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2章 「小川 真季」
洋館⑦〜They are losing their life~
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「殺人?!何言ってんのよ。遥希も見たでしょ?!手首切って死んでるの。どう見ても自殺でしょ。」
困惑する真季と、驚いた顔を向ける涼香。
「そこなんだ。手首切って自殺する意味がわからない。」
「意味?!死んで現実に戻るためって…」
真季の言葉を遮って言葉を繋げる。
「現実に戻るためなら、なるべく苦しくない死に方を選ぶんじゃないか?ベッドには毒物が置いてあるし、黒尾に頼めば多分、安楽死の薬ぐらい用意してくれる。銃で頭を撃ち抜いたって良い。」
2人がベッドの方を振り返る。そこにはまだ、最初に用意してあった武器類が寝かされている。その中に確かに毒物らしき瓶もあった。
「ドアが半開きなのも気になるんだ。」
「誰かに早く発見してもらいたかったんじゃないの?」
「そう、ドアを開けて自殺するメリットは人に発見してもらいやすくなることだ。じゃあ、発見してもらいたい女性が裸で自殺するか?」
「え、見せびらかしたかったとか?」
「これが現実での自殺なら、露出癖があったとか、人と価値観が違ったで済ませたかもしれない。ただ、自殺の理由が現実世界に戻ることなんだ。この先の生活を見据えている人が、現実世界では知りもしない他人であるここの住人に裸を見せるのは異常性がある。そこまでの異常性を河野さんからは感じなかった。」
「でも、殺人犯がいるってことには…。」
「そう、断定はできない。でもここで詳しい検査なんてできないから犯人の特定なんてほとんど不可能なことは誰でも分かってる。何かしでかすやつがいても不思議じゃないんだ。殺人犯がいるっていう警戒をするには十分すぎる根拠じゃないか?」
「た、確かに…。用心しよ…。」
真季は自分に言い聞かせるように呟いた。
「そうなってくると、脱出の緊急性は増したね。」
「そうなんだ。そのためには洋館を歩き回る必要性も出てくるっていうのが難しいところだ。」
真季の顔は青ざめ、頭が追いついていない。
「ちょっと、1人にさせて。頭冷やしてくる。」
真季が立ち上がり、自室に戻る。涼香と、真季が部屋に入るのを見届け、部屋に戻る。
2人で脱出のための意見を出し尽くした頃、あることに気づいた。
「そういえば、男の部屋で2人きりにして悪かったな。部屋に戻るか?」
「まだいます。」
涼香なら部屋に戻るだろうと考え、遠回しにいい雰囲気になるのを避けようとしたが、失敗に終わる。
「じゃあ、なんかご飯作ってくるわ。」
「あ、私作るよ。手料理食べて。」
そう言って涼香が立ち上がり台所に向かう。ご飯のことは涼香に任せて図面と睨めっこする。
(この部屋番号の意味と電球の意味はわかった。これが何を意味しているか、だな。head…頭…頭脳……どれもしっくりこないな)
その頃、黒尾の部屋では1人の叫び声が響いていた。それは恐怖なのか、はたまた歓喜なのかは本人しか知らない。それを聞きつける人がいないのは、部屋の広さが住人によって違うように、部屋が別の空間に存在するから。つまりは、廊下の音は部屋の中まで聞こえるが、部屋の音が廊下に漏れることは絶対にない。そう、ある部屋では爆発が起きていようとも。
困惑する真季と、驚いた顔を向ける涼香。
「そこなんだ。手首切って自殺する意味がわからない。」
「意味?!死んで現実に戻るためって…」
真季の言葉を遮って言葉を繋げる。
「現実に戻るためなら、なるべく苦しくない死に方を選ぶんじゃないか?ベッドには毒物が置いてあるし、黒尾に頼めば多分、安楽死の薬ぐらい用意してくれる。銃で頭を撃ち抜いたって良い。」
2人がベッドの方を振り返る。そこにはまだ、最初に用意してあった武器類が寝かされている。その中に確かに毒物らしき瓶もあった。
「ドアが半開きなのも気になるんだ。」
「誰かに早く発見してもらいたかったんじゃないの?」
「そう、ドアを開けて自殺するメリットは人に発見してもらいやすくなることだ。じゃあ、発見してもらいたい女性が裸で自殺するか?」
「え、見せびらかしたかったとか?」
「これが現実での自殺なら、露出癖があったとか、人と価値観が違ったで済ませたかもしれない。ただ、自殺の理由が現実世界に戻ることなんだ。この先の生活を見据えている人が、現実世界では知りもしない他人であるここの住人に裸を見せるのは異常性がある。そこまでの異常性を河野さんからは感じなかった。」
「でも、殺人犯がいるってことには…。」
「そう、断定はできない。でもここで詳しい検査なんてできないから犯人の特定なんてほとんど不可能なことは誰でも分かってる。何かしでかすやつがいても不思議じゃないんだ。殺人犯がいるっていう警戒をするには十分すぎる根拠じゃないか?」
「た、確かに…。用心しよ…。」
真季は自分に言い聞かせるように呟いた。
「そうなってくると、脱出の緊急性は増したね。」
「そうなんだ。そのためには洋館を歩き回る必要性も出てくるっていうのが難しいところだ。」
真季の顔は青ざめ、頭が追いついていない。
「ちょっと、1人にさせて。頭冷やしてくる。」
真季が立ち上がり、自室に戻る。涼香と、真季が部屋に入るのを見届け、部屋に戻る。
2人で脱出のための意見を出し尽くした頃、あることに気づいた。
「そういえば、男の部屋で2人きりにして悪かったな。部屋に戻るか?」
「まだいます。」
涼香なら部屋に戻るだろうと考え、遠回しにいい雰囲気になるのを避けようとしたが、失敗に終わる。
「じゃあ、なんかご飯作ってくるわ。」
「あ、私作るよ。手料理食べて。」
そう言って涼香が立ち上がり台所に向かう。ご飯のことは涼香に任せて図面と睨めっこする。
(この部屋番号の意味と電球の意味はわかった。これが何を意味しているか、だな。head…頭…頭脳……どれもしっくりこないな)
その頃、黒尾の部屋では1人の叫び声が響いていた。それは恐怖なのか、はたまた歓喜なのかは本人しか知らない。それを聞きつける人がいないのは、部屋の広さが住人によって違うように、部屋が別の空間に存在するから。つまりは、廊下の音は部屋の中まで聞こえるが、部屋の音が廊下に漏れることは絶対にない。そう、ある部屋では爆発が起きていようとも。
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