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久し振りの御堂家 Ⅲ
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俺たちはしばらく車で建設中や造成中の土地を見て回った。
「タカさん、結構進んでますね」
「まあな。だけど、今は外壁の建設を中心に回しているからな。アラスカの「アヴァロン」がもうすぐ完成する。そうしたら人手をこっちに回して一気に創るからな」
「スゴイですね!」
しばらく回って、御堂家に戻った。
澪さんが冷たい麦茶を出してくれる。
俺が土産に持って来た「緑翠」の《藤袴》を一緒に出してくれた。
「綺麗な生菓子ですね」
「まあ、ちょっと縁がありましてね」
柳が「緑翠」のことを話し、正巳さんたちが感動していた。
「石神さんはいつも立派だ」
「いや、たまたまですよ。縁のあった人間だけです。正巳さんや御堂はそうじゃない人間まで何とかしようとしている」
先ほどの《ミトラ》の話になった。
「こいつらね、毎日問題を起こして、亜紀ちゃんとフィリピンに飛んで行ってたんですよ」
皇紀の浮気相手のことは話さないが。
双子はニコニコしてやがる。
「そのうちの一度が、さっきの《ミトラ》ですよ。俺も実物を見てぶったまげました」
みんなが笑う。
「最終日が最悪でしたよね!」
亜紀ちゃんが言った。
「そうだよな! こいつら、槍と腕輪を使ってオチンチンだって機内で騒いで」
「槍と腕輪が怒って、エンジン、燃えて落ちちゃったんですよね!」
「全部な!」
槍と腕輪が激オコになったのだと言い、みんなが爆笑した。
「お前らは笑うんじゃねぇ!」
皇紀と双子まで笑っていた。
「まったくよ! 護衛についてたデュールゲリエや哨戒機から緊急連絡が来てよ! 何事かと思ったらエンジンが全部爆発して落ちたって。驚いたなんてもんじゃねぇぞ!」
「「「ワハハハハハハハ!」」」
「だから笑うんじゃねぇ!」
「それでどうしたんだ?」
御堂は流石に落ち着いている。
俺たちにとっては、大したことではないと思っているのだ。
「一流のパイロットを付けてたからな。何とか海面にソフトランディングして。こいつら三人で機体を支えて飛行してたんだよ。後から周囲を警戒して飛んでたデュールゲリエや、アラスカからも「飛行」が得意な連中を動員して、機体を羽田まで運んだんだ。本来保険会社から修理費や賠償金が出るんだけど、もちろんうちで負担した」
またみんなが爆笑した。
「まあ、神具の罰だなんて誰も思ってなかったけどな。寄越せなんてとても言えねぇぜ」
「そういうことだったのか。だから今回は槍と腕輪を持って来れなかったんだね?」
「そうなんだよ。まだ怒りが収まってないらしく、俺たちが持とうとすると雷撃があるのな。まあ、俺が宥めながら何とか今は俺の部屋まで運んだんだけどな」
「大変だったね」
「そうなんだよ! 俺だって持ってるとビリビリ来るんだからな! なあ、お前ら!」
「「「ごめんなさーい」」」
御堂が聞いて来た。
「石神、あれらは本当に神の世界から来たものなのか?」
「分からないよ。祭儀をやった連中がそう言っているんだけどな。でも、尋常なものではないことは分かるよ」
「そうだな」
「前に落ちて来たものが数十あるらしいけど、人間には不可能な合金だったり、未知の鉱物や金属もあるらしいよ。それとな」
「なんだい?」
「まだ計測も出来ていないんだけど、能力者が何らかのエネルギーを感知しているらしい。それも、一様じゃないらしいぜ」
「そうなのか」
「本当は霊素解析とかしてみたいんだけどな」
「なんでやらないんだ?」
「こいつらのせいで、ヘソ曲げて測定させてくれねぇんだよ! 霊素感知器を持って来るとまた雷撃なの! 一台ぶっ壊れたぜ!」
みんなが爆笑する。
「まったくとんでもねぇぞ! ああ、今日は野菜バーベキューですよね?」
子どもたちが大騒ぎする。
「ちゃんとお肉ですよ」
「すいませんねぇ」
俺は大渕さんと木村に、少し横になるように勧めた。
子どもたちは夕飯の準備を手伝い、俺は御堂と話した。
「石神、お前はあの《ミトラ》を何だと思う》
二人きりで御堂の部屋で話したので、御堂が核心を衝いて来た。
「俺の中に入ったんだ」
「ああ、そうだったね」
「その時に、《ミトラ》が俺たちの運命を変えるものだと分かった」
「なんだって?」
「多分だが、「業」との戦いは俺たちにとって相当な苦戦になるものだったようだ」
「これだけの力を得てもか!」
「そうだ。「業」には、巨大な権能が与えられていたらしい」
「……」
御堂が黙った。
「それは、神の中で人間を嫌う者たちによって与えられた。だからだよ」
「それが変わったということか?」
「そうだ。より上の神によって、「業」の権能に対抗出来る運命がもたらされた。それの証が《ミトラ》だよ」
