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亜紀と柳のお留守番

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 タカさんたちが盛岡の石神家本家へ出発した。
 ロボも付いて行ったので、今回は私と柳さんは留守番だ。
 皇紀はまたパムッカレ。
 こういう時に「アドヴェロス」などで何かあるといけないので、二人とも予定は入れていない。
 柳さんと鍛錬をするくらいだが、真面目な柳さんが、庭の雑草を取りたいと言って来た。

 「夏場になって結構生えてるの」
 「じゃあ、やりましょうか!」

 よく草むしりはやる。
 タカさんが庭を大事にしているので、自然にみんなで気付いた時にやっている。
 柳さんが鍛錬の休憩がてら、一番やる。
 柳さんは植物が大好きで、タカさんが育てている草花を大事にしている。
 もちろん他のみんなもやるし、タカさんも時々やっている。
 私が家事全般、特に掃除の全体統括をしているので、定期的に号令を掛けて全員で取り掛かる。
 でも、最近は柳さん主導でやることが多い。
 柳さんは草むしりのエキスパートになっていた。
 
 草むしりは無心になる。
 除草剤はダメだ。
 ちゃんとした植栽にも影響が出るし、表面的に枯れてもまたすぐに出て来る。
 やっぱり地面の下の根っこから引き抜かないとダメなのだ。

 「タンポポだ! 柳さん、タンポポも抜いていいですよね!」
 「うん、地面の養分をどんどん食べちゃうから。みんな抜いてね」
 「はーい」

 タンポポは厄介な雑草だ。
 地中の根は太く長い。
 しかも地上部分は地面からすぐに葉が拡がり、普通の抜き方をすると地上部分だけ駆除することになる。
 そうするとすぐにまた根から生えて来るのだ。

 「覚悟しろよー!」
 
 私はタンポポの周囲の地面を少し削り、地中の太い根を掴んだ。
 タンポポの根は真直ぐに伸びていることが多い。

 「エイ!」

 指で掴んで引き抜いた。

 「ギャハハハハハハハ!」
 「どうしたの?」

 抜いた根を柳さんに見せた。

 「アハハハハハハハハ!」

 根が途中で二本に分かれ、それがまるでポーズを取っているように交差していた。
 「ウッフン」という感じだ。
 
 結構タンポポが生えていた。
 うちの庭は栄養価が高いのか。
 柳さんもタンポポを抜いた。
 
 「ワァー!」
 「どうしました?」

 柳さんの抜いたタンポポを見た。

 「ギャハハハハハハハ!」
 「もう!」

 それも二本の足のように分かれ、付け根にちっちゃいオチンチンが付いていた。

 「やりましたね!」
 「亜紀ちゃん、やめて!」

 タンポポが結構ある。
 どんどん抜いて行った。

 「あ、こいつ根を拡げてやがる」
 
 たまにそういう奴がいる。
 普通はまっすぐなのだが。
 慎重に掘り進んで抜いた。

 「あんだ、こりゃ」

 八本脚になっていた。
 
 「タコ?」
 
 双子の花壇の近くでは、ウンコ型のタンポポの根が育っていた。
 結構な量になった。

 「折角だからたんぽぽコーヒーでも作ってみようか?」
 「いいですね!」

 タンポポは別個に集めた。
 もちろん他にもスミレやクローバー、ドクダミやスギナ、ハコベなども一杯ある。
 雑草はコッコたちの餌として使える。

 夢中でやっていたら、真夜たちが来た。
 昼食を一緒にと呼んでいたのだ。

 「草むしりですかー?」
 「うん、ごめんね! 夢中になってて時間に気付かなかった!」
 「いいですよ!」

 真夜と真昼を中へ入れて、リヴィングへ案内した。
 私と柳さんは一度シャワーを浴びて着替えた。

 「大変ですね」
 「うちって庭が広いからね」
 「アハハハハハハハ」

 元の家も広いけど、いくつも他の家をくっつけちゃったからなー。

 四人で鴨南蛮のつけ蕎麦を作った。
 他にも各種天ぷらを揚げる。
 梅田精肉店さんが、野生の鴨肉をくれた。
 タカさんが私たちで食べるように言ってくれた。
 優しいぃぃぃー!
 鴨のコンフィも作った。
 
