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真夏の別荘 愛する者たちと Ⅲ 誕生日0

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 子どもたちが夕飯の準備を始める。
 桜花たちも一緒に手伝った。
 今日は当然バーベキューだ。
 しかし、海鮮が多い。
 栞や桜花たちのためだ。
 俺は鰻を焼いた。
 亜紀ちゃんが一緒に手伝う。
 ハーはハマグリの吸い物、皇紀はマグロの頭を焼き、ルーは桜花たちとひたすらに食材のカットと下ごしらえ。
 士王と吹雪がでかいマグロの頭を焼く皇紀を見ていた。
 響子は六花とオセロ。
 鷹は炊き込みご飯。
 栞は柳とフルーツポンチやデザートを作った。
 ロボは遊び疲れて寝てる。

 準備が出来て、夕飯にする。
 ロボは鷹に刺身をもらって喜んでいる。
 
 「ロボのお皿って変わったよね?」
 「ああ」

 俺は子どもたちがロボの皿を割ってしまって大変だったのだと話した。
 栞や桜花たちが大笑いしている。

 「石神さん、バーベキューでハマグリの吸い物っていいですね!」

 睡蓮が嬉しそうに言った。
 桜花と椿姫もうなずいている。

 「俺が好きだからな」
 「私たちのために、和食にしてくれたんですね」
 「まあ、そういうこともな」

 みんな好きな物を焼いて食べている。
 子どもたちは相変わらずだ。

 「あの子たちも相変わらずだねぇ」

 栞が半分呆れて言う。

 「まあな。前はちょっと食費が心配な時期もあったけどなぁ」
 「ああ、双子ちゃんがやらかしたもんね」
 「俺と栞が最初に聞いた時はびっくりしたもんな」
 「うんうん! あなたのお小遣いで500万円に増やしてたって」

 鷹がホタテの味噌バターを作ってくれた。

 「美味いな!」
 「ありがとうございます」
 「結婚してくれ!」
 「はい、いつでも」

 響子が俺の腹をつねった。

 「タカトラぁ!」
 「結婚してくれ!」
 「うん!」

 一発で機嫌が直り、みんなが笑った。

 士王と吹雪が子どもたちのバーベキュー台に行った。
 栞が止めようとしたが、俺が大丈夫だと言った。

 士王と吹雪が近付くのは全員が気付いていた。
 争って食べているのは変わらない。
 亜紀ちゃんんの強烈な旋風脚に全員がのけぞっている。
 栞が食べるのを辞めてずっと見ている。

 台の手前で士王たちは立ち止まって、タイミングを見ている。
 流石にどういうバーベキュー台かは分かっている。
 無防備に飛び込めば危険だ。
 子どもたちは笑っている。
 士王と吹雪が来たのを分かっているからだ。
 俺はどうなるのか栞と一緒に見ていた。
 六花もニコニコして伊勢海老を頬張りながら見ている。
 皇紀が亜紀ちゃんのブロウを受け止め、横にずらした。
 その隙に、士王が亜紀ちゃんの背中に回って持っていた箸を伸ばした。
 
 「ワハハハハハハ!」

 ハーが笑いながら士王を突き飛ばした。
 士王は思わず後ろに倒れる。
 士王は受け身も出来るので、顎を引いて後頭部を守って倒れた。
 その瞬間に吹雪が飛び込んで、ルーに抱き留められた。
 そのまま地面に寝かされる。

 「ワハハハハハハ!」

 士王も吹雪も笑顔だ。
 二人はもう一度離れて様子を観始めた。
 手加減されていることが分かり、栞ももう安心して見ている。
 士王がルーに抱き着いた。
 あいつ、もう肉を喰うよりもオッパイに走りやがった。
 栞も気付いて呆れた顔をしていた。
 今度は強めに士王が押し倒される。
 吹雪がその同時に柳に抱き着いた。
 あいつも士王に影響されている。
 柳がびっくりして振り払った。
 吹雪は思わず振り回されて飛んだ。
 加減した投げではない。
 慌てた柳が吹っ飛ばしたのだ。
 数メートル飛んだ吹雪は、駆け寄ったロボに空中で助けられ、地面に両足で立った。
 ロボはそのまま柳に「ケンタッキー・フライド・ダブルバーガーキック」を見舞った。
 柳がぶっ飛ぶ。

 「ごめんってぇー!」

 吹雪はビックリしていたが、ロボが助けてくれたのが分かって、ニコニコしてロボに礼を言い、身体を撫でた。

 六花が乗り出した。

 「いくぞぉぉぉーーー!」

 近接戦闘最強の六花は子どもたちをぶちのめし、士王と吹雪に肉を喰わせた。
 みんなが笑った。
 もちろん子どもたちも敢えて六花に飛ばされたのだ。
 他愛無い出来事だ。

 「こんなに一杯食べるものがあるのにねぇ」
 「まったくだ」

 まあ、争って食べるのが楽しいとしか言いようがない。
 俺はゆっくり喰うのが好きなのだが。
 いつも通り食材が見事に無くなり、夕飯を終えた。
 俺は先に桜花たちを風呂に入れ、次に響子、栞や鷹、六花と一緒に入った。
 士王と吹雪も一緒で、のぼせる前に先に上がらせた。
 士王は六花のオッパイに夢中で、六花から「まだまだ甘い」と説教された。
 何がどう甘いのか分からん。

 片づけを終えた子どもたちも風呂に入り、みんなで庭で花火をした。
 響子が士王と吹雪を青い花火に誘って楽しんでいた。
 他のみんなも楽しそうに花火をしている。
 俺はウッドデッキでアイスティを飲みながら眺めていた。

 「タカさんも一緒にやりましょうよ!」

 亜紀ちゃんが誘いに来た。
 俺は笑って今日はいいと言った。
 俺はいつの間にか、昔の思い出に浸っていた。






 花火も終え、屋上の「幻想空間」にみんなで上がる。
 士王と吹雪は先に寝かせた。

 「あー! やっぱりここは最高だね!」
 
 栞が叫び、桜花たちも感動していた。
 しばしの間、みんなで雰囲気を味わう。
 俺と栞、鷹、亜紀ちゃんは冷酒を呑み、六花はハイネケン。
 桜花たちは梅酒、皇紀と双子はバドワイザーだ。
 ロボも冷酒。

 今日もつまみが多い。
 雪野ナスと雪野ポテト、大量の唐揚げ、シシトウとベーコンの炒め物、アスパラの肉巻き、豆腐サラダ、それにチェイサー替わりのフルーツポンチ等々。

 「みんな本当によく食べるよね」

 栞がまた呆れて言う。
 子どもたちは笑っている。

 「この人がお金があるからいいけどさ。毎日美味しい物が食べれるよね」
 「最初からタカさんは、美味しい物を食べさせてくれましたよね?」
 「そんなこともねぇだろう」
 「そうですよ! だから私たち、本当に嬉しくて」
 「なんだよ」
 「だって! 最初の瞬間から、タカさんが私たちを大事に思ってくれてることが分かったんですもん!」

 亜紀ちゃんがいつになく声高に言う。

 「まあ、大事なのは確かだけどな」
 「そうですよ!」

 亜紀ちゃんが嬉しそうに俺の背中に回って肩を叩き出した。

 「俺の家が貧乏だったのは知ってるよな?」
 「ええ」
 「だから、大事な人間に美味い物を喰わせることはなかなか出来なかった」
 「え、でもみんなそんなタカさんが大好きだったじゃないですか」
 「まあ、有難いことにな」
 「ほら、保奈美さんと言った月見草の群生地でも! 居酒屋で美味しい物を」
 「ああ、そんなこともあったな」
 
 亜紀ちゃんが雷雨の中で保奈美が寒さで震えた時の缶詰とか言い出した。
 南とのラーメンや、ミユキと病院の屋上で食べた焼き鳥など。
 よく覚えてやがる。
 俺も亜紀ちゃんの話で、また懐かしく思い出に浸った。

 「あ! 来ましたね!」
 「なんだよ!」
 「さあ、今日はそのお話を!」
 「てめぇ!」

 みんなが拍手した。
 響子が俺の足に寝転んで頭を乗せた。

 「しょうがねぇな!」

 俺は話し出した。
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