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みんなで真夏の別荘! Ⅳ

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 「ソウザ軍曹から、俺宛に手紙が届いたんだ。通信の受付の係の人間が開封し、手紙を読んで俺に直接伝えて来た。多忙な俺であっても、この手紙は是非読んで欲しいと言ってな」

 俺は様々な文書の他に、膨大な手紙が届いている。
 もちろん俺の名など知る人間はおらず、「「虎」の軍最高司令官」宛になる。
 多くは俺を応援するという内容であり、人類を護ろうとする俺たちへの感謝であり、本当に世界中から届く。
 手紙は全て保管され、またデータ化され、俺がすぐに読めるように量子コンピューターが日本語への翻訳まで行なっている。
 どこにどういう情報がもたらされているのかも分からないので、そのような処置を施している。
 その上で量子コンピューターが手紙の分別も行ない、作戦司令本部に上がるものもあるし、俺が読むべきものまで餞別している。
 応援や感謝は「俺が読むべきもの」には含まれない。
 余りにも膨大な数があるからだ。
 その中で、ソウザ軍曹の手紙が受付係の目に留まった。
 彼はこれこそが俺たちの根幹であることが分かっていた。
 だから直接俺に連絡を寄越した。
 異例のことだった。

 亜紀ちゃんが言った。

 「あのサッカーの試合、柳さんと行って、大歓迎されましたね!」
 「そうだね! 物凄く盛り上がってたよね!」
 「はい!」

 亜紀ちゃんと柳も、あの試合の中でこういうことが起きていたのは知らなかっただろう。
 
 「タカさんは、そういうことが起きると思ってサッカーの試合を組んだんですね」
 「まあそうなんだが、俺は敵味方の感情を試合でぶつけ合って少しでも解消したいと思っただけなんだけどな」
 「でも、プロフィールを配ったり、懇親会で名札を付けさせたりって、タカさんの指示ですよね?」
 「まあな。文句はお互い幾らでもあるだろうからな。喧嘩したいならやらせようってな」
 「ウソですね!」
 「フフフ」

 俺が狙っていたことはあったが、それはお互いの問題だ。
 ソウザ軍曹とペレイラ少尉が素晴らしい人間だったから、友情を培っただけだ。
 そしてその二人が互いに親しくなったのを切っ掛けに、他の人間たちもお互いの確執を解消したのだ。
 別に本当に喧嘩していがみ合っても良かったのだ。
 何も無かったことにしているよりも、鬱憤を晴らして殴り合った方がいい。

 「タカトラ、今日もいい話だった!」
 
 響子がニコニコして言った。

 「そっか!」





 響子、怜花と久留守を先に寝かせ、大人たちでしばらく飲んだ。

 「石神、世界は変わって来ているんだな」
 「そうだ、御堂。いよいよだぞ」
 「うん、分かっている」

 御堂が沈んだ表情で言った。

 「石神、日本も変わるのか?」
 「日本はそれほどのことは無いだろう」
 「そうなのか?」
 「ああ、御堂がいるからな!」
 「おい、石神!」

 みんなが笑った。

 「まあ、冗談じゃなく、日本は俺たちがいるし、お前たちが懸命にやってくれているからな。こんな国は無いよ。御堂がいるというのも決してジョークではなく、多くの国では利権を巡って敵対しているんだ。でも日本では御堂が見事に統制しているからな。つまらん利権を私欲に使おうとしても許されない国になってきている」
 「いや、石神、僕はそんな……」
 「澪さん、御堂はもっと金持ちになれるんですけどね。さっぱりでしょ?」
 「いいえ、とんでもない金額が入って来ている気が」
 「何言ってんですか! うちを見て下さいよ! おい、ルー! うちの資産は幾らになった!」
 「えー、京は超えてるけど、もう見てないよー」
 「お金は大事にしろ!」
 「もう!」
 
 みんなが笑った。
 もちろん俺が怒ったのは冗談で、ルーもハーもしっかりお金の管理はしている。
 ただ、常に流動する総資産を把握することが出来なくなっているためだ。

 「まあ、資産は常に動かしているからな。一般の人間のように貯金してとかじゃねぇもんな」
 「響子ちゃんも凄いよね!」
 「先物は大体響子ちゃんに任せてるよ!」
 「あいつ、大体遊んでるだけなのにな!」

 みんなで大笑いする。
 俺たちは世界最大の戦力を持ち、世界最大の金持だ。
 
 「いい機会だ。ここにいるみんなには話しておくか。来年の御堂のことだ」

 御堂が俺に確認する。

 「石神、いいのか?」
 「いいだろうよ、このメンバーだ。いいか、来年は御堂が日本で最初の大統領になる」
 「「「「「「エッェェェェェェェーーーーーー!!!」」」」」」

 御堂と澪さん以外が驚く。

 「もっと御堂に権力を持たせるためだ。アメリカの大統領以上の権力を持つことになる。もう大体の手回しは終わっている。国民投票になるだろうが、まあ、御堂なら確実だろう」
 「お父さん! ほんとうに大統領になるの!」
 「うん、石神が容赦なくてね」
 「ワハハハハハハハ!」
 「お母さんは知ってた?」
 「うん、前に石神さんからね。びっくりしたけど、まだ実感も無いの」
 「澪さんの立場は変わらないですよ。政界でも社交界でも、澪さんの人気は凄いですし」
 「まあ、そんなことは!」
 
 俺は幾つかの大使夫人会や自由党のパーティなどでの評判を話し、澪さんが恥ずかしがった。

 「早乙女も表に出てもらうぞ」
 「え! 俺がか!」
 「そうだ。「アドヴェロス」は今後、国内で一層攻性の活動をすることになる。そのために、長官のお前が前面に出て国民に浸透させる必要がある」

 早乙女は日本を護る組織の頂点に立っている。
 「虎」の軍との連携も密接なので、今後は秘匿した組織ではなく、堂々と表に出る必要がある。

 「そうなのか! 雪野さん、どうしようか!」
 
 雪野さんが笑っていた。

 「お手伝いしますよ」
 「まあ、雪野さんも一緒の方がいいかもなぁー」
 「え、私はダメです!」
 「雪野さん、一緒に頑張ろう!」
 「あなた!」

 亜紀ちゃんがドラマを作ろうと言った。

 「そうだなぁ。『ザ・オトメン・デカ」とか作るかぁ」
 「「「ギャハハハハハハ!」」」

 亜紀ちゃんと双子が爆笑し、御堂たちも笑っていた。

 「ああ、『ザ・オトメン・ポエム』時々見てますよ」
 「ほんとですか! ありがとうございます!」
 「あれ、酒のつまみに丁度いいんだよなぁ」
 「え?」
 「うちは毎週観てるぞ?」
 「そうか、ありがとう!」

 俺たちは笑った。
 その夜はそこで解散にした。
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