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「般若」でお祝いパーティ

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 俺たちが別荘から戻り、六花も故郷から帰って来ることになった。
 車両ではなく、念のために「タイガーファング」を手配した。
 栞が入院中に襲撃されたこともあり、六花たちの万一の安全を図ったのだ。
 「タイガーファング」は俺の家の近くの「花見の家」に着陸し、俺と亜紀ちゃんで迎えに行くと六花たちが機体の後ろから出て来るところだった。
 念のために護衛のデュールゲリエたちも展開している。
 六花が俺と亜紀ちゃんを見つけて笑顔で手を振った。 

 「とらぁー!」
 「おう、お帰り!」

 六花が銀世を左手に抱きながら俺に抱き着き、吹雪も俺の腰に抱き着いた。
 俺は六花と銀世にキスをし、吹雪を抱き上げた。
 
 「吹雪、向こうは楽しかったか?」
 「はい! みんな親切にしてくれた!」

 吹雪はニコニコして俺を見ている。
 弟が生まれたことで親の愛情が弟に注がれることを不安に思う子どももいるが、吹雪の場合は何の心配も無い。
 何しろ、六花の愛情がたっぷり注がれているからだ。
 もちろんこれから先、幾らでも自分と弟の扱いが違うことを感ずるだろうが、俺はまったく心配していない。
 六花も俺も、同じ俺の子どもたちだからだ。
 みんなで俺の家に向かった。

 玄関でロボが大興奮で出迎えた。
 大好きな六花が来たからだ。
 靴を脱ごうと屈む六花に身体を伸ばして抱き着き、吹雪に抱き着き、俺が抱えていた銀世をよくみせろと飛び跳ねる。
 俺がしゃがんで銀世を見せると、ロボは嬉しそうにペロペロした。
 ロボの挨拶が終わり、みんなで上に上がり、リヴィングへ入った。

 「六花ぁー!」
 「栞さーん!」

 栞も退院して家に戻っている。
 栞が千歌を抱き上げて六花に近づいた。

 「千歌ちゃんですね!」
 「うん、銀世ちゃんね!」

 二人で嬉しそうに子どもを見せ合う。
 士王と吹雪も来て、新たな兄弟を見た。

 「士王、銀世だ」
 「うん!」
 「吹雪、千歌だぞ」
 「はい!」

 二人とも手を伸ばし、優しく兄弟を撫でる。
 士王と吹雪が顔を見合わせて笑っていた。
 互いのちょっと恥ずかしく、そして愛らしく思う微妙な心が通じたのだろう。
 ルーとハーがアイスティを淹れ、しばらく話した。
 六花は栞が襲われた時の話を聞きたがり、栞は石神家や《エアリアル》の突然の訪問に爆笑した。

 「ねえ、あなた。石神家の人たちって、どうして毎回六花のところだけは行くの?」
 「分かんねぇよ。まあ、一番近いからじゃねぇの?」
 「そんな感じ?」
 「うん」

 六花が笑っていた。

 「やっぱり花岡家とか道間家ってちょっと行きにくいんじゃないですか?」
 「いや、あの人らに限ってはそれはねぇよ」
 「じゃあ、なんででしょう?」
 「まあ、六花が綺麗だからじゃねぇの?」
 「そんなの! 栞さんや麗星さんの方がずっと美人ですよ!」

 「おい、こいつまだこんなこと言ってるぞ」
 「ほんとね」
 
 栞と笑った。
 まあ、冗談のように言ったのだが、実際に六花の美しさに感動して虎白さんたちが来ているんじゃないかと思う。
 栞も麗星も美しいのだが、六花はちょっと次元が違う。
 石神家にこんなに綺麗な女の血が入ったことが嬉しいのだろう。
 それに六花の言う通り、遠慮なく来られるということも大きいだろう。
 花岡家も道間家も、遠慮なしの石神家といえども、やはり家柄があるので多少行きにくい。
 六花の所なら、本当に何の遠慮も無く乗り込めるのだ。
 もちろん、他の子どもたちも大事に思っていてくれている。
 まあ、道間家は虎白さんが行ってくれていたので、十分に夜羽の顔は見ている。
 天狼と奈々が虎白さんに可愛がられ、二人とも懐いている。
 蓮花研究所では士王を可愛がってくれ、士王に剣技まで指導してくれた。

