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「般若」オープン計画 Ⅱ
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家に帰って、亜紀ちゃんに明日の晩に青や涼ちゃん、カスミが来ることを伝えると大喜びした。
「盆と正月が一緒に来ましたね!」
「なんでだよ!」
『虎は孤高に』で誰か来客が来ることを、亜紀ちゃんは喜ぶ。
少しでも多くの人間と観るのが好きなのだ。
よく分からない感覚だが、そのために近所の早乙女たちや河合さん、左門たちを呼んだり、たまに一江や大森が加わったりする。
もちろんいつも以上の大騒ぎになる。
亜紀ちゃんの興奮が増すからだ。
主役の山口君を呼べと、何十回も頼まれているが実現させていない。
前に興奮した亜紀ちゃんがゴールドムントのスピーカーを破り掛けたことがあるからだ。
必死に皇紀が庇って事なきを得たが、皇紀の頬骨がへし折れて酷い顔になった。
もちろん叱りはしたが、その後もずっと地下の音響ルームで観賞会を続けている。
あんなにも毎週楽しみにしている亜紀ちゃんから取り上げることは出来ない。
他の子どもたちも分かっている。
以前は毎週子どもたちと映画鑑賞を続けていた。
俺が映画を選び、みんなで観て行った。
映像芸術を味わう習慣が出来て行った。
その後みんな忙しくなり、辞めてしまった。
亜紀ちゃんのお陰で、また毎週みんなで集まって一つの作品を鑑賞する機会が出来た。
口に出してはいないが、みんな懐かしく思っているに違いない。
亜紀ちゃんの大興奮に時々文句も言うが、本気ではない。
みんなで楽しんでいるのだ。
その証拠に、初めてうちで一緒に『虎は孤高に』を観る人間たちは最初は当然驚く。
しかし、すぐに一緒に楽しんでくれるようになる。
俺たちが本気で楽しんでいることが伝わるからだ。
静かに独りで鑑賞するのもいい。
でも、ああやって大騒ぎしてみんなで楽しむのもいいものだ。
悲しいシーンでは、ちゃんと亜紀ちゃんも大人しく観る。
その後に大泣きして煩いのだが。
それと、あのテーマ曲を大声で歌うのはやめて……
ロボも一緒に吼えるのはやめて……
6月最終の金曜日。
一江がスケジュールを調整し、早目に上がれることになった。
もちろん一江には「般若」のことを全部話している。
「「般若」は大変なことになりますよね?」
「そうなんだよ。今からあのお祭り騒ぎだろう? オープンしたら大混乱だぜ」
「誰も入れなくなっちゃいますよね」
「まあ、常連は席を用意してるんだけど、そうもいかないよなぁ」
そのうち必ず恨まれることになる。
だから、常連も入りにくくなるだろう。
明恵和尚なんかは平然と通うだろうが。
「それに3人で大丈夫なんですか?」
「まあ計算ではな。でも亜紀ちゃんが「カタ研」のメンバーで応援のバイトを手配してくれてる」
「そうなんですか!」
「とにかくカスミが優秀だから、料理なんかはどんどん作れるんだよ。だから青と涼ちゃんがホールに入ればな。まあ青にはコーヒーを淹れてもらいたいんだが」
「なるほどー」
「バイトが2人も入れば余裕だな」
「そうですね」
その見通しが甘いことを後に知るのだが。
俺もレストラン経営はしたこともねぇ。
俺は5時には家に戻れた。
青たちを病院に呼んで、一緒にハマーに乗せた。
「おい、スゴイ車だな」
「ああ、うちは家族が多いからな。でかい車を買ったんだよ」
「おお、そうだったな!」
「石神さん、今日は本当に宜しくお願いします」
「うん、涼ちゃんも遠慮しないでな。全然気を遣う家じゃないしよ」
「はい!」
「カスミは大丈夫だな!」
「ウフフフ。まあ楽しみにしてたんですよ?」
「そうかよ!」
カスミは非常に高度な知性を持っている。
だから人間の機微の理解はもちろん、感情も持っている。
ジョークも飛ばせる。
性格の付与もあるが、他人との関係性でよりよい関係を築こうとする。
