上 下
2,533 / 2,840

石神皇紀暗殺計画

しおりを挟む
 タイニー・タイド。
 タイニー・タイドはアメリカ人だった。
 ある者から超能力を分け与えられ、そのことでアメリカの超能力者を狩る組織から逃げてきたのだ。
 「タイニー・タイド」という名は、その組織が呼称した名称だった。
 彼はこの世の、極小さな動きから、様々な未來視が出来るという超能力を持っていた。
 そして、タイニー・タイドは「業」様により見出された。
 「業」様はタイニー・タイドの能力をすぐに理解され、ご自分の率いる妖魔の中でも強大な力を持つ者と融合された。
 私が命じられ、特別に人間の記憶を残すように設定した。
 だからタイニー・タイドは単なるライカンスロープではなく、「業」様のために予言をもたらす特別な存在となった。

 タイニー・タイドの予言は我々には理解できないことが多い。
 だから、そのまま実行するしかなかった。

 どこの何という村に、桁違いに強大な《地獄の悪魔》と合体できる少年がいる。
 その少年は手足が無く、我々が行くと歌を歌っている。

 脚の不自由な宇宙飛行士の息子が、我々に大きな利益をもたらす存在になる。
 その父親は妖魔合体の宇宙実験の最中にイシガミに殺される。
 そのことで、息子はイシガミに対して激しい憎悪を抱く。
 
 日本の北海道の島で、500年に一度降臨する強大な妖魔が現われる。
 その妖魔を「業」様が取り込めば、更に強大な力を得ることになる。

 そのような予言をタイニー・タイドが「業」様に告げ、「業」様は即座に我々にその実行を命ずるのだ。
 また、タイニー・タイドは我々に新たな技術を告げることもあり、「業」様の《ゲート》は、タイニー・タイドによって飛躍的に能力が高まった。
 「業」様に、新たな力の操作法をお教えしたのだ。
 そして、タイニー・タイドの予言により、宇宙飛行士の息子がついに「業」様の悲願を達成しつつある。 
 
 私は自分の居城に《タイニー・タイド》を呼んだ。
 タイニー・タイドは予言の他にも、高度な解析能力を持っていたためだ。
 それにミハイルと違って「業」様の寵愛を受けながら、私に対するえげつない感情は持っていない。
 信頼できる相手として、これまでも様々な相談を持ち掛けていたのだ。

 今回は石神の周辺の人間を暗殺することをタイニー・タイドに話した。
 「業」様が度々、石神自身ではなく、家族や友人たちを狙う作戦を命じられるからだ。
 
 「タイニー・タイド、「業」様は度々石神自身ではなく、その周辺の人間を殺そうと考える。お前はこのことをどう思う?」
 「それはイシガミが大きく傷つき、そのことで更に組織的なダメージもある。そういうことでしょう」
 「ならば、石神が大事にする者かつ「虎」の軍での重要人物が一番望ましいということだな」
 「そうですね」

 私は自分の考えをタイニー・タイドに話した。

 「第一に、セイントだ。石神の親友であり、あいつの「セイントPMC」は近年強大な力を持つようになった。しかしセイントは自身が桁違いに強い。もしかすると石神以上だ」
 「そうですね。あいつは無理でしょう。今は手を出さない方がいい」

 「並んで御堂だ。セイントと同じく石神の親友だ。そして御堂は総理大臣になったばかりか、日本経済を完全に掌握し「虎」の軍に政治的、経済的に多大な貢献をするようになった。だが、御堂には強力なガーディアンがついている」
 「その通りです。《地獄の悪魔》ですら手が出せないようです。そちらも今はまだ」

 「次いで蓮花。石神の研究部門の中枢だ。しかしあやつも防備の強力な場所から滅多に出ない」
 「ああ。あの研究所はアラスカほどではないにしても、攻略は難しいでしょう。まあ、研究所自体を破壊出来れば、こちらの勝利も見えて来るのですが」
 「ああ、何度か強襲作戦は実行したのだがな。すべて失敗した」
 「イシガミも重視していますからね」

 先日、蓮花の研究所の外壁が崩壊した。
 丁度花岡栞と士王が日本へ来ていることで、「業」様が大規模な強襲作戦を命じられた。
 しかし、石神家によって完全に阻まれた。
 石神家があれほど強くなっているとは予想出来なかった。
 石神たちも、次々に進歩しているのだ。
 そういうこともタイニー・タイドと話し合った。
 あの強襲作戦が、我々の予想を遙かに上回ったいたことに、二人で驚いていた。
 やはり、私の考えとタイニー・タイドの考えは一致していた。

 「それでだ。石神皇紀はどうだろうか?」
 「フフフ」

 タイニー・タイドも同じ考えを抱いていたようだ。
 
 「石神皇紀はしょっちゅう外に出ている。しかも一人でいることが多い。あいつ自身も「花岡」を身に着けているが、他の兄弟ほどではない」
 「これまでも、何度かイシガミの双子を殺すことは成功しかけていましたね」
 「その通りだ。実際に石神の大事な人間を殺したことも何度もある。ただ、「虎」の軍に直接関わる人間はまだ成功していない」
 「成功させましょう」
 「そうだな。お前も可能だと思うか?」
 「ええ。予言は降りては来ませんが、現状を見る限り、本当に可能なことかと」

 石神皇紀にはそれほど強くないにも関わらず、ガーディアンは付いていない。
 ネズミの化け物にさえガーディアンを配していたのに、どうしたことかは分からない。
 しかも、石神皇紀は数々の戦闘で、ほとんど戦場に出ていない。
 それは、やはり戦闘力が低いことを示している。
 更に、精神的にも甘い奴なのはこれまでの観察から分かっている。
 およそ戦いに適した人間ではないのだ。
 冷徹さがまったく見られない。

 しかし、それでいて石神皇紀は石神から重要な役割を与えられている。
 各地の「虎」の軍の拠点を建設し、そこに石神皇紀自身が開発したと思われる、高度な防衛システムを置く。
 だから、もしも石神皇紀を殺すことが出来れば、「虎」の軍の拠点の建設は大きく遅れることになるだろう。
 また、石神皇紀だけしか扱えない機密事項もあるはずだ。
 石神皇紀を殺すことは、「虎」の軍にとって大きな痛手になるはずだった。

 私はタイニー・タイドと共に、石神皇紀の暗殺計画を練った。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました

深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...