2,264 / 2,840
「山の神」の育成 Ⅱ
しおりを挟む
俺は何かの波動を感じた。
大きく、強い。
突然、「ヒーちゃん」の額が光った。
「あ!」
亜紀ちゃんが叫んだ。
周囲に様々な動物が集まって来た。
まだ、遠くからこちらへ走って来る音も聞こえる。
「タカさん!」
「落ち着け!」
近い連中は30メートルほどしか離れていない。
その向こうに、数百の動物、ムースなどの鹿、イノシシ、タヌキ、ウサギやリス、様々な鳥が猛禽類も小鳥もたくさんいる。
こちらをジッと見ている。
天敵もいるのだが、争う様子は無い。
「ガォウゥゥゥゥーー!」
「ヒーちゃん」が吠えた。
動物たちが一斉に頭を下げて立ち去った。
「おい……」
「タカさん……」
何が起きたのか分からなかった。
「ヒーちゃん」が四つ足に戻り、亜紀ちゃんに顔をこすりつけていた。
今の現象は、もしかして……
「帰ろっか」
「はい」
二人で「ヒーちゃん」をポンポンして飛び去った。
それから、亜紀ちゃんと時々「ヒーちゃん」の様子を見に行った。
「ヒーちゃん」が縄張りにしていた山は、他のヒグマが姿を消し、動物たちが多くなっていった。
木々の植生も豊富になっている気がする。
「ヒーちゃん」は、会うたびに身体がでかくなっていった。
今は4メートルも体長がある。
でも、亜紀ちゃんには甘えモードでカワイイ。
俺にも懐いている。
「ヒーちゃん」と一緒に山を歩きながら、やはり以前とは違うのを確認した。
山が確実に豊かになっている。
「なんかいろいろ増えたなー」
「そうですねー」
ある日、「ヒーちゃん」を呼んで一緒に川で遊んでいると、鮭が「ヒーちゃん」の周りに群がって来た。
ある日、「ヒーちゃん」と遊んだ後で見送っていると、「ヒーちゃん」の足跡に草が生えて行った。
ある日、小鳥だらけになっている「ヒーちゃん」を見た。
ある日、夜に行くと「ヒーちゃん」が光ってた。
ある日、「ヒーちゃん」がナゾのダンスをしていた。
「「……」」
亜紀ちゃんと相談して、ソロンさんに来てもらうことにした。
「ソロンさん。先日、額に白い「〇」のあるヒグマを見つけまして」
「え、そうなの?」
ソロンさんの反応が薄い。
やっぱ「〇」じゃだめかー。
「時々行く山なんですけど、どうも動物が多くなった気がして」
「そうなんだ」
「反対に、その額に「〇」のヒグマ以外は、他の熊を見掛けないんですよ」
「じゃあ、相当強い奴かな」
うーん、ノリが悪い。
「とにかく、ソロンさんに一度見てもらいたくて」
「うん、いいよ。じゃあ、いつにしよう……」
亜紀ちゃんがいきなりソロンさんを抱えてハンヴィに乗せた。
俺らも結構忙しいのだ。
「ちょ、ちょっと!」
ブーン。
山の麓でまた亜紀ちゃんがソロンさんを抱えて上った。
「ヒーちゃん」の居場所は大体分かる。
巣穴の近くでソロンさんを降ろし、中を覗いてみた。
いた。
呼ばなくても、亜紀ちゃんの臭いを捉えて、「ヒーちゃん」が巣穴から出てきた。
「ガウ!」
嬉しそうに走って来る。
「危ないぞ!」
ソロンさんが叫ぶが、もちろん大丈夫だ。
「ヒーちゃん」が俺たちの前に来て、亜紀ちゃんに頭を撫でられる。
「おい! 大丈夫なのか?」
「結構私たちに慣れてるんですよ」
「そうなの?」
ソロンさんも落ち着いて「ヒーちゃん」を見た。
「おお! これは!」
ソロンさんがそっと近づいて、「ヒーちゃん」の額のマークを見た。
「サークルかぁ!」
「そうですね」
俺が描いたのだが。
「多分、凄い山の主だよ!」
「そうなんですか!」
「うん。俺は星のマークしか見たことなかったけどな。でも、この貫録は間違いないだろう」
「はい!」
亜紀ちゃんと戯れているのだが。
どこの貫禄指しているのか。
そのうち、「ヒーちゃん」が亜紀ちゃんを連れて林の中へ入って行った。
「ヒーちゃん、どこ行くの?」
俺たちも後を追った。
「ヒーちゃん?」
「ガウ!」
「ヒーちゃん」が後ろを振り向きながら亜紀ちゃんに追わせる。
亜紀ちゃんも笑いながら追いかけた。
俺とソロンさんも後ろを歩く。
「ガウ」
「なーに? おしまい?」
「ヒーちゃん」が止まった。
俺たちも追いついた。
「こ、これは!」
ソロンさんが「ヒーちゃん」の後ろの地面を指さす。
「キングボレテじゃねぇか!」
「なんです?」
「一番美味いキノコだよぉ! それもこんなに群生してるなんてよぉ!」
俺たちも見た。
相当な量がありそうだ。
