことができなかった。
博士は、母親の能力の研究を重ねた。母の両親の不審死は、能力への不適合によるものだと思われた。
そのため、人体実験は死の可能性が伴う。
断固として反対する博士を、SCCは自分たちが所有する島に幽閉した。
そして、残った研究員たちで実験は進められた。まず、孤児院にいる子どもへ、母親の遺伝情報を取り込ませた。
結果は成功した。能力に目覚める子どもを何人も手中に収めた。
しかし、能力にも差異があった。何より、母のような人生を変える能力は発現しなかった。オリジンと呼ばれる能力だな。
時を同じくして、博士は幽閉された島で、能力の研究を進めていた。博士の探究心は依然、能力に向いていたため、人体実験以外の面で研究を進めさせていたSCCは、全国で収集した情報を送り続けていた。
そして、他にも能力者がいること、SCCが与えた能力以外には記憶に干渉するなどの共通点があった。」
「そう、それが聞きたいんだ!館山博士は1つもその結果を残さず、お前の両親と城の下敷きになった!」
「そう、病院で俺の両親はその館山博士からこの能力について聞いた。そして、身ごもった子はまず間違いなくオリジンの能力者。SCCは喉から手が出るほど欲しい。そこで館山博士や俺の母親を脅し、殺し、俺を手元においた。博士たちが命をかけて守った情報だ。でも、俺はその情報を友だちを守るために使う。だから…約束を破ったら許さない…」
「あぁ、わかったよ。話が終われば君たちを解放しよう。」
「オリジンの能力者、その共通点は血筋だ。菅原道真の子孫、それもそれぞれの長子のみに発現したらしい。」
「…どおりで…少ないわけだ。」
「そして、能力を受け取れるのは子どもだけ。隕石の影響を受けたであろう、オリジンたちはみな、子どもの時だった。同じ現場にいた大人はみな、突然死している。」
「まだあるぞ。髙野遥希、お前の能力は結局なんなんだ。」
「俺の能力は、博士のデータにあったよ。他に同じ能力者がいたみたいだ。自分の知りたいと思ったことと、他人の記憶を照らし合わせ、糸口となる情報量に応じて糸が絡まって見えるらしい。
人の記憶に干渉し、勝手に照らし合わせてヒントを得る。」
「やはりオリジン、素晴らしい能力だ…。」
「さっきの嘘を見抜く能力の話も、疑ってお前を見たが糸は変わらなかった。本当なんだろう。」
「そうだな。そして、ここまでの話に嘘も無さそうだな。」
「当たり前だろ。さぁ、話は終わりだ。俺たちを解放してくれ。」
「…何を言っている?聞きたいことはまだある。おい、2人で元の部屋に戻しておけ。」
「了解しました。」
「おい!ふざけるな!話せることは話した!涼香は解放しろよ!」
「遥希くん…私は…」
しかし両手が縛られた状態では無力で、また牢屋のような部屋に涼香と閉じ込められた。
「ごめんね…私のせいだよね…。」
「涼香…違うよ。さっき話しただろ。やつらは、涼香でも実験してるんだ。俺の能力が欲しくて。俺が巻き込んだんだよ。」
布団は部屋に1つしかなく、凍えるため2人で背中をつけあって布団に入っている。
涼香の落ち込んだ気持ちが、背中越しに伝わってくる。
「遥希くんは、この世界に生まれてきただけだよ。私を巻き込もうとしたわけじゃない。でも、私は私の意思で、遥希くんを騙した。」
「俺のためだと思ってたんだろ?騙したのは奴らさ。涼香じゃない。」
「…やっぱり、優しいね…」
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