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《エアリアル》訪問 Ⅲ

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 周囲で見ていた男性が近寄って来て、英語で「なんてカワイイの」って女性が言ってたのだと教えてくれた。
 今聞いてももう仕方がない。
 カリンがぶっ飛ばした男性と、金髪の女性を起こして謝っていた。
 救急車が呼ばれ、警察も来た。
 警察の方は「「虎」の軍法」によってすぐに解放されたが、病院で処置と検査を受けてもらい、異常が無いことを確認の上で5人の外国人はタケさんの店に連れて行った。
 よしこさんがでかいリムジンで迎えに来て下さった。
 金髪の女性は《エアリアル》さんという、「虎」の軍でも最高度の重要人物なのだと聞かされみんなで青くなった。
 単に仲間をぶっ飛ばしただけではないのだ!

 「キッチ」

 タケさんの店に着いて、私が呼ばれた。

 「すいません、よしこさん!」
 「いいよ。吹雪を護ろうとしたんだろ? 失敗はしたが、あれでいい」
 「でも、大変な重要人物のお方を……」
 「いいって。あとは俺らが謝罪する」
 「……」

 総長が降りて来られた。
 外人さんたちは、わけも分からずテーブルに座っている。
 総長が5人の前に行き、深々と頭を下げた。

 「申し訳ない。私の仲間がとんでもないことを」

 英語だった! 
 総長は流暢な英語を話している。
 5人は、総長の余りの美しさに口を開けて見ていた。

 「あなたは?」
 「「紅六花」の総長。一色六花と申します」
 「《クリムゾン・リッカ》!」
 「御存知で?」
 「はい! 私たちはジャングルマスターに呼ばれた技術者なんです。先週日本へ来たばかりで。では、あなたがタイガーレディ・リッカなんですね!」
 「はい」
 「道理で! この世のものとは思えないほどの美しい人と思いました! 噂で聞いた時にはよく分からなかったのですが、本当だったんですね!」
 「ありがとうございます。公園であなたが近付こうとしたのが、息子の吹雪です」
 「ああ、なるほど! だからあの子もあんなに美しかったんですか!」

 女性はパトリシア・テイラーと名乗った。
 「虎」の軍でのコードネームは《エアリアル》だとも。
 他の4人の男たちも名前を教えてくれた。

 「私らは一応「タイガー・ホール」では上級ソルジャーなんですけどね。《エアリアル》の護衛を任されていまして」
 「そうですか。本当に申し訳ないことを」
 「いいえ、「紅六花」の方々の実力を目の当たりにして、まだまだ自分たちが至らないことを悟りました」
 「私も含めてバカ揃いでして。息子を護るために、頭に血が昇ってしまったようです」
 「とんでもない! 当然の行動です!」
 「そう言っていただけると」

 総長があらためて説明してくれたが、《御虎》シティの技術者として日本にジャングルマスターさんやパピヨンさんに呼ばれたらしい。
 仕事の前に「虎」の軍に関わる場所へ観光を兼ねて旅行して回っていたのだと。
 そして、真っ先に「紅六花」の本拠地に来たかったのだと言ってくれていた。
 特にパトリシア・テイラーは軍事施設の専門らしく、石神さんとも知り合いでいろいろと日本の情報も持っていたということだった。
 彼女はこの街のことも知っており、特に総長と紫苑さんとの友情に感動していた。
 だからあの「紫苑六花公園」にも来ていたのだ。

 「パティと呼んで下さい。リッカとお呼びしても?」
 「はい、構いません。パティ、本当に申し訳ないことを」
 「いいえ、フブキに配慮なく近づこうとしたのです。ガードの人たちが護るのは当然です」
 「申し訳ありませんでした」

 総長が頭を下げ、私たち全員も頭を下げて謝罪した。
 カリンは土下座していたが、《エアリアル》さんが笑って近づいて立たせてくれた。

 「大した怪我もありませんし。もう結構ですよ」
 「そうは行きません、かの《エアリアル》にこれほどの失礼を働いたのです。それなりに謝罪させて下さい」
 「まあ、御存知だったのですね、リッカ」
 「はい。トラに協力してくれる四人の方々のことは。ジャングルマスター、パピヨン、スナーク、そしてエアリアル。お会い出来て光栄です」
 「私こそ! 仲良くしましょう、リッカ!」
 「はい、パティ」