「香りが高くてな、それで味も濃厚なんだよ」
「そうなんですか」
俺も亜紀ちゃんも知らない。
俺はハマーから70リットルのゴミ袋を何枚か持ってきた。
みんなでキングボレテを集める。
「採る前に必ずキャップをはたいて胞子を落としてからな!」
「「はい!」」
そうすることで、また豊かに生えてくるのだと言う。
5袋も採れて、俺たちは帰ることにした。
「優しい山の主だな!」
「そうですか」
「人間に山の恵みを分けてくれるなんてよ。ああいうのは滅多にいないよ」
「へぇー」
「お嬢さんに随分と懐いてんなぁ」
「「アハハハハハハハ!」」
笑って誤魔化した。
人工山の主なのだが。
キングボテレは凄まじい美味さだった。
栞の家でみんなで食べてみたが、栞も桜花たちも感動していた。
ポルチーニ茸に似ていると聞いていたが、遙かに香りも旨味も濃い。
天ぷらにすると絶品の美味さだ。
もちろん素焼きにしたりシチューにも入れた。
士王も興奮して食べていた。
なかなか舌が肥えて来た。
「ヒーちゃんのお陰ですね!」
「そうだな!」
「ヒーちゃんって、誰?」
栞に聞かれた。
俺たちが作った山の主だと話すと、栞や桜花たちが爆笑した。
「あなたたちって、本当に何をやってるの!」
「そりゃ詫びのつもりだったんだけどよ。思わぬ方向になぁ」
「いつもそうだよね!」
「お前だってなぁ!」
楽しく食事をして帰った。
「タカさん」
「あんだ?」
「ブリーチって、どれくらいもつんですかね」
「あ、しらねー」
時々様子を見に行っているが、「ヒーちゃん」の額には、しっかりと「〇」がある。
後日、ワキンが来て、俺と亜紀ちゃんに「山の主を育成せし者」という称号があると言われた。
「山の主殺し」の方は消えてないそうだ。
へぇー。
大きく、強い。
突然、「ヒーちゃん」の額が光った。
「あ!」
亜紀ちゃんが叫んだ。
周囲に様々な動物が集まって来た。
まだ、遠くからこちらへ走って来る音も聞こえる。
「タカさん!」
「落ち着け!」
近い連中は30メートルほどしか離れていない。
その向こうに、数百の動物、ムースなどの鹿、イノシシ、タヌキ、ウサギやリス、様々な鳥が猛禽類も小鳥もたくさんいる。
こちらをジッと見ている。
天敵もいるのだが、争う様子は無い。
「ガォウゥゥゥゥーー!」
「ヒーちゃん」が吠えた。
動物たちが一斉に頭を下げて立ち去った。
「おい……」
「タカさん……」
何が起きたのか分からなかった。
「ヒーちゃん」が四つ足に戻り、亜紀ちゃんに顔をこすりつけていた。
今の現象は、もしかして……
「帰ろっか」
「はい」
二人で「ヒーちゃん」をポンポンして飛び去った。
それから、亜紀ちゃんと時々「ヒーちゃん」の様子を見に行った。
「ヒーちゃん」が縄張りにしていた山は、他のヒグマが姿を消し、動物たちが多くなっていった。
木々の植生も豊富になっている気がする。
「ヒーちゃん」は、会うたびに身体がでかくなっていった。
今は4メートルも体長がある。
でも、亜紀ちゃんには甘えモードでカワイイ。
俺にも懐いている。
「ヒーちゃん」と一緒に山を歩きながら、やはり以前とは違うのを確認した。
山が確実に豊かになっている。
「なんかいろいろ増えたなー」
「そうですねー」
ある日、「ヒーちゃん」を呼んで一緒に川で遊んでいると、鮭が「ヒーちゃん」の周りに群がって来た。
ある日、「ヒーちゃん」と遊んだ後で見送っていると、「ヒーちゃん」の足跡に草が生えて行った。
ある日、小鳥だらけになっている「ヒーちゃん」を見た。
ある日、夜に行くと「ヒーちゃん」が光ってた。
ある日、「ヒーちゃん」がナゾのダンスをしていた。
「「……」」
亜紀ちゃんと相談して、ソロンさんに来てもらうことにした。
「ソロンさん。先日、額に白い「〇」のあるヒグマを見つけまして」
「え、そうなの?」
ソロンさんの反応が薄い。
やっぱ「〇」じゃだめかー。
「時々行く山なんですけど、どうも動物が多くなった気がして」
「そうなんだ」
「反対に、その額に「〇」のヒグマ以外は、他の熊を見掛けないんですよ」
「じゃあ、相当強い奴かな」
うーん、ノリが悪い。
「とにかく、ソロンさんに一度見てもらいたくて」
「うん、いいよ。じゃあ、いつにしよう……」
亜紀ちゃんがいきなりソロンさんを抱えてハンヴィに乗せた。
俺らも結構忙しいのだ。
「ちょ、ちょっと!」
ブーン。
山の麓でまた亜紀ちゃんがソロンさんを抱えて上った。
「ヒーちゃん」の居場所は大体分かる。
