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パムッカレ 緊急防衛戦 XⅢ
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俺は蓮花研究所を襲ってくる妖魔を斬り倒して行った。
「虎王」の前に、普通の妖魔は全くの無力だ。
ただ、20億もの数が半端ではない。
もちろん、「虎王」を握った俺が苦戦するはずもないのだが。
ブランたちも総出で敵を屠っているし、デュールゲリエたちも1万出ている。
俺は上級妖魔を主に受け持ち、まだ遠方にいる《地獄の悪魔》、そして《刃》に備えていた。
俺が考えていたのは、ブランやデュールゲリエたちの戦闘訓練だ。
俺が一人いれば、この程度の敵は何のことも無かった。
《刃》に関しても、実際を言えば簡単に降せる。
虎白さんたちもそのことが分かっているので、俺一人で任せたのだ。
栞と士王は蓮花と一緒にいて、桜花たちが護衛している。
ミユキや前鬼、後鬼も戦場に出ている。
その三人の活躍は目覚ましく、他のブランたちよりも抜きん出ている。
だからアナイアレイターたちには、防衛戦を命じた。
回り込んで来る敵に対する防衛だ。
20億の妖魔は以前は脅威だったが、今の俺たちにはさほどのことも無くなっていた。
注意すべきは《地獄の悪魔》と、そして《刃》だ。
蓮花から通信が来た。
戦闘中なので、通信が入るのは余程のことだ。
俺は妖魔を斬り裂きながら受けた。
「石神様! 綾から緊急入電です!」
「どうした!」
その時に、俺は諸見と綾をパムッカレへやっていることを思い出した。
今となってはどうしようもない。
あいつらならば、防衛戦に志願して加わっているだろう。
諸見の実力は格段に上がっているので、余程のことが無ければ大丈夫なはずだ。
あいつはついに固有技まで会得したのだから。
それだけの思考を瞬時に終わらせた。
しかし、蓮花は俺の全くの想像外の情報をもたらした。
「パムッカレで、保奈美さんを見つけたそうです!」
「なんだって!」
俺の剣技が一瞬途絶えた。
戦闘中に、俺が俺でなくなった。
こんなことは滅多に無い。
即座に攻撃を続ける。
「今、綾が諸見さんと共に護衛しています! パムッカレ基地でもすぐに保奈美さんの確保に動きました!」
「そうか、頼むぞ!」
保奈美が!
俺が歓喜に震えたその時、続報が入った。
「石神様! パムッカレにも《刃》が出現いたしました!」
「!」
なんだと!
今は俺が向かえない。
目まぐるしく思考した。
「聖を! あいつに保奈美たちの救出へ向かわせてくれ!」
「分かりました!」
蓮花の通信が切れた。
自分が無茶な指示を出したことは分かっている。
聖はまだ万全には程遠い。
でも、あいつにしか頼めなかった。
聖がどんな無理をしてでも、保奈美を救おうとしてくれることは分かっている。
相手はあの《刃》だ。
俺たちは翻弄されるだけで、まだあいつの本当の力は見ていないのだ。
それでもあいつに頼むしかなかった。
石神家の剣聖たちならば万全だが、西安の《刃》との対戦はどんな予想外のことが起きるか分からない。
だから、そっちも石神家の全力を傾注しなければならなかった。
聖、頼む!
俺は前に飛び出た。
ブランたちが慌てて俺を追おうとする。
俺はそれを無視して前面の敵を屠った。
「虎王」の一振りで、10億の妖魔が消し飛ぶ。
「虎王」の威力を隠している場合ではない。
ブランたちに連絡し、後退させる。
残存戦力を殲滅しろと伝えた。
「俺は《地獄の悪魔》と《刃》をやる!」
更に前に飛び出て、3体の《地獄の悪魔》を瞬時に両断した。
本来は、俺の全力は見せたくなかった。
しかし、事態が逼迫している。
聖はすぐにパムッカレに向かってくれるだろう。
それでも、その僅かな時間が一体どれほどのことになるのか。
病み上がりの聖では、荷が重いかもしれない。
だがあいつに頼むしかない。
聖のことと保奈美のことを何度も繰り返し考えた。
「聖! 俺もすぐに向かうぞ!」
《刃》と会敵した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
アラスカから連絡が来た。
なんと、パムッカレに、あの保奈美さんがいるらしい。
パムッカレでは、即座に保奈美さんを救出するために特別な体制が取られた。
デュールゲリエが50体護衛に入り、諸見さんと綾さんまでが保奈美さんを護っているらしい。
私と亜紀ちゃんはあと30秒で到達する。
亜紀ちゃんが嬉しそうに笑っている。
私を見て、更にニッコリと笑った。
私も笑っているのだろう。
保奈美さんが見つかった!
石神さんが喜ぶに違いない!
その時、またアラスカから緊急入電が入った。
パムッカレにまで《刃》が出現した!
