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2章 「小川 真季」
洋館⑧
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部屋のドアがノックされる。
「はいはい」
遥希が立ち上がり、ドアに向かう。ドアを開けると開いた目も口も閉まらなかった。ドアに寄りかかるようにして入ってきたのは小林 綾音。懇親会の誘いに来た彼女だった。その時のハツラツとした雰囲気は微塵もなく、憔悴し、立っているのがやっとの様子だった。
「真季ちゃんと涼香ちゃんいますか?」
「あ、あぁ、…。奥に…。」
おぼつかない足取りで小林が部屋の奥に行く。
「涼香ちゃんだけか…。でも、伝えないと。」
「小林さん?!どうしたんですか」
涼香の焦った声が聞こえる。
「遥希くん!そこで待ってて!」
「え…。」
想像はついていた。男である遥希が立ち入りにくい話であることは、小林が部屋に入ってきた時から。仕方なくトイレに入る遥希。
「合田一家には気をつけて。」
小林が身震いしながら語り始めた。
「結莉子と遊んで、部屋に戻ろうとしてる時に廊下で捕まって、連れて行かれたの。そして私を使って…結莉子と河野さんまで捕まえて、やりたい放題…。監禁されてたんだけど、河野さんが逆らったの。噛みちぎろうとして…。それに腹を立てた奴らが彼女を殺しちゃって…。一回ロビーに集められた時に、自室に戻って他の住人の目が無くなってから合田の部屋に戻るように脅されてたから、服に手榴弾隠して戻って、爆破させて出てきたの。生きてるかどうかわかんないけど。部屋の外から爆音とか聞こえなかったから。だから、涼香ちゃんたちに気をつけて欲しくて。」
「…。」
涼香は言葉を失った。
「しゅ、手榴弾まで使ったなら大丈夫ですよね。」
「だと思うけど…。もう、結莉子は落ち込んじゃってるし。それより、真季ちゃんは?」
「頭がいっぱいになっちゃって…。今部屋に1人です。」
「ちょっと様子見に…。」
「うわぁぁぁぁぁああ!!!」
部屋の外から悲鳴が聞こえる。
部屋から飛び出ると出てすぐの廊下には2人がうずくまっていた。男にまたがる形で女が胴体を密着させている。
「ぐ…。ぁ」
下にいるのはサラリーマンと自己紹介していた新堂 厚。遥希の部屋の正面の住人だ。腹には刃物が刺さっているのが見える。またがっているのは向野 結莉子。今部屋にきた小林の友達。間違いなく、新堂を刺している現行犯である。その顔は涙にまみれ、一目で我を忘れているのがわかる。落ち着いた雰囲気と整った小顔が印象的だった彼女は見る影もない。綺麗な長髪は涙で顔に張り付き、着ている服は乱れている。後ろから小林と涼香が追ってくる。向野は笑っているのか泣いているのかわからない声を漏らし、こっちを向く。
「結莉子、何して…。」
変わり果てた友達の姿に、硬直する小林。小林と目を合わせた向野は、ナイフを引き抜き、向かってきた。
全ては一瞬で起こった。
何がおこったのかわからなかった。気づけば小林の腹部にはナイフが突き立てられ、崩れ落ちる頃には向野は自らの首にナイフで赤の直線を描いていた。廊下には3人分の血が広がる。遥希たちが我に返る頃には、小林と新堂は動かず、向野は事切れていた。3人とも助からないのは目に見えていた。つまり、6リットルをゆうに超える血が廊下を染める。首から噴き出た血を浴びた俺たちは、我に返っても数分、動けずに立ち尽くした。
「はいはい」
遥希が立ち上がり、ドアに向かう。ドアを開けると開いた目も口も閉まらなかった。ドアに寄りかかるようにして入ってきたのは小林 綾音。懇親会の誘いに来た彼女だった。その時のハツラツとした雰囲気は微塵もなく、憔悴し、立っているのがやっとの様子だった。
「真季ちゃんと涼香ちゃんいますか?」
「あ、あぁ、…。奥に…。」
おぼつかない足取りで小林が部屋の奥に行く。
「涼香ちゃんだけか…。でも、伝えないと。」
「小林さん?!どうしたんですか」
涼香の焦った声が聞こえる。
「遥希くん!そこで待ってて!」
「え…。」
想像はついていた。男である遥希が立ち入りにくい話であることは、小林が部屋に入ってきた時から。仕方なくトイレに入る遥希。
「合田一家には気をつけて。」
小林が身震いしながら語り始めた。
「結莉子と遊んで、部屋に戻ろうとしてる時に廊下で捕まって、連れて行かれたの。そして私を使って…結莉子と河野さんまで捕まえて、やりたい放題…。監禁されてたんだけど、河野さんが逆らったの。噛みちぎろうとして…。それに腹を立てた奴らが彼女を殺しちゃって…。一回ロビーに集められた時に、自室に戻って他の住人の目が無くなってから合田の部屋に戻るように脅されてたから、服に手榴弾隠して戻って、爆破させて出てきたの。生きてるかどうかわかんないけど。部屋の外から爆音とか聞こえなかったから。だから、涼香ちゃんたちに気をつけて欲しくて。」
「…。」
涼香は言葉を失った。
「しゅ、手榴弾まで使ったなら大丈夫ですよね。」
「だと思うけど…。もう、結莉子は落ち込んじゃってるし。それより、真季ちゃんは?」
「頭がいっぱいになっちゃって…。今部屋に1人です。」
「ちょっと様子見に…。」
「うわぁぁぁぁぁああ!!!」
部屋の外から悲鳴が聞こえる。
部屋から飛び出ると出てすぐの廊下には2人がうずくまっていた。男にまたがる形で女が胴体を密着させている。
「ぐ…。ぁ」
下にいるのはサラリーマンと自己紹介していた新堂 厚。遥希の部屋の正面の住人だ。腹には刃物が刺さっているのが見える。またがっているのは向野 結莉子。今部屋にきた小林の友達。間違いなく、新堂を刺している現行犯である。その顔は涙にまみれ、一目で我を忘れているのがわかる。落ち着いた雰囲気と整った小顔が印象的だった彼女は見る影もない。綺麗な長髪は涙で顔に張り付き、着ている服は乱れている。後ろから小林と涼香が追ってくる。向野は笑っているのか泣いているのかわからない声を漏らし、こっちを向く。
「結莉子、何して…。」
変わり果てた友達の姿に、硬直する小林。小林と目を合わせた向野は、ナイフを引き抜き、向かってきた。
全ては一瞬で起こった。
何がおこったのかわからなかった。気づけば小林の腹部にはナイフが突き立てられ、崩れ落ちる頃には向野は自らの首にナイフで赤の直線を描いていた。廊下には3人分の血が広がる。遥希たちが我に返る頃には、小林と新堂は動かず、向野は事切れていた。3人とも助からないのは目に見えていた。つまり、6リットルをゆうに超える血が廊下を染める。首から噴き出た血を浴びた俺たちは、我に返っても数分、動けずに立ち尽くした。
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