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「紅六花」総力戦 Ⅲ

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 竹流君が飛行型を撃破した。
 スゴイ!
 高速機動で「飛行」し、「花岡」の技で短時間で飛行型を四散させた。

 僕も4体の「ジェヴォーダン」を何とか撃破した。
 竹流君が僕の横に降りて来る。

 「竹流君! すごかったよ!」
 「いいえ、亜蘭さんこそ! 4体を同時撃破なんて凄いですよ!」
 「そ、そうかな?」
 「やっぱり亜蘭さんは最高です!」
 「そ、そう?」

 二人で笑った。
 その時、《クリムゾン》が新たな警報を鳴らした。

 「巨大なゲートを確認! 霊素反応の規模から、《地獄の悪魔》が出て来ると思われます」
 「な、なんだって!」

 僕も《地獄の悪魔》のことは知っている。
 上級妖魔よりも遙かに強い、とんでもない怪物だ。
 これまでは、アラスカのソルジャーたちでも太刀打ちできなかったそうだ。

 「亜蘭園長はすぐに避難を」
 「うん、分かった!」

 竹流君と一緒にシェルターへ入ろうとした。
 しかし、《クリムゾン》が話した。

 「竹流様、お願い出来ますか?」
 「はい!」
 「え?」
 
 《クリムゾン》が何を言っているのか分からなかった。
 僕は避難で、竹流君は戦うって?
 それは逆だろう!

 「た、竹流君!」
 「亜蘭さん、急いでシェルターに避難を!」
 「でも、君は!」
 「僕が対処します。どうか急いで」
 「竹流君!」

 竹流君は僕を見て、微笑んで飛んで行った。
 《クリムゾン》が僕に言った。

 「亜蘭園長、すぐに避難を」
 「でも、竹流君は!」
 「あの方は大丈夫です。既に《地獄の悪魔》に対抗できる技をお持ちです」
 「なんだってぇ!」
 「ですので、竹流様にお任せし、亜蘭園長はどうか避難を」

 《クリムゾン》が僕に避難を勧めている。
 
 「そんなことが出来るかぁ! 僕が「暁園」の子どもたちを護るんだぁ!」
 「亜蘭園長」
 「僕も行くよ!」

 「……かしこまりました。ご武運を。あなたはご立派です」
 「うん!」

 僕も竹流君の後を追った。
 僕なんかに《地獄の悪魔》は斃せない。
 でも、竹流君が危なくなったら、何か出来るかもしれない。
 いや、そんなんじゃない!
 僕は絶対に竹流君を護るんだ!
 





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 《地獄の悪魔》。
 最初に遭遇した時には、石神家の剣士の方が一人亡くなったそうだ。
 その後も神様たちが苦戦しながら何とか撃破して来た。
 僕も詳しくは聞かされていないけど、妖魔たちとは少し違うらしい。
 かつて、大きな力を持っていた者たちで、遙か昔に神に戦いを挑んで負けた。
 そして神によって地獄へ堕とされ、力も奪われた。
 そうした連中が、悪しき神々によって再び力を与えられ、今は「業」の軍勢になっている。

 神様が対抗手段を見出し、石神家の剣士たちや「花岡」の上級者にそれを伝えた。
 まだ強敵には違いないけど、僕たちは《地獄の悪魔》に対抗出来るようになった。
 そして神様は僕にも対抗手段を授けてくれた。

 「竹流!」

 通信が入った。
 総長の六花さんからで、驚いた。

 「六花さん!」
 「トラから伝言だよ!」
 「はい!」
 「必殺技を使え! 「マルミアドワーズ」をぶちかませ!」
 「はい!」
 「敵の度肝を抜いてやれぇ!」
 「はい! 分かりました!」

 神様が僕を信頼している!
 《地獄の悪魔》が見えてきた。
 真っ黒い太い触手を無数にうごめかせている、直径2キロの大きさ。
 

 《マルミアドワーズ》


 僕の両手から螺旋の光が伸びて行く。
 触手の中心に当たり、そこから激しく爆散させていく。
 他の触手が数本僕の方に伸びてきた。
 その時、横から誰かが飛び込んできた。
 触手が幾つもに切断されていった。
 「花岡」の「大龍剣」だろう。
 あんなに見事に使いこなすのは、亜蘭さんだ! 
 
