2,567 / 2,840
母がなくては…… Ⅳ
しおりを挟む
翌朝、8時に陽子さんのお宅へ伺った。
近くで電話で連絡したので皆さんが玄関に出て来ていて、タカさんの両脇に猛君と美鈴ちゃんが手を握っている。
あー、すっかりタカさんの虜だー。
みなさんが一緒に最後部のシートに座る。
30分ほど走って、お寺に着いた。
南原さんは地元の名士だったので、やはり立派なお寺だ。
予約していたので、まず本堂でお経をあげてもらう。
タカさんのお母様と陽子さんのお父様の分だ。
位牌はそれぞれ持って来て、卒塔婆も一杯頼んであった。
ご住職のお経が終わり、みんなで位牌と卒塔婆、お花を持ってお墓へ向かった。
タカさんがお母様の位牌を持っている。
平然とした顔をしているけど、何かに耐えているのが私には分かった。
タカさんが心配になった。
また、思わず心が乱れてしまうのではないか。
奈津江さんのことでよく知っている。
タカさんが大事に思っている人間は多い。
その中でも、奈津江さんは超特別だ。
ふとしたことで、タカさんの心が大きく掻き乱される。
お母様のことでは、これまでそういうことは無かったけど、きっと奈津江さんと同じなのだろう。
もしかしたら、もっと深いのかもしれない。
歩きながら思い出した。
タカさんは、奈津江さんのことでは時にはジョークを飛ばしたり、奈津江さんの可愛らしい失敗なども話していた。
でも、お母様のことでは一切そういうことは無かったんじゃないか?
いつも、ひたすらお母様のことを褒め、優しく素敵な方だったことしか話してないんじゃないか?
だったら……
奈津江さんのお墓にはよくお参りに行くけど、私たちがタカさんの家に入ってから、お母様のお墓参りは私が知る限り初めてだ。
それがどういうことなのか……
それって、タカさんが未だに向き合えないことだからじゃないのか。
でも、タカさんは表面上は落ち着いており、私たちが掃除をしているのを黙って見ていた。
お墓は陽子さんがお世話をして下さっているのがよく分かった。
墓石も綺麗に磨かれ、少し拭くだけで艶が出た。
用意した線香を焚き、タカさんがいつものように般若心経を唱える。
私たちも一緒に唱えた。
大勢いるので、順番に手を合わせて行った。
手を合わせる響子ちゃん、栞さんや六花さん、麗星さんをタカさんが紹介し、子どもたちも私たちのことも紹介してくれた。
陽子さんたちも手を合わせ、タカさんが今も陽子さんたちがお墓の世話をしてくれていることに感謝していた。
そして南原さんにまずお礼を言い、お母様に初めて話し掛けた。
たくさんの思い出。
本当にタカさんはいろんな話をしている。
これがタカさんの墓参りなのだ。
死んだ人に、まるで生きているかのように話し掛ける。
目の前にしてまた会えたみたいにして楽しそうに話す。
奈津江さんのお墓でもそうだし、私たちの両親にも同じように話していた。
一緒に参ったことはないけど、他の人たちにもきっと同じに違いない。
タカさんが夢中で話している。
しばらくして、陽子さんが私の手を取った。
「二人きりにしてあげましょう」
「はい」
みんなでお墓を離れた。
一度振り返ると、タカさんがやっぱり一生懸命にお墓に話し掛けていた。
自動販売機とベンチがある場所を見つけ、そこでみんなで休んだ。
ルーとハーがみんなの注文を受けて、ジュースなどを買って配った。
タカさんは今、何をお母様と話しているのだろう。
そんなことを考えていると、陽子さんが私に寄って来た。
「多分ね、トラちゃんはお父様のことを話していると思う」
「ああ!」
そうだ、きっとそうだ。
「昨夜ね、そんなこと言ってたから。お父様は酷い方じゃなかったんだって」
「そうなんです! タカさんのために自分の全てを擲ったんです! 本当に立派な人でした!」
「うん、少し聞いたの。でも、それを孝子さんに話していいのかどうか悩んでいたわ」
「そうですね。孝子さんは再婚されてますもんね」
「それにね、孝子さんも苦しむんじゃないかって思っていると思う」
「あ、そうか!」
「でも、トラちゃんは話すんだと思うよ」
「はい、タカさんはそういう人ですね」
陽子さんのお子さんたちはルーとハーたちが一緒に遊んでいた。
士王や吹雪、天狼と奈々も一緒だ。
自然と大人たちだけになっていた。
陽子さんが、私たちにタカさんのお母様の話をしてくれた。
まるでタカさんが今お母様と話しているのと合わせているように。
陽子さんは本当に気遣いの方だ。
みんなでタカさんを待った。
誰ももう話さなかった。
いつまででも待つつもりだった。
2時間後、タカさんが来た。
良かった、タカさんが笑ってる!