 私が注意しながらネギに焼き目を付け、真夜が出し汁を、真昼が天ぷらを作る。
 柳さんはさっきのタンポポでたんぽぽコーヒーを作ろうとしていた。
 オチンチンたんぽぽを見せると、真夜と真昼が爆笑していた。

 四人で昼食を食べる。

 「おいしぃー!」
 
 蕎麦が幾らでも食べられる。
 出し汁は一杯作ったので、鴨やネギを食べながら追加して、またどんどん食べた。
 真昼の天ぷらも美味しい。
 海老、マイタケ、ナス、シシトウ、タマネギやゴボウとニンジンのかき揚げ等々。
 食後に柳さんが作ったたんぽぽコーヒーをみんなで飲んだ。

 「あ、美味しい!」

 真夜と真昼が気に入ったようだ。

 「ほんとにコーヒーみたいですね!」
 「うん、私も久し振りに飲んだ」
 「前にも作ったことが?」
 「うちの田舎でね。お母さんが作ってくれたの」
 「へぇー!」

 本当にコーヒーの味がする。
 少し違うが、これも素朴でいい感じだ。

 「良かったら、草むしりを手伝いましょうか?」
 「真夜、ほんとに!」
 「ええ、どうせ暇ですし。こんなに美味しい物をご馳走になりましたし」
 「ありがとー!」

 午前中もずっとやっていたが、やっぱり広い庭なのでまだ残っている。
 一度やり始めると、折角なので全部綺麗にしたくなっていた。
 暑いので着替えのジャージを貸した。
 柳さんの。
 私のは胸のサイズが合わない……
 真昼にも……

 午後からも四人で草むしりをした。
 四人掛かりなので、どんどん進んだ。
 ありがたい。

 私は午前中に集めた雑草をコッコたちの所へ運んだ。

 「こんにちはー」
 「こんにちはー」

 どっさりと雑草を出すと、コッコたちが喜んでくれた。

 「午後もまた持って来るね」
 「こんにちはー」

 家に帰りながら、真夜たちの優しさに顔が自然に綻んだ。
 この暑い中を手伝ってくれるなんて! 
 本当に優しい二人だ!

 そしてタカさんたちのことを思った。
 タカさんは石神家本家に行くといつも大変な目に遭う。

 「今回は無事で済みますようにー」

 タカさんの顔が浮かんだ。

 「ん?」

 タカさんの顔が焦っていた。

 「なんだ?」
 
 タカさんの顔が怒っていた。

 「!」

 急いで家に帰った。





 三人が呆然と庭に立っていた。

 「ど、どうした!」

 柳さんが真夜の近くの地面を指差していた。
 なんか、水晶のように尖ったものが地面に見えた。

 「……」
 「亜紀ちゃん、これ……」
 「……」
 「亜紀さん、ゴメンナサイ……」
 「……」
 
 みんなで掘ってみた。
 四角錘を二つ合わせた菱形のなんかが出て来た。
 高さ4メートルの……
 水晶のような物質だが、絶対違う。
 見る角度によっていろんな色に輝いて見える。
 それに、中心になんか剣みたいなものが入ってる。

 写真を撮って、麗星さんに送った。
 1時間して、電話が来た。

 「り、り、」
 「なんですか?」

 「り、《リア・ファル(Lia Fail 運命の石)と思われます!」
 「!」
 「大変なものでございます! 石神様は?」
 「今、出掛けてて明後日に帰ります」
 「す、すぐにお知らせを!」
 「待って下さい!」

 必死でお願いして、タカさんが戻ってから私が話すことにした。

 「今は石神家本家ですので、心が動揺すると命に関わるかと!」
 「さようでございますか。何かありましたらご協力いたしますので」
 「ありがとうございます!」

 みんなが私を見てた。

 「リア・ファルなんだって」
 「亜紀ちゃん、何それ?」

 私も分からないので、ネットで検索した。
 伝説のトゥアハ・デ・ダナーン神族がもたらした秘宝なんだって。






 た、たいへんだぁー。
 どうすんの、これ?
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