 何を話しているのかは分からなかったが、よしこさんがたどたどしく通訳してくれた。
 よしこさんも英語を勉強していた。
 他にも幹部の方々も英語を習っている。
 今後、アラスカのソルジャーたちとの連携もあるだろうという考えだった。
 総長がタケさんに命じて食事の用意をさせた。
 上のフレンチにお誘いしたが、《エアリアル》さんはここの中華を召し上がりたいと言った。

 「「ジャクニクキョウショク」にはタイガーにちなんだ銘品があると!」
 「アハハハハハハハ! よく御存知で。タケ! トラチャーハンと美味い物をどんどん持って来い!」
 「はい!」

 総長が一度上に上がられ、吹雪と生まれたばかりの銀世を抱いて来た。

 「フブキ! それでそちらのベイビーは?」
 「二人目の子です。銀世と名付けました」
 「ギンセイ! キュート!」

 《エアリアル》さんは吹雪を抱き締め、そして銀世を抱き上げた。
 総長は《エアリアル》さんを信用し、その手に預けていた。

 「なんてカワイイ!」
 「はい」

 総長も嬉しそうに笑っている。
 私は最初は警戒して見ていたが、よしこさんが既に《クリムゾン》によって何重にも身元は確認していると教えてくれた。
 《エアリアル》さんは「虎」の軍の最重要人物の一人なのだということも全員に伝えられた。

 「そんなお方をあたしたちは!」
 「もういい。《エアリアル》も許してくれている」

 どんどん料理が運ばれ、《エアリアル》さんたちが食べ始めた。
 トラチャーハンを一口食べると、叫んでいた。

 「これは美味しい!」
 「そうですか、幾らでも作りますから」

 《エアリアル》さんが立っている私たちにも一緒に食事をしようと言ってくれた。
 総長がテーブルに座るように言った。
 カリンが改めて謝罪し、《エアリアル》さんたちが笑って許してくれた。
 いい方々のようだ。

 「パティたちはこの後の予定は?」
 「「リッカランド」を見てからレンカ・ラボラトリーに顔を出そうかと」
 「そうですか。でも「リッカランド」は見て回るだけでも半日はかかりますよ。それに「紅バギー」も楽しいですし」
 「ああ、そうですよね!」
 「宜しければ、今日はここに滞在なさっては? 「紅六花」が案内しますし、ホテルもご用意いたしますよ?」
 「本当ですか!」
 「はい、御予定に問題無ければ是非」
 「お願いします!」

 《エアリアル》さんが大喜びだった。
 予定は決まったものではなく、しばらく好きに回るつもりだったのだと。
 
 「よしこ! 「紅リゾート」のスイートを取ってくれ」
 「かしこまりました!」
 「夜は「虎酔花」を予約しろ」
 「はい!」

 総長に言われて、食事の後で私とカリン、それとミカさんで《エアリアル》さんを「リッカランド」と「紅バギー」に案内した。
 護衛の方々はこの街の防衛施設を見学したいと言ったので別な人間が案内する。

 「あなた方がいれば、《エアリアル》のガードは必要ないでしょう」
 「いいんですか?」
 「はい、それに出来ればどなたかに手合わせをお願いしたい」
 「真面目ですねぇ」
 「アハハハハハハハ!」

 念のために「ファブニール」で移動し、あたしとカリンが「レッドオーガ」で護衛に着いた。
 通訳のためにデュールゲリエも一体同行する。
 《エアリアル》さんが大喜びで、全てのアトラクションを体験し、バギーで大興奮だった。
 後から年齢が60歳に近いと聞いて驚いた。
 
 「とても! 40代にもなっていないかと思ってました!」
 「タイガーが「Ω」と「オロチ」をくれたからね。私には特別に合ってたみたいなの」
 「そうなんですか!」
 「ウフフフフフ」

 不思議なお方だった。
 明るく何でも楽しもうとする愉快な方だった。
 私たちはすぐに打ち解けて仲良くなれた。

 「「リッカランド」のヴァーチャルリアリティは、元々は「レンカ・ラボラトリー」の技術なんでしょう?」
 「はい、よく御存知で」
 「タイガーの発想は素晴らしいわ。いつも感心してるの」
 「そうなんですか! 虎の旦那は最高ですよね! 東大卒ですし!」
 「トウダイ? ああ、日本の最高の大学ね」
 「はい! だからあのお方は眠ってても考えてるんですって!」
 「え?」

 私が先ほど召し上がってくれた「トラチャーハン」は、石神さんが寝ながら考えたのだと話した。
 《エアリアル》さんが爆笑した。

 「タイガーは本当に最高ね!」
 「ね!」
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