「よう、待たせてしまったな」
「タカさん、お腹減ったよー」
ハーがわざとそう言った。
タカさんに気遣いさせないようにだ。
丁度11時半だった。
「ああ、悪い! じゃあ昼食にしよう」
「トラちゃん、美味しいお蕎麦屋さんがあるから。これから予約するね?」
「そうなんですか!」
「あのさ、これくらいはご馳走させてね!」
「え、でも。こいつらの薬味ってステーキなんですよ?」
「エェー! 何それ!」
「マジですって。な、亜紀ちゃん?」
「今日はいいですよ!」
「私、生姜焼きは食べたいな」
私がルーの頭をはたいた。
「え、じゃあ出来るだけ頑張るね」
「蕎麦屋に生姜焼きはないでしょう」
「でも、なんか丼とか」
「いや、普通でいいですから」
みんなで笑いながら陽子さんが予約して下さったお蕎麦屋さんに行った。
うな重と親子丼と天丼の他に、生姜焼きがあってびっくりした。
タカさんがうな重以外の丼一杯までで、丼を頼んだら蕎麦は盛り蕎麦にすることを明言した。
陽子さんが慌てて幾らでも食べて欲しいと言った。
「陽子さん、こいつら舐めちゃいけません。丼は10杯以上喰いますよ?」
「え?」
「全部で確実に50万円は超えます」
「!」
結局タカさんの申し出の通りになった。
みんなで楽しく食べた。
ロボは申し訳ないけど、バスでササミ。
お蕎麦が本当に美味しかった。
そう言うと、陽子さんが嬉しそうに笑った。
マイクロバスでまた陽子さんたちを家まで送った。
猛君と美鈴ちゃんがタカさんに抱き着いて、また来て欲しいと言っていた。
「じゃあ、陽子さん、旦那さん。また来ますね」
「うん、本当に近いうちにね」
「そう言えばこの家、大分古くなってますよね?」
陽子さんが真面目に怒った。
「トラちゃん! 本当に辞めてよ!」
「ワハハハハハハハハ!」
みんなで窓から手を振ってお別れした。
ホテルに戻って荷物を引き揚げた。
「タカさん、大丈夫ですか?」
「うん? 別に何もしてないだろう?」
「そんなはずないです。タカさんは神と戦ったよりも疲れてますよ!」
「お前、何言ってんだよ?」
タカさんの目が真っ赤なのは誰も言わなかった。
きっとお母様のお墓でたくさん泣いたのだろう。
「取敢えず、帰ってからお風呂ですね!」
「なんでだよ!」
「虎温泉をみんなで」
「お、いいな!」
「あ、ノッて来ましたね!」
「ワハハハハハハハハ!」
タカさん、無理しないで下さい。
私は心配で、なるべくタカさんの傍にいた。
タカさんが山口を発つ時に呟いたのが聞こえた。
《母がなくては、愛することは出来ない。 母がなくては、死ぬことは出来ない。(Ohne Mutter kann man nicht lieben. Ohne Mutter kann man nicht sterben. )》
タカさんに気付かれないように、必死で覚えた。
帰ってから調べると、ヘルマン・ヘッセの『知と愛』の中の言葉だと分かった。
タカさんのお母様は、タカさんの全てだったんだ。
お母様がいらっしゃったから、タカさんはタカさんになった。
タカさん……
近くで電話で連絡したので皆さんが玄関に出て来ていて、タカさんの両脇に猛君と美鈴ちゃんが手を握っている。
あー、すっかりタカさんの虜だー。
みなさんが一緒に最後部のシートに座る。
30分ほど走って、お寺に着いた。
南原さんは地元の名士だったので、やはり立派なお寺だ。
予約していたので、まず本堂でお経をあげてもらう。
タカさんのお母様と陽子さんのお父様の分だ。
位牌はそれぞれ持って来て、卒塔婆も一杯頼んであった。
ご住職のお経が終わり、みんなで位牌と卒塔婆、お花を持ってお墓へ向かった。
タカさんがお母様の位牌を持っている。
平然とした顔をしているけど、何かに耐えているのが私には分かった。
タカさんが心配になった。
また、思わず心が乱れてしまうのではないか。
奈津江さんのことでよく知っている。
タカさんが大事に思っている人間は多い。
その中でも、奈津江さんは超特別だ。
ふとしたことで、タカさんの心が大きく掻き乱される。
お母様のことでは、これまでそういうことは無かったけど、きっと奈津江さんと同じなのだろう。
もしかしたら、もっと深いのかもしれない。
歩きながら思い出した。
タカさんは、奈津江さんのことでは時にはジョークを飛ばしたり、奈津江さんの可愛らしい失敗なども話していた。
でも、お母様のことでは一切そういうことは無かったんじゃないか?
