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「ルート20」の資金 Ⅱ
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しばらく後で、御堂さんがうちに遊びに来てくれた。
忙しい人だけど、やっぱり時々はうちにも来てくれる。
柳さんも嬉しそうだ。
タカさんはもっと外で御堂さんとは会っているけど、やっぱりうちに来ると一番嬉しそうにする。
それに今日は木村さんも来て下さった。
御堂さんを送りながらで、もちろん一緒に上がってもらった。
「木村さん、お久し振りです!」
「本当にね! みんな元気そうって、まあそこは全然心配してないけどね」
「ワハハハハハハハ!」
一緒に夕飯を食べて頂く。
タカさんが張り切ってまたフレンチを作り、みんなで美味しく頂いた。
タカさんのお料理はいつも美味しいんだけど、御堂さんがくると、一段とスゴイ!
その後でタカさんは御堂さんと二人で話があるからと、地下へ降りて行くと言った。
「木村、悪いけどここでのんびりしててくれ」
「分かりました!」
「亜紀ちゃんが気に入ったら好きなようにしていいからな!」
「アハハハハハハ!」
私と柳さんが木村さんと楽しく話した。
「ルート20」のいろいろなお話を伺った。
タカさんから聞いていないお話もあって、楽しかった。
「そういえば、こないだタカさんが榎本さんのお宅へ遊びに行ったんですよ」
「ああ、そうか。榎本さんも凄かったからなぁ」
「ええ! 「鬼の殿」って言ってました」
「アハハハハハ! その通りだよ。あの人がいつもチームを一番後ろで護ってくれてたんだ」
「そうですってね!」
その時、ふとまた思い出した。
「榎本さんに謝られてしまったって、タカさん困ってました」
「ああ、そうだろうね。みんなそうだよ。トラさんに申し訳なかったって思ってる」
「でも、タカさんは全然そんなことは」
「うん、それも分かってる。トラさんはそういうお人だ」
「はい!」
木村さんが話しやすい人だから私もつい、口にしてしまった。
「あの、タカさんにははぐらかされてしまったんですけど」
「うん? なんだい?」
「「ルート20」って、結構資金持ってましたよね?」
「あ、ああ、そうだね」
「そのお金ってどうなったんでしょうか? いえ、あの! みなさん、お金が無かったのは分かってるんです! だから、その、タカさんが困っていた時にって」
「ああ、そういうことか」
木村さんはちょっと困った顔をしていた。
「亜紀ちゃんなら話してもいいかな。もう槙野もいないし」
「え、槙野さん?」
「うん。そうだなぁ、どこから話したらいいかな。あのね、当時、トラさんが高校を卒業して「ルート20」を辞めるってことになって」
「はい」
「その時に、井上さんたち草創期メンバーもみんな辞めて、榎本さんとかトラさんの同期の方々も辞めることになったんだ」
「はい」
少し、その辺りの話は聞いている。
「トラさんがいてこその「ルート20」だったからね。だからだよ」
「なるほど、そうなりますかね」
ルーとハーがコーヒーを持って来た。
一緒に話を聞く。
「その時にね、僕がチームのお金をどうしましょうかって話をしたんだ。あの時、1000万円はあったからね」
「え、そんなにですか!」
私たちも驚いた。
敵チームから納めさせたお金が相当あっただろうとは思っていたけど、そんなにあったとは。
「凄いよね。まあ、トラさんのお陰だよ。井上さんも困っちゃってた。考えもしなかったんだろうね。誰もお金を欲しいと思ってなかったから」
「ああ、「ルート20」ですもんね!」
木村さんが笑った。
「まあね。けじめでお金は納めさせたけど、チームの行事とか、あとは主に入院費用とかね」
「アハハハハハハ!」
「チームは解散にはしなかったけど、もう以前のようにはいかないとみんな思ってた。トラさんが何しろ凄過ぎたから、もう「ルート20」はここまでだって。まあ名前は残して、後は気の合った連中で走ろうって感じかな」
「なるほどー」
「それで問題はお金だ。井上さんは僕たちに残そうかとも考えたみたいだけど、僕たちが断った。もう、そんなお金は必要ないからね。何しろトラさんのお陰で集まったお金だ。だからトラさんとか井上さんたちで分配して欲しいって」
「そうだったんですね」
木村さんが懐かしそうな顔をしていた。
「その時にね、トラさんが自分は全然いらないって言ったんだ」
「はい!」
