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《デモノイド》戦 Ⅷ 早霧

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 鏑木の狙撃は始まってすぐに、俺たちは外へ出た。
 俺はまっすぐにセリョーガの所へ走った。

 「よう、お前がリーダーなんだろ?」

 俺はセリョーガの前に立った。
 セリョーガはようやくバランスを取って立ち上がった所だ。

 「俺も一応ハンターのリーダーなんだよ。お前の相手は俺だ」
 「バカめ。お前などが俺に勝てると思っているのか」
 「たりめぇだぁ! うちの愛鈴をよくもやってくれたな!」
 「お前よりも強い奴だろう」
 
 挑発であることは分かっている。
 
 「あいつ、油断しやがってよ。本気の俺がお前を殺してやる」
 「出来るのか?」

 セリョーガがせせら笑っていた。

 「来い!」

 俺は剣を構えてセリョーガに近づいた。
 俺の剣技を捌けると思っていたセリョーガが、刃を弾きながらも幾度も四肢を斬られて行く。
 顔に貼りついたような笑みが消えた。
 剣を弾くのは辞め、回避に専念する。
 しかし、剣から放たれた技で体表を抉られて行く。
 甚大なダメージにはならないが。
 
 「おい、妖魔になった方がいいぜ」
 「フン」

 セリョーガが何かに集中した瞬間、俺は剣を撃ち込んだ。
 セリョーガは慌てて回避する。
 右の肩が爆発して爆ぜる。

 「グゥ!」
 「ワハハハハハハ! お前、本気か?」

 セリョーガが恐ろしい顔で俺を睨んでいる。

 「まさか、俺が待ってると思ったのか?」
 「貴様……」

 俺は笑いながら再び剣を撃ち込んで行った。
 セリョーガは必死で回避するが、足元に慣れておらず、幾つも俺の剣を身体に受け、そこが爆ぜて行く。
 苦痛はあるらしく、顔を歪めている。

 メタモルフォーゼには、幾らかの間が必要らしい。
 俺はその機会を与えずに攻撃を連撃した。
 セリョーガが地面を蹴り上げた。
 パチンコ玉を銃弾のように飛ばして来る。
 防弾の無い顔を両手で覆った。
 次の瞬間、腹に強烈な衝撃。

 (しまった!)

 20メートルも吹っ飛ばされ、地面に転がって呻いた。
 気力で立ち上がったが、目の前にメタモルフォーゼしたセリョーガがいた。
 俺が爆ぜさせた肉が物凄いスピードで再生していく。
 ワイヤーと鉄骨を組み合わせたような怪物だった。
 身長は2メートルのままだ。

 「これで終わりだ。よくもやってくれたな」
 「さっきまではお前、随分と色男だったのにな」
 「この姿になれば、お前など敵ではない」
 「そうかよ」

 セリョーガが俺に迫って来る。
 足に鉤爪のようなものが出来たせいか、先ほどよりもスピードが速い。
 だが、まだ滑りそうになることもある。
 振るってくる両腕を剣技で受ける。
 早霧家の爆刀技で、なんとか受け大刀が出来た。
 しかし物凄い膂力で、集中していないと剣が折れそうになる。
 一撃で俺を殺すつもりだったのだろうが、それが出来ないことにセリョーガが驚いているのが分かる。

 セリョーガの攻撃が止んだ。

 「お前の力は分かった」
 「そうかよ」

 俺は息の乱れを悟らせないように、小周天で無理矢理整えた。
 全身に痺れを感じ、酸素の不足に目の前が一瞬暗くなる。
 
 「お前のこともよく分かったぜ」

 俺は出来るだけ自然に喋り、酸素が回る時間を稼いだ。

 「お前、まだ自信があるのか」
 「負ける気は全然ねぇぜ?」
 「ほう」
 
 裏手で爆発音が響いた。
 鏑木がやったようだ。

 「ほら、もう一匹は始末した」
 「なんだと?」

 セリョーガが黙った。

 「ミーラ……」

 仲間の名前を呼んだ。
 こいつには分かったのか。
 俺を向いて、一層不気味な雰囲気を増して言った。

 「お前たちは皆殺しにする」
 「やってみろ」
 「お前の剣では、俺は殺せない」
 「さっきは辛そうだったじゃねぇか」
 「次は本気で行くぞ」
 「最初から必死だったろう?」
 
 会話が長引き、身体は十分に回復した。
 こいつは戦いに慣れていない。

 俺は小周天を続け、チャクラを回していく。

 「実はよ、ちょっと身体が辛いんだわ」
 「そうだろう」
 「少し待ってくれねぇか?」
 「何を言っている」
 「さっきみてぇに動けねぇ。だから待って」
 「待つわけないだろう」
 「俺たちの秘密を教えてやるからよ」
 「なんだと?」
 「知らなければ、お前ら相当不味いことになるぞ?」
 「なんだ!」

 バカな奴だ。
 俺は剣を鞘に納めた。
 セリョーガがそれを見て驚いている。
 俺が闘いを辞めたとすら考えている。
 チャクラの全てが回転を始める。

 「お前は狂喜する」
 「なんだと?」

 倒置法の会話だ。
 結論を先に言うことで、相手が興味を抱く。
 時間稼ぎに引っ掛かった。

 「この中に重要なものがある」
 「それはなんだ?」
 
 まだ乗って来る。

 「それを知れば、お前の大きな手柄になる」
 「だから教えろ! お前一人くらいは見逃してやる」
 
 嘘に決まっている。
 俺がハンターのリーダーということで、何かの情報の可能性を考えているだけだ。

 「本当に知りたいのか?」
 「教えろ。そうすればお前は助かる」
 「そうか」

 チャクラが高速回転していく。

 「ならば見ろ」

 俺は腰を落とし、居合斬りでセリョーガに刀身を払った。
 セリョーガはその速さに反応できない。
 虚を衝かれたのだ。


 《天殺》


 セリョーガの胴が2つに分かれ、そこから更に縦に割れて行く。
 4つの身体に分かれてセリョーガは絶命した。

 「見たか? 俺の最大奥義だ。見れて良かったな」

 セリョーガは返事をしない。
 もう死んでいる。
 やがて身体が崩れて行った。

 「長話に付き合ってくれてありがとうな。バカヤロウ」

 俺は地面にへたり込んだ。
 《天殺》の後は、全身の波動が乱れる。
 一撃必殺の奥義だ。
 通じなければ俺は終わりだし、途中で手を出されても終わる。

 「愛鈴と一緒なら、何とか使えるかぁ」

 笑いが込み上げて来た。

 「でも、あいつ。磯良のそばにしかいねぇからなぁ」

 建物を見ると、鏑木が手を振っていた。

 「二匹やったか」
 
 俺は本格的に地面に寝転んだ。
 他の3人もやることは分かっている。



 
 俺たちは絶対にやるのだ。
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