「どういうことなんだ?」
「それは俺にも具体的なことはよく分からないんだ。でも、以前から感じていることがある」
「なんだ?」
「大きな節目は「虎王」が二本になったこと。それと千石の存在と霊素の発見だな」
「ああ」
「これは俺の勘でしかないんだが、少し前から「業」のあまりにも巨大な権能に対抗出来る流れが生まれて来たような気がする。未来が変わりつつある」
「石神!」
「響子がな、口にはしないんだけど、どうも何かを感じているらしい。例えば、前に北アフリカでの「砂漠の虎作戦」な。あそこで米軍のゴールドマンを捕えたことを響子が知って、大喜びしていたんだ」
「なんだ?」
「俺にも分からんよ。響子が興味を持つ話題じゃないはずだからな。だから俺は、未来でゴールドマンが俺たちに立ちふさがるのを観ていたんじゃないかと思う」
「なんだって!」
「他にもあるんだ。諸見が「花岡」の上級技を会得したと聞いて、泣く程喜んでたりな。他にも突然竹流に、「ありがとう」なんて言ったりさ。どうにもおかしいんだが、響子が未来を観てのことだと思えば納得出来る」
「響子ちゃんの予言は、口には出せないものなのか」
「そうなんじゃないかな。まあ、語れば悪いことが確実なものになるのかもしれない」
「なるほど。悪い未来なんだな」
「また、良い未来も不味いのかもな。どうにも分からんよ」
「そうか」
俺は御堂にもゆっくりしろと言い、正利を誘って「花岡」と剣で遣り合った。
正利もジェイたちと一緒に鍛錬をしているようで、上達していた。
そのうちに、千石に会わせようと思った。
一緒に縁側に座って休んでいると、澪さんが冷たい緑茶を持って来てくれた。
流石に常に気を遣う人だ。
「正利は受験はどうするんだ?」
「僕は山梨大学に行くつもりです」
「なんだ、東大じゃないのか」
「はい、ここを離れたくないんで」
「そうか」
まあ、大学に行かなくてもいいのだが。
きっと、自分が実家を護る決意でいるのだろう。
「じゃあさ、俺が御堂に頼んで東大の卒業資格をもらってやるよ」
「えぇー!」
「記録なんて、どうにでもなるしな」
「ダメですよ!」
「そう?」
「はい!」
澪さんが笑っていた。
「うーん、それじゃ俺から「アヴァロン「虎」大学」の資格をやるな」
「なんですか、それ?」
「アラスカの都市の大学だよ。そこなら俺の自由だから」
「えぇ!」
「な!」
「うーん」
澪さんが笑って、宜しくお願いしますと言って厨房へ戻った。
「えーと、法学部と経済学部と経営学部と……」
「そんなにですか!」
「全部主席な」
「なんですかぁ!」
「ワハハハハハハハ!」
双子の論文でフィールズ賞も獲れると言うと、正利が驚いた。
「あいつら、「abc問題」まで解決したからなぁ」
「それってなんです?」
俺が説明してやったが、高校の数学の知識では理解は難しかった。
ただ、数学界の最大の問題ということは分かった。
「「abc問題」が解けると、数学の難問とされている問題の大半が解けると言われているんだ」
「そうなんですか」
「お前、分かってないよなぁ」
「はい!」
「しょうがねぇ」
「だから、石神さん、絶対に辞めて下さいね!」
「ワハハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが夕飯の支度が出来たと呼びに来た。
正利と笑いながら、向かった。
「タカさん、結構進んでますね」
「まあな。だけど、今は外壁の建設を中心に回しているからな。アラスカの「アヴァロン」がもうすぐ完成する。そうしたら人手をこっちに回して一気に創るからな」
「スゴイですね!」
しばらく回って、御堂家に戻った。
澪さんが冷たい麦茶を出してくれる。
俺が土産に持って来た「緑翠」の《藤袴》を一緒に出してくれた。
「綺麗な生菓子ですね」
「まあ、ちょっと縁がありましてね」
柳が「緑翠」のことを話し、正巳さんたちが感動していた。
「石神さんはいつも立派だ」
「いや、たまたまですよ。縁のあった人間だけです。正巳さんや御堂はそうじゃない人間まで何とかしようとしている」
先ほどの《ミトラ》の話になった。
「こいつらね、毎日問題を起こして、亜紀ちゃんとフィリピンに飛んで行ってたんですよ」
皇紀の浮気相手のことは話さないが。
双子はニコニコしてやがる。
「そのうちの一度が、さっきの《ミトラ》ですよ。俺も実物を見てぶったまげました」
みんなが笑う。
「最終日が最悪でしたよね!」
亜紀ちゃんが言った。
「そうだよな! こいつら、槍と腕輪を使ってオチンチンだって機内で騒いで」
「槍と腕輪が怒って、エンジン、燃えて落ちちゃったんですよね!」
「全部な!」
槍と腕輪が激オコになったのだと言い、みんなが爆笑した。
「お前らは笑うんじゃねぇ!」
皇紀と双子まで笑っていた。