「もしも自分の分があるのなら、槙野に渡して欲しいって」
「え!」
木村さんがコーヒーを口に含んで呑み込んだ。
「ほら、槙野の妹が重い病気だったのは、亜紀ちゃんも知っているでしょ?」
「はい、心臓が悪かったと」
「うん。あの時、花は小学生か。その時も大分悪くてね、手術しなければならないって」
「そうだったんですね」
タカさんは槙野さんのことをいつも気遣っていて、花さんのその時の状況も知っていたそうだ。
「トラさんはよく槙野の家に行っていてね。花さんのことも知ってたみたいだった。でも、手術の必要があるとかは話さなかった。その時は槙野が丁度いなくてね。だからトラさんも言ったんだろうけど」
「タカさん……」
「でも、他の幹部の方も知ってる人がいたんだ。トラさんが花の病気のための費用を渡したがってるんだって。だから全員、お金はいらないって。槙野に全部渡してやろうってことになった」
「やっぱり「ルート20」は最高だぁ!」
私が叫ぶとみんなが笑った。
「槙野は当然断ったんだけどね。トラさんがぶん殴って受け取らせた。花の手術は無事成功したんだ。まあ、その時はトラさんはもう日本にはいなかったけどね」
「素晴らしいお話です!」
「トラさんが大変になったことを後でみんなが知って。槙野は慌ててお金をトラさんに渡さなきゃって言ったんだよ」
「はいはい!」
「またトラさんにぶん殴られた。もうボコボコにされて、本当に入院したんだ」
「えぇ!」
「その間にトラさんはいなくなった。槙野、最期にトラさんに会えて嬉しかったろうな。そしてまたトラさんが花のことを引き受けてくれて。あいつはどんなに嬉しかったことか」
「槙野さん……」
私たちがスゴイスゴイと騒いでいると、タカさんと御堂さんが地下から上がって来た。
「なんだ、盛り上がってるな」
「タカさーん!」
「あんだよ! 木村になんかされたか?」
「もう、目一杯に!」
「そうか、木村、てめぇ覚悟はあるよな?」
「トラさん!」
みんなで笑った。
私が「ルート20」の物語を書くと言ったら、タカさんと木村さんが爆笑していた。
「タイトルは『「ルート20」の虎』です!」
「ばか、やめろ!」
「あ、それいいですね!」
「木村!」
「じゃあ、出版社を買収するね!」
「ルー!」
「御堂さんとこに、もうあります?」
「うん、御堂グループにもうあるよ」
「やったぁー!」
「てめぇら、いい加減にしろぉ!」
さー、やるぞぉー!
忙しい人だけど、やっぱり時々はうちにも来てくれる。
柳さんも嬉しそうだ。
タカさんはもっと外で御堂さんとは会っているけど、やっぱりうちに来ると一番嬉しそうにする。
それに今日は木村さんも来て下さった。
御堂さんを送りながらで、もちろん一緒に上がってもらった。
「木村さん、お久し振りです!」
「本当にね! みんな元気そうって、まあそこは全然心配してないけどね」
「ワハハハハハハハ!」
一緒に夕飯を食べて頂く。
タカさんが張り切ってまたフレンチを作り、みんなで美味しく頂いた。
タカさんのお料理はいつも美味しいんだけど、御堂さんがくると、一段とスゴイ!
その後でタカさんは御堂さんと二人で話があるからと、地下へ降りて行くと言った。
「木村、悪いけどここでのんびりしててくれ」
「分かりました!」
「亜紀ちゃんが気に入ったら好きなようにしていいからな!」
「アハハハハハハ!」
私と柳さんが木村さんと楽しく話した。
「ルート20」のいろいろなお話を伺った。
タカさんから聞いていないお話もあって、楽しかった。
「そういえば、こないだタカさんが榎本さんのお宅へ遊びに行ったんですよ」
「ああ、そうか。榎本さんも凄かったからなぁ」
「ええ! 「鬼の殿」って言ってました」
「アハハハハハ! その通りだよ。あの人がいつもチームを一番後ろで護ってくれてたんだ」
「そうですってね!」
その時、ふとまた思い出した。
「榎本さんに謝られてしまったって、タカさん困ってました」
「ああ、そうだろうね。みんなそうだよ。トラさんに申し訳なかったって思ってる」
「でも、タカさんは全然そんなことは」
「うん、それも分かってる。トラさんはそういうお人だ」
「はい!」
木村さんが話しやすい人だから私もつい、口にしてしまった。
「あの、タカさんにははぐらかされてしまったんですけど」
「うん? なんだい?」
「「ルート20」って、結構資金持ってましたよね?」
「あ、ああ、そうだね」
「そのお金ってどうなったんでしょうか? いえ、あの! みなさん、お金が無かったのは分かってるんです! だから、その、タカさんが困っていた時にって」
「ああ、そういうことか」
木村さんはちょっと困った顔をしていた。
「亜紀ちゃんなら話してもいいかな。もう槙野もいないし」
「え、槙野さん?」
「うん。そうだなぁ、どこから話したらいいかな。あのね、当時、トラさんが高校を卒業して「ルート20」を辞めるってことになって」
「はい」
「その時に、井上さんたち草創期メンバーもみんな辞めて、榎本さんとかトラさんの同期の方々も辞めることになったんだ」
「はい」
少し、その辺りの話は聞いている。
「トラさんがいてこその「ルート20」だったからね。だからだよ」
「なるほど、そうなりますかね」
ルーとハーがコーヒーを持って来た。
一緒に話を聞く。
「その時にね、僕がチームのお金をどうしましょうかって話をしたんだ。あの時、1000万円はあったからね」
「え、そんなにですか!」
私たちも驚いた。
敵チームから納めさせたお金が相当あっただろうとは思っていたけど、そんなにあったとは。
「凄いよね。まあ、トラさんのお陰だよ。井上さんも困っちゃってた。考えもしなかったんだろうね。誰もお金を欲しいと思ってなかったから」
「ああ、「ルート20」ですもんね!」
木村さんが笑った。
「まあね。けじめでお金は納めさせたけど、チームの行事とか、あとは主に入院費用とかね」
「アハハハハハハ!」
「チームは解散にはしなかったけど、もう以前のようにはいかないとみんな思ってた。トラさんが何しろ凄過ぎたから、もう「ルート20」はここまでだって。まあ名前は残して、後は気の合った連中で走ろうって感じかな」
「なるほどー」
「それで問題はお金だ。井上さんは僕たちに残そうかとも考えたみたいだけど、僕たちが断った。もう、そんなお金は必要ないからね。何しろトラさんのお陰で集まったお金だ。だからトラさんとか井上さんたちで分配して欲しいって」
「そうだったんですね」
木村さんが懐かしそうな顔をしていた。
「その時にね、トラさんが自分は全然いらないって言ったんだ」
「はい!」
「もしも自分の分があるのなら、槙野に渡して欲しいって」
「え!」
木村さんがコーヒーを口に含んで呑み込んだ。
「ほら、槙野の妹が重い病気だったのは、亜紀ちゃんも知っているでしょ?」
「はい、心臓が悪かったと」
「うん。あの時、花は小学生か。その時も大分悪くてね、手術しなければならないって」
「そうだったんですね」
タカさんは槙野さんのことをいつも気遣っていて、花さんのその時の状況も知っていたそうだ。
「トラさんはよく槙野の家に行っていてね。花さんのことも知ってたみたいだった。でも、手術の必要があるとかは話さなかった。その時は槙野が丁度いなくてね。だからトラさんも言ったんだろうけど」
「タカさん……」
「でも、他の幹部の方も知ってる人がいたんだ。トラさんが花の病気のための費用を渡したがってるんだって。だから全員、お金はいらないって。槙野に全部渡してやろうってことになった」
「やっぱり「ルート20」は最高だぁ!」
私が叫ぶとみんなが笑った。
「槙野は当然断ったんだけどね。トラさんがぶん殴って受け取らせた。花の手術は無事成功したんだ。まあ、その時はトラさんはもう日本にはいなかったけどね」
「素晴らしいお話です!」
「トラさんが大変になったことを後でみんなが知って。槙野は慌ててお金をトラさんに渡さなきゃって言ったんだよ」
「はいはい!」
「またトラさんにぶん殴られた。もうボコボコにされて、本当に入院したんだ」
「えぇ!」
「その間にトラさんはいなくなった。槙野、最期にトラさんに会えて嬉しかったろうな。そしてまたトラさんが花のことを引き受けてくれて。あいつはどんなに嬉しかったことか」
「槙野さん……」
私たちがスゴイスゴイと騒いでいると、タカさんと御堂さんが地下から上がって来た。
「なんだ、盛り上がってるな」
「タカさーん!」
「あんだよ! 木村になんかされたか?」
「もう、目一杯に!」
「そうか、木村、てめぇ覚悟はあるよな?」
「トラさん!」
みんなで笑った。
私が「ルート20」の物語を書くと言ったら、タカさんと木村さんが爆笑していた。
「タイトルは『「ルート20」の虎』です!」
「ばか、やめろ!」
「あ、それいいですね!」
「木村!」
「じゃあ、出版社を買収するね!」
「ルー!」
「御堂さんとこに、もうあります?」
「うん、御堂グループにもうあるよ」
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