巣穴の近くでソロンさんを降ろし、中を覗いてみた。
いた。
呼ばなくても、亜紀ちゃんの臭いを捉えて、「ヒーちゃん」が巣穴から出てきた。
「ガウ!」
嬉しそうに走って来る。
「危ないぞ!」
ソロンさんが叫ぶが、もちろん大丈夫だ。
「ヒーちゃん」が俺たちの前に来て、亜紀ちゃんに頭を撫でられる。
「おい! 大丈夫なのか?」
「結構私たちに慣れてるんですよ」
「そうなの?」
ソロンさんも落ち着いて「ヒーちゃん」を見た。
「おお! これは!」
ソロンさんがそっと近づいて、「ヒーちゃん」の額のマークを見た。
「サークルかぁ!」
「そうですね」
俺が描いたのだが。
「多分、凄い山の主だよ!」
「そうなんですか!」
「うん。俺は星のマークしか見たことなかったけどな。でも、この貫録は間違いないだろう」
「はい!」
亜紀ちゃんと戯れているのだが。
どこの貫禄指しているのか。
そのうち、「ヒーちゃん」が亜紀ちゃんを連れて林の中へ入って行った。
「ヒーちゃん、どこ行くの?」
俺たちも後を追った。
「ヒーちゃん?」
「ガウ!」
「ヒーちゃん」が後ろを振り向きながら亜紀ちゃんに追わせる。
亜紀ちゃんも笑いながら追いかけた。
俺とソロンさんも後ろを歩く。
「ガウ」
「なーに? おしまい?」
「ヒーちゃん」が止まった。
俺たちも追いついた。
「こ、これは!」
ソロンさんが「ヒーちゃん」の後ろの地面を指さす。
「キングボレテじゃねぇか!」
「なんです?」
「一番美味いキノコだよぉ! それもこんなに群生してるなんてよぉ!」
俺たちも見た。
相当な量がありそうだ。
「香りが高くてな、それで味も濃厚なんだよ」
「そうなんですか」
俺も亜紀ちゃんも知らない。
俺はハマーから70リットルのゴミ袋を何枚か持ってきた。
みんなでキングボレテを集める。
「採る前に必ずキャップをはたいて胞子を落としてからな!」
「「はい!」」
そうすることで、また豊かに生えてくるのだと言う。
5袋も採れて、俺たちは帰ることにした。
「優しい山の主だな!」
「そうですか」
「人間に山の恵みを分けてくれるなんてよ。ああいうのは滅多にいないよ」
「へぇー」
「お嬢さんに随分と懐いてんなぁ」
「「アハハハハハハハ!」」
笑って誤魔化した。
人工山の主なのだが。
キングボテレは凄まじい美味さだった。
栞の家でみんなで食べてみたが、栞も桜花たちも感動していた。
ポルチーニ茸に似ていると聞いていたが、遙かに香りも旨味も濃い。
天ぷらにすると絶品の美味さだ。
もちろん素焼きにしたりシチューにも入れた。
士王も興奮して食べていた。
なかなか舌が肥えて来た。
「ヒーちゃんのお陰ですね!」
「そうだな!」
「ヒーちゃんって、誰?」
栞に聞かれた。
俺たちが作った山の主だと話すと、栞や桜花たちが爆笑した。
「あなたたちって、本当に何をやってるの!」
「そりゃ詫びのつもりだったんだけどよ。思わぬ方向になぁ」
「いつもそうだよね!」
「お前だってなぁ!」
楽しく食事をして帰った。
「タカさん」
「あんだ?」
「ブリーチって、どれくらいもつんですかね」
「あ、しらねー」
時々様子を見に行っているが、「ヒーちゃん」の額には、しっかりと「〇」がある。
後日、ワキンが来て、俺と亜紀ちゃんに「山の主を育成せし者」という称号があると言われた。
「山の主殺し」の方は消えてないそうだ。
へぇー。
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
こずえと梢
気奇一星
キャラ文芸
時は1900年代後期。まだ、全国をレディースたちが駆けていた頃。
いつもと同じ時間に起き、同じ時間に学校に行き、同じ時間に帰宅して、同じ時間に寝る。そんな日々を退屈に感じていた、高校生のこずえ。
『大阪 龍斬院』に所属して、喧嘩に明け暮れている、レディースで17歳の梢。
ある日、オートバイに乗っていた梢がこずえに衝突して、事故を起こしてしまう。
幸いにも軽傷で済んだ二人は、病院で目を覚ます。だが、妙なことに、お互いの中身が入れ替わっていた。
※レディース・・・女性の暴走族
※この物語はフィクションです。
~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました
深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる