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タカさん教 Ⅴ
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仕事が終わり、六花を誘って六本木のモデル事務所「アスト」へ出掛けた。
来年の看護師募集のポスターの打ち合わせだ。
簡単なものなので、その後で六花と一緒に食事をする予定だった。
看護師募集活動は毎年の恒例行事となり、「アスト」の石橋先輩にポスターを頼むようになっている。
「アスト」でも全国の看護学校などへ大量に配るので、いい収入になっているので石橋先輩も喜んで下さっている。
うちも関連施設や傘下の病院が増え、ナースは幾らいてもいいほどだ。
六花と食事しながら酒も飲みたかったので、タクシーで移動した。
「トラ、あれ、なんでしょう?」
六花が先にタクシーを降り、支払って出て来た俺に指差した。
「アスト」のビル前の歩道で、黒人が二人地面に正座していた。
「「タカサァーン、バンジャイ!」」
「あ、あれだ!」
「あ、そうですよね?」
「ここでもやってんのかよ」
「本当に多いんでしょうかね?」
「そうだなぁ」
気になって、近づいて行った。
3回唱え終わって、黒人が立ち上がる。
目の前に置いたスマホを拾い上げて何か操作していた。
どうやら自分たちを撮影していたようだ。
今は何でもスマホで出来る。
俺はあんまり出来ないが。
「おい、今何やってたんだ?」
黒人たちが俺を睨む。
「ナンダ、オマエ?」
「タカさんって言うんだよ」
「「!」」
黒人たちが驚く。
「ア、アナタガ、タカサン! タシカニ、シャシンノトオリ!」
「写真? でも、俺は……」
二人がまた地面にひれ伏した。
「ボクラ、チャントヤッテマス! アキサンニ、チャントヤッテルッテイッテ!」
「ホントニ、モウカンベンシテ! モウワルイコトシナイヨ!」
「なんだ? アキサン?」
亜紀ちゃんって今言ったか?
「おい、亜紀ちゃんって、ロングの黒髪の、身長は175センチで」
「ハイ! ソノトオリデス!」
「アト3カゲツ! シッカリヤリマス!」
「……」
それで大体把握出来た。
亜紀ちゃんが「悪人」を締めてやらせていたかぁ。
俺は黒人たちに「しっかりやれ」と言い、六花と「アスト」で打ち合わせをした。
洒落たイタリアンで食事をし、六花に話した。
「多分よ、亜紀ちゃんが「悪人狩り」をしたついでにやらせてんだろうよ」
「ああ、そういうことなんですね!」
「まったくなぁ。でも、事情が分かって良かったぜ」
「亜紀ちゃんをあんまり叱らないで下さい」
「なんでだよ?」
「トラのためじゃないですか。みんなにトラのことを褒めさせたいっていう」
六花が微笑んでそう言った。
「バカなこと言うなよ。迷惑千万だぜ」
「そうでしょうけど。でも私も気持ちは分かりますよ。私もトラのこと、トラの良さをみんなに知ってもらいたいです」
「おい、勘弁しろよ」
「「紅六花」でも、みんなそうですよ。自分たちや「紫苑六花公園」やいろんなアトラクションや施設を褒めてもらった時、毎回、トラのお陰なんだって話してます」
「おい、マジか! やめさせろよ!」
「そうはいきませんよ。だって本当にそうなんだから」
「おーい、たのむよー」
六花が笑っていた。
「だからね、亜紀ちゃんのことも」
「チェ! 分かったよ!」
「ウフフフフフ」
食事はまあ美味かった。
六本木であふれる程のフレンチやイタリアンの店がある中でちゃんとやっているのだ。
大体間違いは無い。
六花もニコニコして食べていた。
ワインももらって二人でゆっくりと飲み食いした。
8時になり、店を出てタクシーを拾おうとした。
「あ、向こうでなんか揉めてますよ?」
「ん?」
通りの先で10人の半グレっぽい連中が、先ほど見た二人の黒人を囲んでいた。
「てめぇら! 俺らの女をナンパしたそうだな!」
「ダカラドウシタ! アノコタチモヨロコンデタネ!」
「ふざけんな! おい、ちょっと来い!」
「イイノ? ボクラ「タカサンキョウト」ダヨ?」
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
黒人の一人が、首から提げた虎の顔のメダルを見せた。
「ホラホラ」
「お前ら、ほんとにあの「タカさん教」なのかよ!」
「アレ、ウタガウ? シラナイヨ? ジャア、ナカマヨブカラ」
「ちょ、ちょっと待て! 悪かった! もう何もしねぇ!」
「ダメダヨ。キミラモ、ニュウシンシナキャ」
「いや、ほんとに勘弁してくれ!」
「ホラ、ニュウカイヒ50マンエンダヨ」
もう一人の黒人が笑いながらスマホで全員を撮影していた。
「ニゲタラ、ドウナルカシッテルヨネ?」
「「「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」」
「ボクラ、1000ニンイジョウイルヨ?」
「シュウカイデ、キミラノカオ、サラスカラネ?」
近づいた俺と六花に気付いた。
「ア! タカサンサン!」
「コイツラ、ニュウシンサセマスカラ!」
「いらねぇ!」
俺が怒鳴って解散させた。
なんなんだ、まったく!
