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聖女爆誕編
初めてのお取り寄せ②
しおりを挟む小夜がカートに入れた物は医療用マスクに医療用手袋(SとMサイズ)、フェイスシールド、エタノール(消毒液には多数種類があるが手指や一部の医療器具にも使える為、汎用《はんよう》性が高い)、アルコール綿、体温計、生物剤検知器(ペスト判定をする為の簡易テスト)、ドキシサイクリン100mg(ペスト患者の濃厚接触者に予防として投与する錠剤)、ストレプトマイシン硫酸塩(ペストに効果のある薬剤)、生理食塩液、注射器と注射針、そして白衣。
取り敢えず、思い付く限りの物をカートに入れた為、相当な大荷物になりそうだ。
また、大まかにアプリケーションを見て分かった事がある。召喚出来るのは基本的に両の手に収まるくらいのサイズの物のみで、X線撮影装置や内視鏡などの大仰な機械類は注文は出来ないようであった。
条件の縛りについて小夜は、あまりにこの世界の文明とかけ離れた物は召喚出来ないのだろうと結論付ける。
(——って、どれも値段が書いていないけれど⋯⋯無料よね? もしも私の口座から引き落としとかだったらあの男⋯⋯タダじゃ置かないんだからッ!!)
届かないとは分かっていても、心の中であの男への恨み辛みを並べ立てる事を止められ無かった。
次から次へと此れまで口にした事も無いような罵倒の言葉が泉の如く湧き出て来る。それだけ見知らぬ世界に一人置き去りにしたあの男への鬱憤が溜まっているのかもしれない。
(もっと合理的に考えないといけないのに、私ったら駄目ね。まだまだ未熟だわ⋯⋯)
しかし、小夜が不安に思うのも無理はない。何故なら、このアプリケーションには不思議な事に何処を探しても値段の表示が無かったからだ。常日頃から家計簿と睨めっこしている小夜からすれば気が気じゃ無い。
何処までも説明不足な男への万が一の際の報復手段を頭の中で5つ程思い浮かべた小夜は、恐る恐る『注文する?』のボタンを押す。
すると、パッと画面が切り替わり『間も無く、従業員がお届けに上がります』という表示が出て来た。小夜は目を丸くする。
(間も無くって⋯⋯どうやって?)
半信半疑の小夜は首を傾げる。
「⋯⋯なァ、聖女様。さっきからコソコソ何してんだ?」
注文を終えたタイミングで訝しげな顔をしたルッツに声を掛けられた小夜は、思わず上擦った声で答えた。
「なっ、何でも無いわ!」
慌ててスマートフォンの電源を落とし、ポケットに滑り込ませる。
その瞬間、何処からともなく青白く輝く光が出現した。
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