幸せの日記

Yuki

文字の大きさ
上 下
38 / 69
3章 「碓見 千穂」

12月29日【千穂&聡太】

しおりを挟む
「びっくりしたよ。千穂も俺のこと好きだったなんて。」
 昨日、千穂の告白の末、千穂と聡太は付き合い、今日のデートに至る。
「好きだったなら…もっと早く言ってよ。」
「俺も気づいてもらえるようにいろいろ駆け引きしたんだけどな…。千穂みたいな子がタイプだって、聞こえるように言ったり。」
「あれ私のことだったの?!もう少しわかりやすくアピールしてよ…。」
「千穂こそ、なんの素振りもなかったから振り向かせるのに必死だったんだぞ。恋愛に興味ないみたいな雰囲気しかないし。」
「そんな女の子いないよ。私だって、可愛く見られようと…いろいろしたんだから…。」
「確かに、今日の服装かわいいな。」
「なっ…ちょ…突然…。そ、そう?」
「あぁ、こんな可愛い子と歩けて幸せだなぁ。」
「遥希みたいなこと言ってるよ。」
 2人が向かっているのはショッピングセンター。まずは服屋に行こう、という千穂の教科書通りの提案。2人は服屋を見て周り、千穂は颯太の好みの服装を探る。
「こんなのどう?」
「かわいいけど…。千穂、短いスカート似合わないな…。」
「ちょ、なんてこと言うの?!他の探してくる。」
 そう言って千穂は試着室に戻る。聡太が試着室の外で待っていると、千穂が話しかけてくる。
「聡太、そこにいる?」
「あぁ、どうした?」
「昨日からね、ネットでデートの方法探してたんだけど。」
「まじめかよ。」
「勝負下着を着ていくことって書いてあったんだ。万が一に備えて、って。万が一って、試着室のカーテンが突然開けられるとかかなぁ。聡太、開けちゃダメだよ。」
「…。まじめか。いいから早く着替えてくれ。」
 隣の試着室のカーテンも閉まっている。十中八九聞かれた。聡太は隣が出てくる前に離れたかった。少しすると千穂の試着室のカーテンが開けられる。
「でも、勝負下着ってどんなのだろうね。」
「もう気にするなって。こんなのどうだ?」
「あ、これ可愛い。」
 聡太はさっき見つけておいた小物入れを差し出す。
「千穂はいろんな物持ち歩くからな。こういうのあると便利だろ?これを買うって決めて、これに合う服装を探すってのはどうだ?」
「さすが聡太。いいセンスしてるなぁ。」
 2人は小物入れの会計を済ませ、他の店を探す。
「聡太は、私のどんなところが好きだったの?」
「さぁ、なんだろうな。小さい頃からずっと一緒にいて、安心する存在だし、俺ともまじめに向き合ってくれそうだったから?」
「私、安心させてる?」
「あぁ、頼りになるよ。時々変なこと言うけど。」
「そんなこと言ってないでしょ。」
「いやいや。勝負下着の話もなかなか変だったぞ。何に使うかわかってるのか?」
「え?見られてもいいように…ってことでしょ?」
「そういうところが面白いんだ。」
「ちょっと、ねぇ、違うの?」
「あ、メガネ屋だ。メガネ見ていかなくていいか?」
「ちょっと、はぐらかさないで。」
 先を進む聡太を追いかける千穂。

 昼ごはんも食べ終え、午後の予定を考える千穂。
「こんなに服見るのに時間かかると思わなかったなぁ。」
「いつもどうやって決めてるんだ?」
「…ファッション誌見て、似たようになるように。」
「千穂はどうなりたくて服買う?」
「そうね…。聡太の隣歩いてて、恥ずかしくない姿になるように、かな。」
「じゃぁ午後の予定は決まりだな。」
 聡太は立ち上がる。
「え?どこいくの?」
「服買うのはやめだ。今の服に飽きてきた頃にまた買おう。必要ない服買うくらいなら、別のことに使う方がいい。」
「え、必要ないって…。」
「俺は千穂が隣にいて嬉しいよ。むしろ、俺の姿の方が恥ずかしくないか考えるくらいだ。変わらなくていいだろ。」
 口を開けて固まる千穂。思考が追いついてきた頃に、顔が真っ赤に染まる。
「え、ちょ…え、何言って…。」
「今のままで可愛いって言ってんの。」
「ちょ…!!」
「どうしようか。やっぱベタにゲーセンか。」
「え、あ、…」
 聡太は顔を真っ赤にして頭を回転させる千穂の手を掴み、引っ張っていく。
「ちょ…!手を繋ぐのは3回目のデートからだって…書いてあって…」
「まじめか。」

 ゲーセンを堪能し、プリクラもとり、幸せでいっぱいの顔をした2人は家路につく。
「帰り道も一緒だから、楽だな。」
「え、聡太、他の女の子とデートしたことあるの?」
「そういう意味じゃないよ。告白は何度もされたけどな。」
「私より可愛い子もいたでしょ。私より頭いい子とか、明るい子とか。」
「いたな。」
「なっ…。そこは嘘でも…」
「可愛さだけじゃ選べない。賢さだけでも、性格だけでも。それに、千穂はそういうの関係なく、一緒にいたい、と思うんだ。可愛さも、賢さも、性格も、どれか一つをとると人に負けるかもしれないけど。総合したら、いろんな要素を合わせたら、千穂に勝てるようなやつ居なかったんだ。」
「なんか…褒めてる?」
「褒めてるよ。可愛さのベクトルなんて人それぞれだから、俺が1番可愛いって思ったのは千穂だった。千穂より頭がよくても、将来俺にとってなんの役に立つかわからない。関係ない。性格はクソまじめで、少し内気かもしれないけど、性格の長短なんて、受け取り方次第だ。俺には長所に見えたってだけで。」
「なんか…微妙に嬉しくないのはなんでだろう…。もっと褒めてよ。」
「なんて言うかな。千穂は、自分の欠点に気づけるやつだ。だから真面目に生きていける。だから、俺がここでいくら褒めても、自分の欠点見つけて、変えようと必死になる。俺はその姿が好きなんだ。完璧じゃないって分かってるからこそ、完璧を目指して上を向ける。俺がここで千穂のことを完璧だって褒めたら、千穂は俺のことを人を見る目がない、って思うんじゃないか?」
「そんな気がする…。でも、私も女の子だよ。もうちょっと褒めてくれても…。」
「俺たちの両親は4人とも同じ日に、同じ場所で殺された。俺たち2人も一緒に生きていくって、運命かなって思う。俺たちは、親の分まで2人で一緒に生きていこう。」
「聡太って、モテる割に女の子の扱い下手だね…。誤魔化せてないよ。」
「初めての彼女なんだから、当たり前だろ。本当なら、このまま俺の部屋に連れ込みたいところだぞ。」
「え?いいじゃん。お邪魔します。」
「お前…意味わかってないな…。まじめか。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

行かれない場所

六弥太オロア
ミステリー
謎が残る系ショートショートです。あまりパッとしません。

時の呪縛

葉羽
ミステリー
山間の孤立した村にある古びた時計塔。かつてこの村は繁栄していたが、失踪事件が連続して発生したことで、村人たちは恐れを抱き、時計塔は放置されたままとなった。17歳の天才高校生・神藤葉羽は、友人に誘われてこの村を訪れることになる。そこで彼は、幼馴染の望月彩由美と共に、村の秘密に迫ることになる。 葉羽と彩由美は、失踪事件に関する不気味な噂を耳にし、時計塔に隠された真実を解明しようとする。しかし、時計塔の内部には、過去の記憶を呼び起こす仕掛けが待ち受けていた。彼らは、時間が歪み、過去の失踪者たちの幻影に直面する中で、次第に自らの心の奥底に潜む恐怖と向き合わせることになる。 果たして、彼らは村の呪いを解き明かし、失踪事件の真相に辿り着けるのか?そして、彼らの友情と恋心は試される。緊迫感あふれる謎解きと心理的恐怖が交錯する本格推理小説。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

嘘つきカウンセラーの饒舌推理

真木ハヌイ
ミステリー
身近な心の問題をテーマにした連作短編。六章構成。狡猾で奇妙なカウンセラーの男が、カウンセリングを通じて相談者たちの心の悩みの正体を解き明かしていく。ただ、それで必ずしも相談者が満足する結果になるとは限らないようで……?(カクヨムにも掲載しています)

法律なんてくそくらえ

ドルドレオン
ミステリー
小説 ミステリー

国立ユイナーダ学園高等部③〜どうやら僕は名探偵らしいですね

砂月ちゃん
ミステリー
名探偵は部屋から一歩も出ずに事件解決? 何か違うと思う…… ①の続き。 国立ユイナーダ学園高等部シリーズ③

処理中です...