ディディは乾さんのことを愛し大事にし、お客たちには丁寧に対応し、また乾さんの友人たちも大事にするようになった。
その人がどうすれば喜んでくれるのかを理解し、嫌がることはしないようにする。
もちろん甘やかすだけではなく、凛としている部分も持っている。
自分を嫌っておらず大事にしようとしていると分かると、誰でもその「人間」を好きになる。
カスミは明るい女子高生という感じに性格を与えた。
まあ、今どきのJKではないが。
誰とでも仲良くなり、笑顔を振りまく若い子。
みんなから可愛がってもらえる子。
素直で何でも楽しもうとする子。
そして能力は高く、与えられた仕事は高度にこなしていく。
そのギャップもまた良い印象に映ることを願って、蓮花と一緒に作った。
何故JKにしたのかは青にも話していない。
15分ほどでうちに着いた。
リモコンで門を開ける。
「おい、赤虎……」
「おう、着いたぞ」
「石神さん……」
「ちょっと待ってな、涼ちゃん。門がすぐ開くからさ」
二人が黙り込んだ。
カスミはニコニコしている。
門が完全に開き(総プラチナだぞー)、ハマーを中へ入れた。
玄関の前で一度止めて青たちを降ろす。
「「……」」
「素敵なお宅ですね!」
「そうか!」
子どもたちが降りて来て、青たちを中へ入れる。
ロボもすぐに慣れて青たちを歓迎する。
俺の僅かな匂いを青たちから感じているのかもしれない。
この人間たちが俺の大事な仲間なのだと認識しているのだろう。
俺はハマーをガレージに入れて家に入った。
ロボが待っていて抱き上げて上がる。
青と涼ちゃんとカスミがリヴィングのテーブルに座っている。
もうすぐに夕食なので、茶も出さない。
荷物は子どもたちが預かって部屋へ運んでいる。
「赤虎、お前こんな家に住んでたんだな」
「まーなー」
「すげぇな」
「うーん、いろいろあってよ」
「そうなのか」
「ほら、双子がお前の金を運用して80億円にしただろ?」
「あ、ああ!」
「俺、今数千兆円を超えて、えーとルー! 今俺幾ら持ってんだ?」
「大分新しい基地とかで使っちゃってるから、大体2京ドルくらいかな」
「おう、サンキュー!」
「「……」」
「な?」
「「……」」
「ああ、俺別にでかい家なんかいらなかったんだけどさ。ちょっと事情があって元の家の周辺とかもらっちゃってさ」
「な、なんだ?」
「それで今じゃこんなになってんの。まあ、後でちょっと見せるけどさ」
「お、おう」
涼ちゃんは固まってた。
土産は断っていた。
それでも青がゴディヴァの最中を持って来た。
「なんだよ、いらないって言っただろう」
「まあ、それでもな。俺も世話になるわけだし」
「しょうがねぇな!」
青は明穂さんのために、結構いろいろなスイーツを研究して知っている。
これも思い出のものなのかもしれないと思った。
強面の青がスイーツに詳しいことはみんな驚くだろう。
まあ、潰したのは俺なのだが。
子どもたちがすぐに料理を運んで来る。
今日は禁断の「すき焼き大会」だった。
亜紀ちゃんが青が来ると聞いて日程をずらした。
「折角ですから!」
必要ねぇんだが。
むしろ普通でいいのだが。
もちろん鍋は二つで、俺と青、涼ちゃんで一つと子どもたちのでかい鉄鍋。
すぐに用意は終わり、みんなで食べ始める。
青は大勢なので鍋を分けたと考えただろう。
しかし、食材(ほとんど肉)の量を見て、何事かと思う。
「あー、前はさ、普通の土鍋だったんだよ」
「いや、そういうことじゃなくてな」
「2回だよ! あいつらでかい分厚い鍋をぶっ壊してさ! だから鉄製にしたの」
「いや、赤虎……」
「もう大丈夫と言いたいんだけどなぁ。ちょっと心配」
「「……」」
子どもたちが物凄い勢いで争いながら食べていく。
今日は観客もいるので、一層高度なパフォーマンスが繰り広げられた。
みんな燃えている。
ガキン、ドヴォン、バキン、トォリャァァァァー
「おう、三連星の新技かぁ」
「「……」」
カスミは俺たちの鍋の世話をしてくれ、ニコニコしてご飯もよそってくれる。