いつも、ひたすらお母様のことを褒め、優しく素敵な方だったことしか話してないんじゃないか?
だったら……
奈津江さんのお墓にはよくお参りに行くけど、私たちがタカさんの家に入ってから、お母様のお墓参りは私が知る限り初めてだ。
それがどういうことなのか……
それって、タカさんが未だに向き合えないことだからじゃないのか。
でも、タカさんは表面上は落ち着いており、私たちが掃除をしているのを黙って見ていた。
お墓は陽子さんがお世話をして下さっているのがよく分かった。
墓石も綺麗に磨かれ、少し拭くだけで艶が出た。
用意した線香を焚き、タカさんがいつものように般若心経を唱える。
私たちも一緒に唱えた。
大勢いるので、順番に手を合わせて行った。
手を合わせる響子ちゃん、栞さんや六花さん、麗星さんをタカさんが紹介し、子どもたちも私たちのことも紹介してくれた。
陽子さんたちも手を合わせ、タカさんが今も陽子さんたちがお墓の世話をしてくれていることに感謝していた。
そして南原さんにまずお礼を言い、お母様に初めて話し掛けた。
たくさんの思い出。
本当にタカさんはいろんな話をしている。
これがタカさんの墓参りなのだ。
死んだ人に、まるで生きているかのように話し掛ける。
目の前にしてまた会えたみたいにして楽しそうに話す。
奈津江さんのお墓でもそうだし、私たちの両親にも同じように話していた。
一緒に参ったことはないけど、他の人たちにもきっと同じに違いない。
タカさんが夢中で話している。
しばらくして、陽子さんが私の手を取った。
「二人きりにしてあげましょう」
「はい」
みんなでお墓を離れた。
一度振り返ると、タカさんがやっぱり一生懸命にお墓に話し掛けていた。
自動販売機とベンチがある場所を見つけ、そこでみんなで休んだ。
ルーとハーがみんなの注文を受けて、ジュースなどを買って配った。
タカさんは今、何をお母様と話しているのだろう。
そんなことを考えていると、陽子さんが私に寄って来た。
「多分ね、トラちゃんはお父様のことを話していると思う」
「ああ!」
そうだ、きっとそうだ。
「昨夜ね、そんなこと言ってたから。お父様は酷い方じゃなかったんだって」
「そうなんです! タカさんのために自分の全てを擲ったんです! 本当に立派な人でした!」
「うん、少し聞いたの。でも、それを孝子さんに話していいのかどうか悩んでいたわ」
「そうですね。孝子さんは再婚されてますもんね」
「それにね、孝子さんも苦しむんじゃないかって思っていると思う」
「あ、そうか!」
「でも、トラちゃんは話すんだと思うよ」
「はい、タカさんはそういう人ですね」
陽子さんのお子さんたちはルーとハーたちが一緒に遊んでいた。
士王や吹雪、天狼と奈々も一緒だ。
自然と大人たちだけになっていた。
陽子さんが、私たちにタカさんのお母様の話をしてくれた。
まるでタカさんが今お母様と話しているのと合わせているように。
陽子さんは本当に気遣いの方だ。
みんなでタカさんを待った。
誰ももう話さなかった。
いつまででも待つつもりだった。
2時間後、タカさんが来た。
良かった、タカさんが笑ってる!