 「亜蘭さん!」
 「竹流君! 僕が攻撃を防ぐ! 君は続けて!」
 「はい!」

 僕は「マルミアドワーズ」を連射し、亜蘭さんが僕への攻撃を防いでくれる。
 僕の隣に誰かが接近して来た。

 「六花さん!」
 「竹流、大丈夫そうだね!」
 「はい!」

 最後に残った触手に「マルミアドワーズ」を撃ち込んだ。
 《地獄の悪魔》は完全に消失した。
 亜蘭さんが地上に降りて倒れた。

 「亜蘭さん!」

 僕と六花さんが近くへ降りると、亜蘭さんは右手と左足がヘンな向きに曲がり、右胸から血を流していた。

 「亜蘭さん!」
 「大丈夫だよ。竹流君、よくやったね! 凄かったよ!」
 「亜蘭さんのお陰ですよ! 僕を護ってくれて!」
 「それは当たり前だよ。そのために僕はここへ来たんだからね」
 「亜蘭さん!」

 六花さんが微笑んで、亜蘭さんの状態を見た。
 
 「うん、大丈夫そうだ。骨折はあるけど、胸の傷もそれほど深くはないよ」
 「でも、痛いですよー!」
 「アハハハハハ!」

 よしこさんが来た。

 「総長!」
 「よしこ、終わったな」
 「はい!」

 よしこさんは、倒れている亜蘭さんに近づいた。

 「亜蘭、大丈夫か?」
 「痛いです」
 「よくやった! お前は立派だった! みんなを護ってくれてありがとう!」
 「もっと早く来て下さいよー。本当に大変だったんですから」
 「ああ、悪かったな。こっちも何とか終わった。負傷者は多いけど、誰も死んでない」
 「そうですか!」
 「キッチも小鉄も無事だぞ?」
 「はい!」

 みんなで笑った。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 吹雪が窓の外を見ている。
 六花が出て行ったので、心配しているのだろう。
 私は戦況が全て終息したことを感じていた。
 私はそういうことが出来るようになっていた。

 「大丈夫だよ、吹雪」

 抱き締めると吹雪が私を見た。
 六花と同じ、綺麗な薄青の瞳。
 
 「前に見た夢とは少し違うけどね。でも、全員無事。多分、竹流君が大きく成長したせいね」
 「うん」
 「これで保奈美さんが助かる可能性がまた高まった。サイレント・タイガーが早く誕生したからね。竹流君は本当に凄い人だよ」
 「うん」

 吹雪は何も分かってはいないだろうけど、私の言葉にうなずいてくれる。
 ニコニコし始めた。
 私を信頼してくれているのだろう。

 「六花ももちろん大丈夫。「紅六花」のみんなは、六花が向かったって聞いた途端に強くなった。押されていたけど、一気に盛り返したね」
 「そうなの!」
 「六花は少し向こうにいると思う。みんなが帰してくれないからね」
 「アハハハハハハ!」
 「二人で待ってよう。蓮花さんの研究所も終わったみたいだし、皇紀君の所も大丈夫」
 「うん!」
 「じゃあ、一江さんのところへ行こうか。あっちはまだ状況を把握してないだろうから」
 「うん!」

 二人でセグウェイに乗った。
 タカトラの第一外科部へ行く。
 いつもは途中からセグウェイを降りなきゃいけないけど、今日はいいだろう。

 一江さんが気付いて、廊下に出て私たちを見つけた。
 笑顔を作ると、一江さんも笑顔を作り、すぐに泣いた。
 吹雪と一緒に一江さんを両側から抱き締めた。

 「全部終わったよ!」
 「うん、ありがとう」
 「みんな凄かった」
 「そうなんだ」

 一江さんは部屋の中の大森さんにガッツポーズを見せた。
 大森さんも笑顔を作ってから泣いた。
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