まあ、そのうちに青と涼ちゃんも慣れてくれ、一緒にすき焼きを楽しんだ。
いつもながらに美味しかった。
「盆と正月が一緒に来ましたね!」
「なんでだよ!」
『虎は孤高に』で誰か来客が来ることを、亜紀ちゃんは喜ぶ。
少しでも多くの人間と観るのが好きなのだ。
よく分からない感覚だが、そのために近所の早乙女たちや河合さん、左門たちを呼んだり、たまに一江や大森が加わったりする。
もちろんいつも以上の大騒ぎになる。
亜紀ちゃんの興奮が増すからだ。
主役の山口君を呼べと、何十回も頼まれているが実現させていない。
前に興奮した亜紀ちゃんがゴールドムントのスピーカーを破り掛けたことがあるからだ。
必死に皇紀が庇って事なきを得たが、皇紀の頬骨がへし折れて酷い顔になった。
もちろん叱りはしたが、その後もずっと地下の音響ルームで観賞会を続けている。
あんなにも毎週楽しみにしている亜紀ちゃんから取り上げることは出来ない。
他の子どもたちも分かっている。
以前は毎週子どもたちと映画鑑賞を続けていた。
俺が映画を選び、みんなで観て行った。
映像芸術を味わう習慣が出来て行った。
その後みんな忙しくなり、辞めてしまった。
亜紀ちゃんのお陰で、また毎週みんなで集まって一つの作品を鑑賞する機会が出来た。
口に出してはいないが、みんな懐かしく思っているに違いない。
亜紀ちゃんの大興奮に時々文句も言うが、本気ではない。
みんなで楽しんでいるのだ。
その証拠に、初めてうちで一緒に『虎は孤高に』を観る人間たちは最初は当然驚く。
しかし、すぐに一緒に楽しんでくれるようになる。
俺たちが本気で楽しんでいることが伝わるからだ。
静かに独りで鑑賞するのもいい。
でも、ああやって大騒ぎしてみんなで楽しむのもいいものだ。
悲しいシーンでは、ちゃんと亜紀ちゃんも大人しく観る。
その後に大泣きして煩いのだが。
それと、あのテーマ曲を大声で歌うのはやめて……
ロボも一緒に吼えるのはやめて……
6月最終の金曜日。
一江がスケジュールを調整し、早目に上がれることになった。
もちろん一江には「般若」のことを全部話している。
「「般若」は大変なことになりますよね?」
「そうなんだよ。今からあのお祭り騒ぎだろう? オープンしたら大混乱だぜ」
「誰も入れなくなっちゃいますよね」
「まあ、常連は席を用意してるんだけど、そうもいかないよなぁ」
そのうち必ず恨まれることになる。
だから、常連も入りにくくなるだろう。
明恵和尚なんかは平然と通うだろうが。
「それに3人で大丈夫なんですか?」
「まあ計算ではな。でも亜紀ちゃんが「カタ研」のメンバーで応援のバイトを手配してくれてる」
「そうなんですか!」
「とにかくカスミが優秀だから、料理なんかはどんどん作れるんだよ。だから青と涼ちゃんがホールに入ればな。まあ青にはコーヒーを淹れてもらいたいんだが」
「なるほどー」
「バイトが2人も入れば余裕だな」
「そうですね」
その見通しが甘いことを後に知るのだが。
俺もレストラン経営はしたこともねぇ。
俺は5時には家に戻れた。
青たちを病院に呼んで、一緒にハマーに乗せた。
「おい、スゴイ車だな」
「ああ、うちは家族が多いからな。でかい車を買ったんだよ」
「おお、そうだったな!」
「石神さん、今日は本当に宜しくお願いします」
「うん、涼ちゃんも遠慮しないでな。全然気を遣う家じゃないしよ」
「はい!」
「カスミは大丈夫だな!」
「ウフフフ。まあ楽しみにしてたんですよ?」
「そうかよ!」
カスミは非常に高度な知性を持っている。
だから人間の機微の理解はもちろん、感情も持っている。
ジョークも飛ばせる。
性格の付与もあるが、他人との関係性でよりよい関係を築こうとする。
ディディは乾さんのことを愛し大事にし、お客たちには丁寧に対応し、また乾さんの友人たちも大事にするようになった。
その人がどうすれば喜んでくれるのかを理解し、嫌がることはしないようにする。
もちろん甘やかすだけではなく、凛としている部分も持っている。