 3時なのでみんなでお茶にする。
 今日は六花の好きなキハチのフルーツロールを買ってあった。
 六花が嬉しそうに頬張った。

 「六花、後で響子の所へ行こう」
 「はい!」

 栞と桜花たちは響子や茜たちと随分と親しくなったことを話した。
 入院中はしょっちゅう響子の部屋へも行き、茜たちと一緒に楽しくやっていた。
 六花がいない間も、だから響子もあまり寂しがらずに済んだ。






 「リッカァー!」
 「響子! 久し振りです!」

 二人が抱き合って喜んだ。
 やはり、響子と六花は絆が違う。
 吹雪も挨拶し、六花が銀世を響子に見せた。

 「カワイイー!」
 「そうでしょう?」

 銀世は響子の顔を美しい瞳で見つめていた。

 「響子だよ! 銀世ちゃん!」

 銀世が口を開いた。
 反応している。

 「またオッパイの時間は任せてね!」
 「はい、お願いします」

 六花が笑っていた。
 今日は土曜日だったが、一江と大森が来ていた。
 六花に会いたかったからだ。
 茜と葵が離れて見ていたので、俺が呼んで銀世を抱かせた。

 「え、わたし、赤ちゃんなんて抱いたことありませんよ!」
 「お前の初めてを俺に寄越せ!」
 「なんですかぁー!」

 それでもおずおずと銀世を抱き上げた。

 「かわいい……」
 「そうだろう?」
 「赤ちゃんって、重いんですね」
 「ああ」

 もちろん体重のことではない。
 命の重さを茜は感じているのだ。
 葵にも抱かせた。
 葵は流石に緊張も無い。

 「重いです」
 「そっか」

 みんなでしばらく話し、家に帰ることにした。

 「来週末は「般若」でパーティを開くからな」
 「うん、楽しみ!」

 六花は来週いっぱい休みにしているが、多分ちょくちょくここに来るのだろう。
 まあ構わないが。
 六花が本当に嬉しそうに笑っていた。
 こいつはやはり、ここがいいのだろう。





 翌週の土曜日の2時半。
 「タイガーファング」で京都から麗星が来た。
 天狼、奈々、夜羽、そして五平所も一緒だ。
 それに皇紀と風花と子どもたちもいる。
 
 「あなたさまぁー!」
 「おう、わざわざ済まないな」
 「いいえ! あなたさまにお会い出来るのであれば、どこにでも参ります!」

 天狼たちも嬉しそうに俺に寄って来る。
 みんなに挨拶する。
 双子が皇紀に抱き着き、頬にキスをしていた。
 
 「天狼、また逞しくなったな」
 「はい、父上!」
 「奈々はまた可愛くなった」
 「はい!」

 夜羽を抱き上げると、明るく笑った。

 「あなたさまが大好きなのです」
 「そうか、俺もだよ」

 俺は夜羽を抱いたまま歩いた。

 「五平所も大きくなったな!」
 「ワハハハハハハハ!」

 玄関でロボの大歓迎があり、みんなでリヴィングへ上がる。
 栞たちと挨拶し、部屋へ案内して少し休ませた。
 3時にお茶にする。
 今日は源吉兆庵の和菓子だ。
 「陸乃宝珠(オーロラブラック、マスカット)」、「桃泉果(桃)」、「梨宝果(ラフランス)」などだ。

 「あなたは本当にいろいろ美味しいものを知ってるのよね」

 栞が感動して言う。
 麗星も嬉しそうに食べ、子どもたちも喜んでいた。
 俺はコーヒーだが、みんな好きな飲み物で味わった。
 話すことが幾らでもあり、楽しかった。
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