同時に通信を受けた亜紀ちゃんも驚愕している。
「《刃》は西安と蓮花さんの研究所に出たはずじゃ!」
「タカさんの言った通りです! やっぱり複数体いるんですよ!」
「そんな!」
私と亜紀ちゃんでは、《刃》には対応出来ない。
聖さんが向かっているそうだけど、聖さんはまだ体調が万全でないのと、どうしても時間が掛かる。
自分での「飛行」は負担が大きいので、「タイガーファング」を回すためだ。
アラスカからは、私と亜紀ちゃんは《刃》には手を出すなと言っている。
それともう一つ、石神さんからの厳命ということで「魔法陣」は使用してはならないと言われた。
亜紀ちゃんが必死の顔をしている。
私もだ。
「チックショー!」
パムッカレに到着した。
膨大な妖魔がパムッカレの街に向かっている。
上空から、まだ避難民が残っていることが見て取れた。
《刃》も見えた。
体長4メートルの身体に、無数の刀が飛び出ている。
腕は6本。
もう街に到達しそうで、そこに銀色に輝くデュールゲリエたちが50体ほどで避難民の集団を防衛しようとしているのが見えた。
じゃあ、あそこに保奈美さんたちが!
あのまま《刃》が来れば、ひとたまりもない。
「柳さん! 私、行きます!」
「ダメだよ、亜紀ちゃん!」
私が必死に止めようとしたけど、亜紀ちゃんは止まらなかった。
「亜紀ちゃん! 命令は守って!」
「だって! 保奈美さんが! あそこに保奈美さんがいるんですよ!」
分かっている。
石神さんがずっと探していた保奈美さんがあそこにいる。
諸見さんと綾さんもいる。
このままでは、聖さんが来る前にみんな殺されてしまう!
亜紀ちゃんは上空から「最後の涙」を最大出力で撃った。
巨大な光の柱が《刃》に向かっていく。
しかし、2本の腕を交差させると、《刃》は亜紀ちゃんの攻撃を跳ね返した。
「コノヤロウ!」
《刃》が私たちを無視して前方の集団に向かう。
護衛のデュールゲリエたちが咄嗟に突っ込んで行って、バラバラに吹き飛ぶのが見えた。
やはり《刃》の戦闘力は凄まじい。
殲滅戦装備のデュールゲリエが、まるでオモチャのように吹き飛んで行く。
まずい!
その時、《刃》の前に誰かが飛び出して来た。
あれは諸見さんだ!
遠くからでも、諸見さんの全身に凄まじい闘気が吹き上がっているのが分かる。
いけない、諸見さん!
「虎王」の前に、普通の妖魔は全くの無力だ。
ただ、20億もの数が半端ではない。
もちろん、「虎王」を握った俺が苦戦するはずもないのだが。
ブランたちも総出で敵を屠っているし、デュールゲリエたちも1万出ている。
俺は上級妖魔を主に受け持ち、まだ遠方にいる《地獄の悪魔》、そして《刃》に備えていた。
俺が考えていたのは、ブランやデュールゲリエたちの戦闘訓練だ。
俺が一人いれば、この程度の敵は何のことも無かった。
《刃》に関しても、実際を言えば簡単に降せる。
虎白さんたちもそのことが分かっているので、俺一人で任せたのだ。
栞と士王は蓮花と一緒にいて、桜花たちが護衛している。
ミユキや前鬼、後鬼も戦場に出ている。
その三人の活躍は目覚ましく、他のブランたちよりも抜きん出ている。
だからアナイアレイターたちには、防衛戦を命じた。
回り込んで来る敵に対する防衛だ。
20億の妖魔は以前は脅威だったが、今の俺たちにはさほどのことも無くなっていた。
注意すべきは《地獄の悪魔》と、そして《刃》だ。
蓮花から通信が来た。
戦闘中なので、通信が入るのは余程のことだ。
俺は妖魔を斬り裂きながら受けた。
「石神様! 綾から緊急入電です!」
「どうした!」
その時に、俺は諸見と綾をパムッカレへやっていることを思い出した。
今となってはどうしようもない。
あいつらならば、防衛戦に志願して加わっているだろう。
諸見の実力は格段に上がっているので、余程のことが無ければ大丈夫なはずだ。
あいつはついに固有技まで会得したのだから。
それだけの思考を瞬時に終わらせた。
しかし、蓮花は俺の全くの想像外の情報をもたらした。
「パムッカレで、保奈美さんを見つけたそうです!」
「なんだって!」
俺の剣技が一瞬途絶えた。
戦闘中に、俺が俺でなくなった。
こんなことは滅多に無い。
即座に攻撃を続ける。
「今、綾が諸見さんと共に護衛しています! パムッカレ基地でもすぐに保奈美さんの確保に動きました!」
「そうか、頼むぞ!」
保奈美が!
俺が歓喜に震えたその時、続報が入った。
「石神様! パムッカレにも《刃》が出現いたしました!」
「!」
なんだと!