自分を嫌っておらず大事にしようとしていると分かると、誰でもその「人間」を好きになる。
カスミは明るい女子高生という感じに性格を与えた。
まあ、今どきのJKではないが。
誰とでも仲良くなり、笑顔を振りまく若い子。
みんなから可愛がってもらえる子。
素直で何でも楽しもうとする子。
そして能力は高く、与えられた仕事は高度にこなしていく。
そのギャップもまた良い印象に映ることを願って、蓮花と一緒に作った。
何故JKにしたのかは青にも話していない。
15分ほどでうちに着いた。
リモコンで門を開ける。
「おい、赤虎……」
「おう、着いたぞ」
「石神さん……」
「ちょっと待ってな、涼ちゃん。門がすぐ開くからさ」
二人が黙り込んだ。
カスミはニコニコしている。
門が完全に開き(総プラチナだぞー)、ハマーを中へ入れた。
玄関の前で一度止めて青たちを降ろす。
「「……」」
「素敵なお宅ですね!」
「そうか!」
子どもたちが降りて来て、青たちを中へ入れる。
ロボもすぐに慣れて青たちを歓迎する。
俺の僅かな匂いを青たちから感じているのかもしれない。
この人間たちが俺の大事な仲間なのだと認識しているのだろう。
俺はハマーをガレージに入れて家に入った。
ロボが待っていて抱き上げて上がる。
青と涼ちゃんとカスミがリヴィングのテーブルに座っている。
もうすぐに夕食なので、茶も出さない。
荷物は子どもたちが預かって部屋へ運んでいる。
「赤虎、お前こんな家に住んでたんだな」
「まーなー」
「すげぇな」
「うーん、いろいろあってよ」
「そうなのか」
「ほら、双子がお前の金を運用して80億円にしただろ?」
「あ、ああ!」
「俺、今数千兆円を超えて、えーとルー! 今俺幾ら持ってんだ?」
「大分新しい基地とかで使っちゃってるから、大体2京ドルくらいかな」
「おう、サンキュー!」
「「……」」
「な?」
「「……」」
「ああ、俺別にでかい家なんかいらなかったんだけどさ。ちょっと事情があって元の家の周辺とかもらっちゃってさ」
「な、なんだ?」
「それで今じゃこんなになってんの。まあ、後でちょっと見せるけどさ」
「お、おう」
涼ちゃんは固まってた。
土産は断っていた。
それでも青がゴディヴァの最中を持って来た。
「なんだよ、いらないって言っただろう」
「まあ、それでもな。俺も世話になるわけだし」
「しょうがねぇな!」
青は明穂さんのために、結構いろいろなスイーツを研究して知っている。
これも思い出のものなのかもしれないと思った。
強面の青がスイーツに詳しいことはみんな驚くだろう。
まあ、潰したのは俺なのだが。
子どもたちがすぐに料理を運んで来る。
今日は禁断の「すき焼き大会」だった。
亜紀ちゃんが青が来ると聞いて日程をずらした。
「折角ですから!」
必要ねぇんだが。
むしろ普通でいいのだが。
もちろん鍋は二つで、俺と青、涼ちゃんで一つと子どもたちのでかい鉄鍋。
すぐに用意は終わり、みんなで食べ始める。
青は大勢なので鍋を分けたと考えただろう。
しかし、食材(ほとんど肉)の量を見て、何事かと思う。
「あー、前はさ、普通の土鍋だったんだよ」
「いや、そういうことじゃなくてな」
「2回だよ! あいつらでかい分厚い鍋をぶっ壊してさ! だから鉄製にしたの」
「いや、赤虎……」
「もう大丈夫と言いたいんだけどなぁ。ちょっと心配」
「「……」」
子どもたちが物凄い勢いで争いながら食べていく。
今日は観客もいるので、一層高度なパフォーマンスが繰り広げられた。
みんな燃えている。
ガキン、ドヴォン、バキン、トォリャァァァァー
「おう、三連星の新技かぁ」
「「……」」
カスミは俺たちの鍋の世話をしてくれ、ニコニコしてご飯もよそってくれる。
まあ、そのうちに青と涼ちゃんも慣れてくれ、一緒にすき焼きを楽しんだ。
いつもながらに美味しかった。
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