幸せの日記

Yuki

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1章 「夏目涼香」

12月18日

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【12/18
 今日の行動が俺と涼香の運命を変える。何かもっと派手な能力ならよかったのかもしれない。この能力は役に立つのかもわからない。運命を変えるのは俺の行動だということだ。それが俺の運命だとしても。】

 目覚ましが鳴る数分前に飛び起きた。普段から目覚ましが鳴るくらいの時間に目が覚めるのだが、今日は話が違う。それに寝た気分もあまりしなかった。今は一刻も早く学校に行きたかった。義務教育9年間と高校生活では、身に覚えのない感情が湧く。一刻も早く涼香に会わなければならない。
 朝食もほぼ取らずに早足で登校した。涼香の靴箱には上靴がある。まだ学校に来ていないことがわかる。靴箱にメモを入れ、教室へと向かった。待ち合わせは7:00。屋上前の階段。朝課外の始まる15分前。真面目な涼香はこれくらいの時間には登校している予測のもと設定した時間だ。
 時間には早いが、涼香が階段を登ってくるのが見える。だれか後をつけて冷やかしてくるかと思ったが、涼香以外は誰もいなかった。今日はこっちから話を切りださなければならない。
「涼香、手紙ありがとな。嬉しかったよ。ただ、俺にとってこれまで涼香は友達だったんだ。……そこでさ、明日土曜だし、どっか出かけないか?」
「…デートってこと?」
「ま、まあ、…そうだな。デートしよう。」
「えへへ…。ど、どこいく?」
「そうだな…。とりあえずショッピング?」
「ふふっ、苦手なくせに。」
「い、いいだろ別に。涼香となら楽しいんじゃないか?」
「…そんなこと…。明日楽しみにしてるね。また連絡する。」
 そう言って涼香は授業へと向かった。噂が立たないように時間を置いて教室に向かう。
 教室では好奇の目を向けられた。優太が駆け寄ってくる。
「どうなった?デートいつ?」
「なんでデートするのは確実なんだよ。」
「え?するだろ。しないのか?男なら誰だって涼香とデートしたくなるだろ。」
(さすが俺の友達。デリカシーを知らないな。クラスの女子が聞いてる前でそのセリフが吐けるとは。)
「仮にデートするとしても教えねーし。」
「ふーん、じゃ明日俺に勉強教えてくれよ。」
「なんだそれ。教えたことないだろ。さりげに明日の予定聞くなよ。」
「引っかかってくれよ。俺と遥希の仲だろ。尾行したりしないからさ。そうだ、ダブルデートしようぜ。」
「いやいや、どっからツッコミすればいいんだ。」
「今日中に彼女作るから。」
(俺のデートを見るために付き合ってくれって誰が了解するんだよ。)
「というのは冗談で。楽しんでこいよ。ちゃんと感触と感想聞かせてくれよ。」
「…もうつっこまないからな。」
 明日のデートプランをうっすら考えながら、1日の授業をやり過ごし帰宅した。
(俺はなんて言えばいい。それが涼香にとっての幸せでは無いなんて俺の主観だ。いけない事であるなんてのは狭い価値観なんだろうか。俺なんかがやめさせるための言葉や行動を…。少なくとも返事を先伸ばして話をする時間を増やすしかなかった。)

【昨日に比べて涼香に絡まる糸が複雑になった。しかし、昨日よりも緩んだ印象だった。今日の行動で何かが変わったのは間違いない。明日は9:30からデートだ。大切な幼馴染で俺のことを好きになってくれた女の子だ。明日、心から涼香と向き合おう。】

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