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パムッカレ 緊急防衛戦 XⅤ

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 「葵! 聞いた?」
 「はい! パムッカレに保奈美さんが!」
 「急ごう!」
 「はい! アラスカへは私が連絡します。茜、良かったですね!」
 「うん!」

 コスタリカの戦場にいた私と葵は、アラスカから保奈美さんが見つかったと連絡を受けた。
 保奈美さんを捜索している私たちだからこそ、その情報を流してくれた。
 でも現在、パムッカレは大変な攻撃を受けているらしい。
 物凄い数の妖魔たちが侵攻している。
 基地が完成したばかりで、そこを狙われたのか。
 とにかく、すぐに向かうしかない!
 
 しかし、葵と「飛行:鷹閃花」で向かったが、途中で葵が私を止めた。
 高速飛行中は、主に葵が通信を受信することになっている。

 「茜、止まって下さい! アラスカから緊急の停止命令です!」
 「どうしたの!」
 「パムッカレに《刃》が出たらしいです」
 「《刃》ってなに?」

 初めて聞いた。
 葵が説明する。
 葵も知らなかった情報だけど、今《刃》についてのデータを受け取ったようだ。
 葵がすぐに、膨大なデータを私に分かりやすく話してくれた。

 「先日、西安で聖さんが殺されそうになった強い敵だそうです」
 「え、あの聖さんが!」

 全然知らない話だった。
 聖さんの強さはよく知ってる。
 トラさんと同じくらい強いお人だ。
 こんな自分でも、聖さんの圧倒的な戦闘力は感じていた。
 まさか、あの聖さんが!

 「はい。「虎」の軍の中でも機密事項の敵でした。石神様と並んで「虎」の軍の最大戦力の聖さんがやられたものですから」
 「そんな! でも、今そいつが保奈美さんの近くにいるんだよね!」
 「そうです。だからアラスカから正式な命令です。私たちは近づくなと」
 「何言ってんの!」

 行かないわけがない。
 だって、やっと保奈美さんが見つかったんだから! 
 葵が私を見て微笑んだ。

 「そりゃそうですよね!」
 「そうだよ!」

 命令は分かる。
 私たちが行っても何も出来ないからだ。
 でも、そんなことじゃない。
 そういうことじゃないんだ!
 葵はデュールゲリエだけど、私の相棒だ。
 だから命令も一緒に反してくれる。

 葵と一緒にまた移動した。

 保奈美さん、必ず助けますから!

 「茜、あなたは私が必ず護ります!」
 「うん、葵のことも私が護るよ!」
 「必ず保奈美さんを救出しましょう!」
 「うん!」





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 15分で西安に着いた。
 まずは上空からスクリーンで状況を見た。
 初めて来た土地だが、破壊され尽くした荒野なことが分かった。
 地球上で、こんなに荒れ果てた土地は無い。
 高虎が攻撃衛星でやったと聞いている。
 数億度の超高温で広大な土地を一瞬にして灼熱地獄に変えたのだと。
 恐らく、凄まじい高熱のせいだろうが、あちこちで陥没し隆起している。
 組成によって高熱の伝達が違い、様々な様相を呈しているのだ。
 それほどの攻撃でも、《刃》は斃せなかった。
 そればかりか《刃》は《ハイヴ》までも護っていた。
 それは、ある程度の広範囲に「界離」を使えるようになっているということだ。
 虎葉の技は盗まれたばかりでなく、それを発展させられている。
 やはり侮れない敵だ。

 俺の隣で虎蘭が獰猛な顔になっている。
 こいつは不味い。
 敵を斃すことではなく、自分を突っ込ませることしか考えてねぇ。
 死にまっしぐらの顔だ。

 「おい、虎蘭」
 「……」

 虎蘭は振り向きもしない。
 一心不乱にスクリーンに映る荒野を見詰めている。

 「お前、《刃》を斃したらよ」
 「……」
 「高虎の子を産め」
 「!」

 やっと虎蘭が俺を見た。
 目を真ん丸にして驚いていやがる。

 「あんだよ?」
 「虎白さん、何言ってんですか!」
 「あ? なんだ、いい話だろ?」
 「な! バカ言わないで下さい!」
 「お前こそ何言ってやがる。石神家の跡取りは重要な話だろうよ。それに、お前、高虎に惚れてるじゃんか」
 「今言いますか!」
 「いつだっていいだろう」

 今だから言ったんじゃねぇか。
 お前を死なせたくねぇんだよ。

 「いいか、分かったな」
 「分かりませんよ!」

 虎蘭は前のスクリーンに顔を戻した。
 もう地獄のような荒野の中に立っている《刃》が見えている。
 まだ小さな映像だが、その凄まじい圧力は全員が感じている。
 やはり途轍もねぇ。

 「全員傾注!」

 俺が叫んだ。

 「1分後、後ろの格納ハッチが開く! 全員降下! 剣聖は八方位で《刃》を囲め!」
 『オス!』

 「ガンスリンガーはデュールゲリエと一緒に降下! 他の剣士はガンスリンガーたちを護れ!」
 『オス!』

 「虎蘭!」
 「はい!」
 「お前に初撃を撃たせてやる」
 「はい!」
 「ぶっ飛ばせ!」
 「オス!」

 それだけだ。
 あとは各自戦場で動くだろう。
 そう出来る連中を連れて来た。

 さて、《刃》よ。
 待たせたな。
 行くぜぇ!

 虎葉、お前ちゃんと見てろよ!





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 俺のインカムには一切のものが途絶えていた。
 この戦闘に集中できるように、蓮花がシャットダウンしている。
 
 《刃》の前に、《地獄の悪魔》や妖魔たちが集結していく。
 俺のことが分かったのだろう。

 「邪魔だ」

 俺は「虎王」を一閃させ、前方の敵を薙ぎ払った。
 数億の妖魔たちが消し飛んで行く。
 俺の本気だ。

 「来いよ」

 《刃》に向かって言った。
 やはり、圧倒的なプレッシャーがある。
 「神」とは違う、禍々しい《地獄の悪魔》とも違う、もっと純粋な死を感ずる波動。
 無数の剣技が放たれた。
 連山、煉獄、雲竜、その他数十の石神家の奥義が俺に向かってくる。
 俺は「虎王」の極星結界と石神家剣技の返し技で全てを跳ね返す。
 《刃》の攻撃が止んだ。

 「どうした、もう終わりか?」

 《刃》ほどの妖魔であれば、意識もあるだろう。
 まさか自分の技が悉く無効化されるとは思ってもいない。
 もちろん、俺も「虎王」のお陰だ。
 
 「!」

 《刃》が「虎相」になった。
 俺も合わせて「虎相」を出す。
 
 「行くぞ!」

 《絶星》

 「虎王」を上下左右に交差させて振る。
 巨大なクロスの光が《刃》に向かい、爆散させた。
 その後方の10億の妖魔も粉砕され消え去った。

 俺の後方で歓声が響いた。
 ブランたちのものだ。
 俺は更に残りの妖魔たちを斬り伏せて行く。
 ブランたちも旺盛に狩っていく。
 この戦場の趨勢は決まった。

 虎白さん、そっちは任せましたよ。
 そして聖。
 




 頼む。
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