「よう、待たせてしまったな」
「タカさん、お腹減ったよー」
ハーがわざとそう言った。
タカさんに気遣いさせないようにだ。
丁度11時半だった。
「ああ、悪い! じゃあ昼食にしよう」
「トラちゃん、美味しいお蕎麦屋さんがあるから。これから予約するね?」
「そうなんですか!」
「あのさ、これくらいはご馳走させてね!」
「え、でも。こいつらの薬味ってステーキなんですよ?」
「エェー! 何それ!」
「マジですって。な、亜紀ちゃん?」
「今日はいいですよ!」
「私、生姜焼きは食べたいな」
私がルーの頭をはたいた。
「え、じゃあ出来るだけ頑張るね」
「蕎麦屋に生姜焼きはないでしょう」
「でも、なんか丼とか」
「いや、普通でいいですから」
みんなで笑いながら陽子さんが予約して下さったお蕎麦屋さんに行った。
うな重と親子丼と天丼の他に、生姜焼きがあってびっくりした。
タカさんがうな重以外の丼一杯までで、丼を頼んだら蕎麦は盛り蕎麦にすることを明言した。
陽子さんが慌てて幾らでも食べて欲しいと言った。
「陽子さん、こいつら舐めちゃいけません。丼は10杯以上喰いますよ?」
「え?」
「全部で確実に50万円は超えます」
「!」
結局タカさんの申し出の通りになった。
みんなで楽しく食べた。
ロボは申し訳ないけど、バスでササミ。
お蕎麦が本当に美味しかった。
そう言うと、陽子さんが嬉しそうに笑った。
マイクロバスでまた陽子さんたちを家まで送った。
猛君と美鈴ちゃんがタカさんに抱き着いて、また来て欲しいと言っていた。
「じゃあ、陽子さん、旦那さん。また来ますね」
「うん、本当に近いうちにね」
「そう言えばこの家、大分古くなってますよね?」
陽子さんが真面目に怒った。
「トラちゃん! 本当に辞めてよ!」
「ワハハハハハハハハ!」
みんなで窓から手を振ってお別れした。
ホテルに戻って荷物を引き揚げた。
「タカさん、大丈夫ですか?」
「うん? 別に何もしてないだろう?」
「そんなはずないです。タカさんは神と戦ったよりも疲れてますよ!」
「お前、何言ってんだよ?」
タカさんの目が真っ赤なのは誰も言わなかった。
きっとお母様のお墓でたくさん泣いたのだろう。
「取敢えず、帰ってからお風呂ですね!」
「なんでだよ!」
「虎温泉をみんなで」
「お、いいな!」
「あ、ノッて来ましたね!」
「ワハハハハハハハハ!」
タカさん、無理しないで下さい。
私は心配で、なるべくタカさんの傍にいた。
タカさんが山口を発つ時に呟いたのが聞こえた。
《母がなくては、愛することは出来ない。 母がなくては、死ぬことは出来ない。(Ohne Mutter kann man nicht lieben. Ohne Mutter kann man nicht sterben. )》
タカさんに気付かれないように、必死で覚えた。
帰ってから調べると、ヘルマン・ヘッセの『知と愛』の中の言葉だと分かった。
タカさんのお母様は、タカさんの全てだったんだ。
お母様がいらっしゃったから、タカさんはタカさんになった。
タカさん……
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
こずえと梢
気奇一星
キャラ文芸
時は1900年代後期。まだ、全国をレディースたちが駆けていた頃。
いつもと同じ時間に起き、同じ時間に学校に行き、同じ時間に帰宅して、同じ時間に寝る。そんな日々を退屈に感じていた、高校生のこずえ。
『大阪 龍斬院』に所属して、喧嘩に明け暮れている、レディースで17歳の梢。
ある日、オートバイに乗っていた梢がこずえに衝突して、事故を起こしてしまう。
幸いにも軽傷で済んだ二人は、病院で目を覚ます。だが、妙なことに、お互いの中身が入れ替わっていた。
※レディース・・・女性の暴走族
※この物語はフィクションです。
~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました
深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる