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あの日、あの時: 過激派襲撃事件
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佐野さんの話が終わった。
「その話は本当ですか」
思わず聞き返してしまった。
俺は確かに驚いてはいたが、実際にはやけに納得出来る話だった。
しかしやはりあまりにも驚きが大きく、そういう言葉になった。
「本当だ。和久井署長から聞いたことだが、あの人は本当に信頼出来る人だ。あの和久井署長が聞いたからには、それは真実だったのだろう」
「そうですね、すみませんでした」
俺は小学4年生の時にあの街に引っ越した。
俺の家は貧しかったはずだが、どういうことか、あの街で一軒家を購入した。
周囲は安い新興の建売住宅ばかりで、うちももちろんそれほど大きな家ではなかった。
しかし、うちのあの状況で、どうして一軒家が購入できたものか。
今から思えば、もしかしたら小島将軍が親父に与えてくれたのではないか。
子どもの俺にはそういう事情は一切知らされていない。
お袋に聞こうにも、もうこの世にはいない。
それにあの周囲の環境だ。
人殺しを何とも思っていない最悪のヤクザ組織が幾つもあった。
それに何故か過激派の中でも最悪の連中が隠れ住んでいた。
またやけにワルが集まる地域で、狂暴な愚連隊も多かった。
結果的にだが、そいつらは俺と衝突し、全て消え去った。
ヤクザたちは様々な理由で俺とぶつかって、一つずつ潰れて行った。
過激派は俺が警察署で取り調べを受けている最中に襲ってきた。
愚連隊とは何度も揉め事を起こし、俺個人や「ルート20」との抗争によって消滅していった。
まあ、その他にも俺自身のことで大事件もあったのだが。
「トラの隣の家の柴野家でな。お前が幼い女の子を守って腹を斬られただろう?」
「はい、モモですね」
「あの時から、お前が入院すると毎回見舞いに行った」
「はい」
「お前の担当医の南条先生からよ、お前が20歳まで生きられないのだと聞いて驚いたよ」
「ええ、東大病院の偉い医者から言われましたからね」
「とてもじゃねぇが信じられなかった。だって、お前、トラだぜ? こんなに暴れ回って大事件ばかり起こして、武闘派ヤクザもビビりまくる赤虎だ! どうしてお前が死ぬんだよ!」
「アハハハハハハ!」
まあ、その通りだ。
病気ばかりしていたのは確かだが、そうでない時の俺は頑健だった。
「まあ、南条先生にその話を聞いてさ。ちょっとはお前に優しくしてやろうと思ったんだ」
「え?」
「数日はな。すぐにお前はまた大事件を起こし、俺はお前が死ぬなんて間違いだって分かったぜ」
「ワハハハハハハハハ!」
本当にいい方だ。
子どもたちも笑っていた。
「お前のせいで俺は大忙しだったよ!」
「本当に申し訳ないです」
「まったくだ!」
みんなが笑う。
俺の「石神家」の血が立ち上がる時のために、小島将軍が全部用意していたということなのか。
あの当時は何とも思っていなかったが、今から思えば確かに異常だ。
シノギもろくに出来ないだろうあんな田舎町で、どうしてヤクザがあんなに集まっていたのか。
恐らく小島将軍からどこかを経由して、組に資金が流れていたのだろう。
過激派たちも、どういう理由かで誘導されて、あの街に拠点を構えたのだ。
もしかしたら狂暴な愚連隊連中も集められたのだろうか。
「まあ、退屈はまったくしなかったし、今から思えば楽しかったよ」
「そうですか」
「あの過激派の襲撃を除けばな!」
「ああ、あれはきつかったですよね!」
「死ぬかと思った、俺」
「ワハハハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが俺をジッと見ていた。
言葉にしなくても分かる。
聞きたいのだ。
だが今日は俺にいつものようにねだることは出来ない。
ナゾ物体を真夜が掘り起こし、更に佐野さんがうちに来てしまった切っ掛けを作った張本人だ。
「タカさん、そのお話って聞いてないよね?」
ハーが言った。
後ろでハーの背中を亜紀ちゃんがつっついていた。
「なんだ、トラ、話してないのか?」
「ええ、別に俺の体験を全部話すつもりもありませんし」
「えー、聞きたいなー」
背をつっつかれてルーが言う。
「トラ、話してやれよ」
「はい」
佐野さんが言うんじゃしょうがねぇ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
あれは俺が高校3年生の4月だった。
珍しく「ルート20」に挑んできた横浜の暴走族「百鬼会」の連中を追っていた時だ。
俺たち「ルート20」は周辺で最大のチームになっており、もうどこの族も逆らうことが無くなっていた。
そんな中で、「百鬼会」が横浜の族と連合を作り、俺たちに挑んできた。
敵は総勢400名にものぼり、俺たち「ルート20」500名と張り合う規模になっていた。
相模湖へのパレードを狙われ、「百鬼会」100名が俺たちを襲撃した。
俺たちの戦力を削るための一撃離脱を計画していたようだが、初手からうちの特攻隊が対応し、100名は何も出来ずに遁走する。
特攻隊の1番から5番隊が追撃し、俺も前に出た。
6番隊から8番隊が本体を護衛しながら、集合場所の相模湖畔で待機する。
「トラ! 20台が固まってる!」
「おう!」
それを保奈美の5番隊が追い掛けており、俺も一緒に20台を追った。
そいつらは津久井湖へ向かい、三井の山方面へ逃げていく。
俺のRZが追い抜き、先頭のバイクをステンレス棒で転がした。
後続の連中が慌ててハンドルを切るが半分が巻き込まれ、残りの連中も停車する。
5番隊が全員をぶちのめしていく。
「あ!」
1台が脇道に逃げた。
俺と保奈美が追いかける。
そいつは山腹の別荘の敷地に入り、そのまま玄関へ突っ込んだ。
別荘は夏場に金持ちが使うもので、今の時期は誰もいないはずだった。
しかし、明かりが点いて、中から3人の男たちが出て来る。
「なんだ、てめぇら!」
「あ、すいません! すぐに出て行きます!」
俺が謝って、突っ込んだバカを連れ出そうとすると、2階の窓が開いた。
「襲撃だぁー!」
「え、違いますって!」
そいつは火を点けた火炎瓶を俺たちに向かって投げた。
いきなりの展開に俺も焦った。
「おい!」
保奈美を下がらせ、俺はステンレス棒を握って建物の中へ突っ込んでいく。
出てきた男たちを数秒で沈める。
1階は広い部屋で、左に上に昇る階段があった。
駆け上がると先ほどの男が鉛パイプの口を俺に向けていた。
ヤバいプレッシャーを感じ、横に飛んだ。
散弾が俺の脇を通り抜ける。
「なんだ、てめぇ!」
手製の銃だ!
構造的に、単発のはずだ。
俺は瞬時に判断し、男に突っ込む。
顔面にフルブロウをぶっ込んだ男の身体が浮き、開いた広い窓を抜けてベランダから落ちて行った。
地面にぶつかる音がして、俺はベランダから保奈美に叫んだ。
「そいつと下の連中を拘束しろ!」
「分かった!」
保奈美は素早くバイクからアルミテープを取り出し、男たちを縛って行く。
俺たちは敵の無力化について、アルミテープを手足に巻き付けるという方法を見出していた。
ロープで縛るよりも断然早く簡単だ。
俺は2階の部屋を探りながら、他に誰かが潜んでいないかを見ていった。
1階に降り、広間を見渡す。
「なんだ、こりゃ」
木箱に火炎瓶が大量に積み上げられていた。
今はコルク栓が嵌められており、中へ突っ込む布と一緒に梱包されている。
他に黒い粉が大量にあり、先ほど2階で俺に向けられた、底を閉じた鉛パイプも大量にあった。
手製銃と火薬か。
俺たちは、偶然とんでもない過激派のアジトを発見してしまったようだ。
無線で四輪を呼び、別荘にいた過激派4人のうちの一人、2階にいた男を乗せ、警察署に連れて行く。
槙野と1番隊に拘束した4人の男の見張りを頼み、俺は車に乗せた一人の護送に付き合った。
本隊は街までパレードで戻ってきて解散した。
俺はまた厄介事に関わってしまった予感がした。
「その話は本当ですか」
思わず聞き返してしまった。
俺は確かに驚いてはいたが、実際にはやけに納得出来る話だった。
しかしやはりあまりにも驚きが大きく、そういう言葉になった。
「本当だ。和久井署長から聞いたことだが、あの人は本当に信頼出来る人だ。あの和久井署長が聞いたからには、それは真実だったのだろう」
「そうですね、すみませんでした」
俺は小学4年生の時にあの街に引っ越した。
俺の家は貧しかったはずだが、どういうことか、あの街で一軒家を購入した。
周囲は安い新興の建売住宅ばかりで、うちももちろんそれほど大きな家ではなかった。
しかし、うちのあの状況で、どうして一軒家が購入できたものか。
今から思えば、もしかしたら小島将軍が親父に与えてくれたのではないか。
子どもの俺にはそういう事情は一切知らされていない。
お袋に聞こうにも、もうこの世にはいない。
それにあの周囲の環境だ。
人殺しを何とも思っていない最悪のヤクザ組織が幾つもあった。
それに何故か過激派の中でも最悪の連中が隠れ住んでいた。
またやけにワルが集まる地域で、狂暴な愚連隊も多かった。
結果的にだが、そいつらは俺と衝突し、全て消え去った。
ヤクザたちは様々な理由で俺とぶつかって、一つずつ潰れて行った。
過激派は俺が警察署で取り調べを受けている最中に襲ってきた。
愚連隊とは何度も揉め事を起こし、俺個人や「ルート20」との抗争によって消滅していった。
まあ、その他にも俺自身のことで大事件もあったのだが。
「トラの隣の家の柴野家でな。お前が幼い女の子を守って腹を斬られただろう?」
「はい、モモですね」
「あの時から、お前が入院すると毎回見舞いに行った」
「はい」
「お前の担当医の南条先生からよ、お前が20歳まで生きられないのだと聞いて驚いたよ」
「ええ、東大病院の偉い医者から言われましたからね」
「とてもじゃねぇが信じられなかった。だって、お前、トラだぜ? こんなに暴れ回って大事件ばかり起こして、武闘派ヤクザもビビりまくる赤虎だ! どうしてお前が死ぬんだよ!」
「アハハハハハハ!」
まあ、その通りだ。
病気ばかりしていたのは確かだが、そうでない時の俺は頑健だった。
「まあ、南条先生にその話を聞いてさ。ちょっとはお前に優しくしてやろうと思ったんだ」
「え?」
「数日はな。すぐにお前はまた大事件を起こし、俺はお前が死ぬなんて間違いだって分かったぜ」
「ワハハハハハハハハ!」
本当にいい方だ。
子どもたちも笑っていた。
「お前のせいで俺は大忙しだったよ!」
「本当に申し訳ないです」
「まったくだ!」
みんなが笑う。
俺の「石神家」の血が立ち上がる時のために、小島将軍が全部用意していたということなのか。
あの当時は何とも思っていなかったが、今から思えば確かに異常だ。
シノギもろくに出来ないだろうあんな田舎町で、どうしてヤクザがあんなに集まっていたのか。
恐らく小島将軍からどこかを経由して、組に資金が流れていたのだろう。
過激派たちも、どういう理由かで誘導されて、あの街に拠点を構えたのだ。
もしかしたら狂暴な愚連隊連中も集められたのだろうか。
「まあ、退屈はまったくしなかったし、今から思えば楽しかったよ」
「そうですか」
「あの過激派の襲撃を除けばな!」
「ああ、あれはきつかったですよね!」
「死ぬかと思った、俺」
「ワハハハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが俺をジッと見ていた。
言葉にしなくても分かる。
聞きたいのだ。
だが今日は俺にいつものようにねだることは出来ない。
ナゾ物体を真夜が掘り起こし、更に佐野さんがうちに来てしまった切っ掛けを作った張本人だ。
「タカさん、そのお話って聞いてないよね?」
ハーが言った。
後ろでハーの背中を亜紀ちゃんがつっついていた。
「なんだ、トラ、話してないのか?」
「ええ、別に俺の体験を全部話すつもりもありませんし」
「えー、聞きたいなー」
背をつっつかれてルーが言う。
「トラ、話してやれよ」
「はい」
佐野さんが言うんじゃしょうがねぇ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
あれは俺が高校3年生の4月だった。
珍しく「ルート20」に挑んできた横浜の暴走族「百鬼会」の連中を追っていた時だ。
俺たち「ルート20」は周辺で最大のチームになっており、もうどこの族も逆らうことが無くなっていた。
そんな中で、「百鬼会」が横浜の族と連合を作り、俺たちに挑んできた。
敵は総勢400名にものぼり、俺たち「ルート20」500名と張り合う規模になっていた。
相模湖へのパレードを狙われ、「百鬼会」100名が俺たちを襲撃した。
俺たちの戦力を削るための一撃離脱を計画していたようだが、初手からうちの特攻隊が対応し、100名は何も出来ずに遁走する。
特攻隊の1番から5番隊が追撃し、俺も前に出た。
6番隊から8番隊が本体を護衛しながら、集合場所の相模湖畔で待機する。
「トラ! 20台が固まってる!」
「おう!」
それを保奈美の5番隊が追い掛けており、俺も一緒に20台を追った。
そいつらは津久井湖へ向かい、三井の山方面へ逃げていく。
俺のRZが追い抜き、先頭のバイクをステンレス棒で転がした。
後続の連中が慌ててハンドルを切るが半分が巻き込まれ、残りの連中も停車する。
5番隊が全員をぶちのめしていく。
「あ!」
1台が脇道に逃げた。
俺と保奈美が追いかける。
そいつは山腹の別荘の敷地に入り、そのまま玄関へ突っ込んだ。
別荘は夏場に金持ちが使うもので、今の時期は誰もいないはずだった。
しかし、明かりが点いて、中から3人の男たちが出て来る。
「なんだ、てめぇら!」
「あ、すいません! すぐに出て行きます!」
俺が謝って、突っ込んだバカを連れ出そうとすると、2階の窓が開いた。
「襲撃だぁー!」
「え、違いますって!」
そいつは火を点けた火炎瓶を俺たちに向かって投げた。
いきなりの展開に俺も焦った。
「おい!」
保奈美を下がらせ、俺はステンレス棒を握って建物の中へ突っ込んでいく。
出てきた男たちを数秒で沈める。
1階は広い部屋で、左に上に昇る階段があった。
駆け上がると先ほどの男が鉛パイプの口を俺に向けていた。
ヤバいプレッシャーを感じ、横に飛んだ。
散弾が俺の脇を通り抜ける。
「なんだ、てめぇ!」
手製の銃だ!
構造的に、単発のはずだ。
俺は瞬時に判断し、男に突っ込む。
顔面にフルブロウをぶっ込んだ男の身体が浮き、開いた広い窓を抜けてベランダから落ちて行った。
地面にぶつかる音がして、俺はベランダから保奈美に叫んだ。
「そいつと下の連中を拘束しろ!」
「分かった!」
保奈美は素早くバイクからアルミテープを取り出し、男たちを縛って行く。
俺たちは敵の無力化について、アルミテープを手足に巻き付けるという方法を見出していた。
ロープで縛るよりも断然早く簡単だ。
俺は2階の部屋を探りながら、他に誰かが潜んでいないかを見ていった。
1階に降り、広間を見渡す。
「なんだ、こりゃ」
木箱に火炎瓶が大量に積み上げられていた。
今はコルク栓が嵌められており、中へ突っ込む布と一緒に梱包されている。
他に黒い粉が大量にあり、先ほど2階で俺に向けられた、底を閉じた鉛パイプも大量にあった。
手製銃と火薬か。
俺たちは、偶然とんでもない過激派のアジトを発見してしまったようだ。
無線で四輪を呼び、別荘にいた過激派4人のうちの一人、2階にいた男を乗せ、警察署に連れて行く。
槙野と1番隊に拘束した4人の男の見張りを頼み、俺は車に乗せた一人の護送に付き合った。
本隊は街までパレードで戻ってきて解散した。
俺はまた厄介事に関わってしまった予感がした。
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