今は俺が向かえない。
目まぐるしく思考した。
「聖を! あいつに保奈美たちの救出へ向かわせてくれ!」
「分かりました!」
蓮花の通信が切れた。
自分が無茶な指示を出したことは分かっている。
聖はまだ万全には程遠い。
でも、あいつにしか頼めなかった。
聖がどんな無理をしてでも、保奈美を救おうとしてくれることは分かっている。
相手はあの《刃》だ。
俺たちは翻弄されるだけで、まだあいつの本当の力は見ていないのだ。
それでもあいつに頼むしかなかった。
石神家の剣聖たちならば万全だが、西安の《刃》との対戦はどんな予想外のことが起きるか分からない。
だから、そっちも石神家の全力を傾注しなければならなかった。
聖、頼む!
俺は前に飛び出た。
ブランたちが慌てて俺を追おうとする。
俺はそれを無視して前面の敵を屠った。
「虎王」の一振りで、10億の妖魔が消し飛ぶ。
「虎王」の威力を隠している場合ではない。
ブランたちに連絡し、後退させる。
残存戦力を殲滅しろと伝えた。
「俺は《地獄の悪魔》と《刃》をやる!」
更に前に飛び出て、3体の《地獄の悪魔》を瞬時に両断した。
本来は、俺の全力は見せたくなかった。
しかし、事態が逼迫している。
聖はすぐにパムッカレに向かってくれるだろう。
それでも、その僅かな時間が一体どれほどのことになるのか。
病み上がりの聖では、荷が重いかもしれない。
だがあいつに頼むしかない。
聖のことと保奈美のことを何度も繰り返し考えた。
「聖! 俺もすぐに向かうぞ!」
《刃》と会敵した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
アラスカから連絡が来た。
なんと、パムッカレに、あの保奈美さんがいるらしい。
パムッカレでは、即座に保奈美さんを救出するために特別な体制が取られた。
デュールゲリエが50体護衛に入り、諸見さんと綾さんまでが保奈美さんを護っているらしい。
私と亜紀ちゃんはあと30秒で到達する。
亜紀ちゃんが嬉しそうに笑っている。
私を見て、更にニッコリと笑った。
私も笑っているのだろう。
保奈美さんが見つかった!
石神さんが喜ぶに違いない!
その時、またアラスカから緊急入電が入った。
パムッカレにまで《刃》が出現した!
同時に通信を受けた亜紀ちゃんも驚愕している。
「《刃》は西安と蓮花さんの研究所に出たはずじゃ!」
「タカさんの言った通りです! やっぱり複数体いるんですよ!」
「そんな!」
私と亜紀ちゃんでは、《刃》には対応出来ない。
聖さんが向かっているそうだけど、聖さんはまだ体調が万全でないのと、どうしても時間が掛かる。
自分での「飛行」は負担が大きいので、「タイガーファング」を回すためだ。
アラスカからは、私と亜紀ちゃんは《刃》には手を出すなと言っている。
それともう一つ、石神さんからの厳命ということで「魔法陣」は使用してはならないと言われた。
亜紀ちゃんが必死の顔をしている。
私もだ。
「チックショー!」
パムッカレに到着した。
膨大な妖魔がパムッカレの街に向かっている。
上空から、まだ避難民が残っていることが見て取れた。
《刃》も見えた。
体長4メートルの身体に、無数の刀が飛び出ている。
腕は6本。
もう街に到達しそうで、そこに銀色に輝くデュールゲリエたちが50体ほどで避難民の集団を防衛しようとしているのが見えた。
じゃあ、あそこに保奈美さんたちが!
あのまま《刃》が来れば、ひとたまりもない。
「柳さん! 私、行きます!」
「ダメだよ、亜紀ちゃん!」
私が必死に止めようとしたけど、亜紀ちゃんは止まらなかった。
「亜紀ちゃん! 命令は守って!」
「だって! 保奈美さんが! あそこに保奈美さんがいるんですよ!」
分かっている。
石神さんがずっと探していた保奈美さんがあそこにいる。
諸見さんと綾さんもいる。
このままでは、聖さんが来る前にみんな殺されてしまう!
亜紀ちゃんは上空から「最後の涙」を最大出力で撃った。
巨大な光の柱が《刃》に向かっていく。
しかし、2本の腕を交差させると、《刃》は亜紀ちゃんの攻撃を跳ね返した。
「コノヤロウ!」
《刃》が私たちを無視して前方の集団に向かう。
護衛のデュールゲリエたちが咄嗟に突っ込んで行って、バラバラに吹き飛ぶのが見えた。
やはり《刃》の戦闘力は凄まじい。
殲滅戦装備のデュールゲリエが、まるでオモチャのように吹き飛んで行く。
まずい!
その時、《刃》の前に誰かが飛び出して来た。
あれは諸見さんだ!
遠くからでも、諸見さんの全身に凄まじい闘気が吹き上がっているのが分かる。
いけない、諸見さん!
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