一江に命じて「タカさん教」について詳細に調べさせた。
早乙女にも情報を集めるように言った。
「石神! 「業」の謀略なのか!」
「いや、多分そうじゃねぇ。でも頼むぜ」
「ああ、分かった! すぐに調べる!」
当然、六花のマンションに行き、吹雪と銀生を可愛がって六花も可愛がった。
その間に、大体のことは分かった。
あいつぅ……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
11時に家に戻ると、子どもたちの他に真夜と真昼までリヴィングにいた。
全員が俺に頭を下げて謝る。
「「「「「「すいませんでしたぁ!」」」」」」
「……」
亜紀ちゃんが一歩前に出て、俺に「タカさん教」のことを話す。
まあ、一江と早乙女が調べた通りで、俺の想像通りだった。
最初は軽いノリで「タカさん、バンザイ」とヤンキーたちにやらせたのが面白く、どんどん増やして行ったのだと。
全員の個人情報を掴み、時々集会を開いて「タカさん」を崇め奉ることをやらせた。
それっぽくするために、メダルを作って「タカさん教徒」と名乗らせた。
そいつらに勧誘もやらせていたようだ。
もちろんメダルは無償で会費などもない。
本当にノリだけの活動だった。
しかし、亜紀ちゃんたちは掴んでいなかったようだが、いつの間にか「タカさん教徒」たちが横に繋がり、ワルの集団のようなものが出来て行ったのだ。
「タカさん教徒」たちは、後ろ盾に亜紀ちゃんたちのようなとんでもない戦力があることを仄めかし、敵対するチームや見掛けたワルたちから上納金をせしめる連中も出て来た。
ヤンキーたちの社会で、「タカさん教」は恐れられる集団になっていたのだ。
俺がそういうことを話すと、亜紀ちゃんは驚いていた。
「さて、お前ら。出て行く荷物はまとめてあるんだろうな?」
「「「「「「!!!!!!」」」」」」
全員が大泣きで俺に抱き着いて来た。
真夜や真昼まで泣いて謝っている。
まあ、俺も前回追い出したことをやり過ぎだったと後悔もしている。
俺たちは一蓮托生の関係なのだ。
「ウゼェ! だったらとっととヘンな宗教は解散しろ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
すぐにラインで通達し、教徒の証であるメダルと「教典」(そんなものまであったか!)の回収を急いだ。
何人かメリカレで高値で売っ払った奴らがいて、そいつらは亜紀ちゃんがヤキを入れて取り戻させた。
それでも数個、行方が分からなくなっていた。
まあいい。
その後で、亜紀ちゃんが一部のどうしようもない凶悪な連中を締めて、千万グループの金融機関に賠償金を作らせていたことを知った。
俺は強烈に湧き上がる怒りを感じたが、まあ心情はよく分かった。
亜紀ちゃんをぶっ飛ばし、真夜と真昼には拳骨をくれた。
全部の事例を詳細に聴き、やり過ぎた(全部そうだった)分は俺の指示で減額し、正式な示談の金額を少し上乗せする額で納めた。
それが今回の中で一番面倒くさかった。
千万グループの関わった連中には、今後は子どもたちの言いなりになるなと徹底させた。
真夜には、亜紀ちゃんの暴走があった場合は必ず俺に報告しろと言った。
「はい、必ず!」
「亜紀ちゃんもそれでいいな!」
「はい! 真夜、お願いします!」
「はい!」
元凶の亜紀ちゃんには、2週間石神家で鍛錬するように命じた。
すると真夜と真昼も自分たちも同行すると言った。
まあ、基礎は出来ている二人なので許可した。
2週間後、格段に三人は強くなって帰ってきた。
来年の看護師募集のポスターの打ち合わせだ。
簡単なものなので、その後で六花と一緒に食事をする予定だった。
看護師募集活動は毎年の恒例行事となり、「アスト」の石橋先輩にポスターを頼むようになっている。
「アスト」でも全国の看護学校などへ大量に配るので、いい収入になっているので石橋先輩も喜んで下さっている。
うちも関連施設や傘下の病院が増え、ナースは幾らいてもいいほどだ。
六花と食事しながら酒も飲みたかったので、タクシーで移動した。
「トラ、あれ、なんでしょう?」
六花が先にタクシーを降り、支払って出て来た俺に指差した。
「アスト」のビル前の歩道で、黒人が二人地面に正座していた。
「「タカサァーン、バンジャイ!」」
「あ、あれだ!」
「あ、そうですよね?」
「ここでもやってんのかよ」
「本当に多いんでしょうかね?」
「そうだなぁ」
気になって、近づいて行った。
3回唱え終わって、黒人が立ち上がる。
目の前に置いたスマホを拾い上げて何か操作していた。
どうやら自分たちを撮影していたようだ。
今は何でもスマホで出来る。
俺はあんまり出来ないが。
「おい、今何やってたんだ?」
黒人たちが俺を睨む。
「ナンダ、オマエ?」
「タカさんって言うんだよ」
「「!」」
黒人たちが驚く。
「ア、アナタガ、タカサン! タシカニ、シャシンノトオリ!」
「写真? でも、俺は……」
二人がまた地面にひれ伏した。
「ボクラ、チャントヤッテマス! アキサンニ、チャントヤッテルッテイッテ!」
「ホントニ、モウカンベンシテ! モウワルイコトシナイヨ!」
「なんだ? アキサン?」
亜紀ちゃんって今言ったか?
「おい、亜紀ちゃんって、ロングの黒髪の、身長は175センチで」
「ハイ! ソノトオリデス!」
「アト3カゲツ! シッカリヤリマス!」
「……」
それで大体把握出来た。
亜紀ちゃんが「悪人」を締めてやらせていたかぁ。
俺は黒人たちに「しっかりやれ」と言い、六花と「アスト」で打ち合わせをした。
洒落たイタリアンで食事をし、六花に話した。
「多分よ、亜紀ちゃんが「悪人狩り」をしたついでにやらせてんだろうよ」
「ああ、そういうことなんですね!」
「まったくなぁ。でも、事情が分かって良かったぜ」
「亜紀ちゃんをあんまり叱らないで下さい」
「なんでだよ?」
「トラのためじゃないですか。みんなにトラのことを褒めさせたいっていう」
六花が微笑んでそう言った。
「バカなこと言うなよ。迷惑千万だぜ」
「そうでしょうけど。でも私も気持ちは分かりますよ。私もトラのこと、トラの良さをみんなに知ってもらいたいです」
「おい、勘弁しろよ」
「「紅六花」でも、みんなそうですよ。自分たちや「紫苑六花公園」やいろんなアトラクションや施設を褒めてもらった時、毎回、トラのお陰なんだって話してます」
「おい、マジか! やめさせろよ!」
「そうはいきませんよ。だって本当にそうなんだから」
「おーい、たのむよー」
六花が笑っていた。
「だからね、亜紀ちゃんのことも」
「チェ! 分かったよ!」
「ウフフフフフ」
食事はまあ美味かった。
六本木であふれる程のフレンチやイタリアンの店がある中でちゃんとやっているのだ。
大体間違いは無い。
六花もニコニコして食べていた。
ワインももらって二人でゆっくりと飲み食いした。
8時になり、店を出てタクシーを拾おうとした。
「あ、向こうでなんか揉めてますよ?」
「ん?」
通りの先で10人の半グレっぽい連中が、先ほど見た二人の黒人を囲んでいた。
「てめぇら! 俺らの女をナンパしたそうだな!」
「ダカラドウシタ! アノコタチモヨロコンデタネ!」
「ふざけんな! おい、ちょっと来い!」
「イイノ? ボクラ「タカサンキョウト」ダヨ?」
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
黒人の一人が、首から提げた虎の顔のメダルを見せた。
「ホラホラ」
「お前ら、ほんとにあの「タカさん教」なのかよ!」
「アレ、ウタガウ? シラナイヨ? ジャア、ナカマヨブカラ」
「ちょ、ちょっと待て! 悪かった! もう何もしねぇ!」
「ダメダヨ。キミラモ、ニュウシンシナキャ」
「いや、ほんとに勘弁してくれ!」
「ホラ、ニュウカイヒ50マンエンダヨ」
もう一人の黒人が笑いながらスマホで全員を撮影していた。
「ニゲタラ、ドウナルカシッテルヨネ?」
「「「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」」
「ボクラ、1000ニンイジョウイルヨ?」
「シュウカイデ、キミラノカオ、サラスカラネ?」
近づいた俺と六花に気付いた。
「ア! タカサンサン!」
「コイツラ、ニュウシンサセマスカラ!」
「いらねぇ!」
俺が怒鳴って解散させた。
なんなんだ、まったく!
一江に命じて「タカさん教」について詳細に調べさせた。
早乙女にも情報を集めるように言った。
「石神! 「業」の謀略なのか!」
「いや、多分そうじゃねぇ。でも頼むぜ」
「ああ、分かった! すぐに調べる!」
当然、六花のマンションに行き、吹雪と銀生を可愛がって六花も可愛がった。
その間に、大体のことは分かった。
あいつぅ……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
11時に家に戻ると、子どもたちの他に真夜と真昼までリヴィングにいた。
全員が俺に頭を下げて謝る。
「「「「「「すいませんでしたぁ!」」」」」」
「……」
亜紀ちゃんが一歩前に出て、俺に「タカさん教」のことを話す。
まあ、一江と早乙女が調べた通りで、俺の想像通りだった。
最初は軽いノリで「タカさん、バンザイ」とヤンキーたちにやらせたのが面白く、どんどん増やして行ったのだと。
全員の個人情報を掴み、時々集会を開いて「タカさん」を崇め奉ることをやらせた。
それっぽくするために、メダルを作って「タカさん教徒」と名乗らせた。
そいつらに勧誘もやらせていたようだ。
もちろんメダルは無償で会費などもない。
本当にノリだけの活動だった。
しかし、亜紀ちゃんたちは掴んでいなかったようだが、いつの間にか「タカさん教徒」たちが横に繋がり、ワルの集団のようなものが出来て行ったのだ。
「タカさん教徒」たちは、後ろ盾に亜紀ちゃんたちのようなとんでもない戦力があることを仄めかし、敵対するチームや見掛けたワルたちから上納金をせしめる連中も出て来た。
ヤンキーたちの社会で、「タカさん教」は恐れられる集団になっていたのだ。
俺がそういうことを話すと、亜紀ちゃんは驚いていた。
「さて、お前ら。出て行く荷物はまとめてあるんだろうな?」
「「「「「「!!!!!!」」」」」」
全員が大泣きで俺に抱き着いて来た。
真夜や真昼まで泣いて謝っている。
まあ、俺も前回追い出したことをやり過ぎだったと後悔もしている。
俺たちは一蓮托生の関係なのだ。
「ウゼェ! だったらとっととヘンな宗教は解散しろ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
すぐにラインで通達し、教徒の証であるメダルと「教典」(そんなものまであったか!)の回収を急いだ。
何人かメリカレで高値で売っ払った奴らがいて、そいつらは亜紀ちゃんがヤキを入れて取り戻させた。
それでも数個、行方が分からなくなっていた。
まあいい。
その後で、亜紀ちゃんが一部のどうしようもない凶悪な連中を締めて、千万グループの金融機関に賠償金を作らせていたことを知った。
俺は強烈に湧き上がる怒りを感じたが、まあ心情はよく分かった。
亜紀ちゃんをぶっ飛ばし、真夜と真昼には拳骨をくれた。
全部の事例を詳細に聴き、やり過ぎた(全部そうだった)分は俺の指示で減額し、正式な示談の金額を少し上乗せする額で納めた。
それが今回の中で一番面倒くさかった。
千万グループの関わった連中には、今後は子どもたちの言いなりになるなと徹底させた。
真夜には、亜紀ちゃんの暴走があった場合は必ず俺に報告しろと言った。
「はい、必ず!」
「亜紀ちゃんもそれでいいな!」
「はい! 真夜、お願いします!」
「はい!」
元凶の亜紀ちゃんには、2週間石神家で鍛錬するように命じた。
すると真夜と真昼も自分たちも同行すると言った。
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