「まったくよ! 護衛についてたデュールゲリエや哨戒機から緊急連絡が来てよ! 何事かと思ったらエンジンが全部爆発して落ちたって。驚いたなんてもんじゃねぇぞ!」
「「「ワハハハハハハハ!」」」
「だから笑うんじゃねぇ!」
「それでどうしたんだ?」
御堂は流石に落ち着いている。
俺たちにとっては、大したことではないと思っているのだ。
「一流のパイロットを付けてたからな。何とか海面にソフトランディングして。こいつら三人で機体を支えて飛行してたんだよ。後から周囲を警戒して飛んでたデュールゲリエや、アラスカからも「飛行」が得意な連中を動員して、機体を羽田まで運んだんだ。本来保険会社から修理費や賠償金が出るんだけど、もちろんうちで負担した」
またみんなが爆笑した。
「まあ、神具の罰だなんて誰も思ってなかったけどな。寄越せなんてとても言えねぇぜ」
「そういうことだったのか。だから今回は槍と腕輪を持って来れなかったんだね?」
「そうなんだよ。まだ怒りが収まってないらしく、俺たちが持とうとすると雷撃があるのな。まあ、俺が宥めながら何とか今は俺の部屋まで運んだんだけどな」
「大変だったね」
「そうなんだよ! 俺だって持ってるとビリビリ来るんだからな! なあ、お前ら!」
「「「ごめんなさーい」」」
御堂が聞いて来た。
「石神、あれらは本当に神の世界から来たものなのか?」
「分からないよ。祭儀をやった連中がそう言っているんだけどな。でも、尋常なものではないことは分かるよ」
「そうだな」
「前に落ちて来たものが数十あるらしいけど、人間には不可能な合金だったり、未知の鉱物や金属もあるらしいよ。それとな」
「なんだい?」
「まだ計測も出来ていないんだけど、能力者が何らかのエネルギーを感知しているらしい。それも、一様じゃないらしいぜ」
「そうなのか」
「本当は霊素解析とかしてみたいんだけどな」
「なんでやらないんだ?」
「こいつらのせいで、ヘソ曲げて測定させてくれねぇんだよ! 霊素感知器を持って来るとまた雷撃なの! 一台ぶっ壊れたぜ!」
みんなが爆笑する。
「まったくとんでもねぇぞ! ああ、今日は野菜バーベキューですよね?」
子どもたちが大騒ぎする。
「ちゃんとお肉ですよ」
「すいませんねぇ」
俺は大渕さんと木村に、少し横になるように勧めた。
子どもたちは夕飯の準備を手伝い、俺は御堂と話した。
「石神、お前はあの《ミトラ》を何だと思う》
二人きりで御堂の部屋で話したので、御堂が核心を衝いて来た。
「俺の中に入ったんだ」
「ああ、そうだったね」
「その時に、《ミトラ》が俺たちの運命を変えるものだと分かった」
「なんだって?」
「多分だが、「業」との戦いは俺たちにとって相当な苦戦になるものだったようだ」
「これだけの力を得てもか!」
「そうだ。「業」には、巨大な権能が与えられていたらしい」
「……」
御堂が黙った。
「それは、神の中で人間を嫌う者たちによって与えられた。だからだよ」
「それが変わったということか?」
「そうだ。より上の神によって、「業」の権能に対抗出来る運命がもたらされた。それの証が《ミトラ》だよ」
「どういうことなんだ?」
「それは俺にも具体的なことはよく分からないんだ。でも、以前から感じていることがある」
「なんだ?」
「大きな節目は「虎王」が二本になったこと。それと千石の存在と霊素の発見だな」
「ああ」
「これは俺の勘でしかないんだが、少し前から「業」のあまりにも巨大な権能に対抗出来る流れが生まれて来たような気がする。未来が変わりつつある」
「石神!」
「響子がな、口にはしないんだけど、どうも何かを感じているらしい。例えば、前に北アフリカでの「砂漠の虎作戦」な。あそこで米軍のゴールドマンを捕えたことを響子が知って、大喜びしていたんだ」
「なんだ?」
「俺にも分からんよ。響子が興味を持つ話題じゃないはずだからな。だから俺は、未来でゴールドマンが俺たちに立ちふさがるのを観ていたんじゃないかと思う」
「なんだって!」
「他にもあるんだ。諸見が「花岡」の上級技を会得したと聞いて、泣く程喜んでたりな。他にも突然竹流に、「ありがとう」なんて言ったりさ。どうにもおかしいんだが、響子が未来を観てのことだと思えば納得出来る」
「響子ちゃんの予言は、口には出せないものなのか」
「そうなんじゃないかな。まあ、語れば悪いことが確実なものになるのかもしれない」
「なるほど。悪い未来なんだな」
「また、良い未来も不味いのかもな。どうにも分からんよ」
「そうか」
俺は御堂にもゆっくりしろと言い、正利を誘って「花岡」と剣で遣り合った。
正利もジェイたちと一緒に鍛錬をしているようで、上達していた。
そのうちに、千石に会わせようと思った。
一緒に縁側に座って休んでいると、澪さんが冷たい緑茶を持って来てくれた。
流石に常に気を遣う人だ。
「正利は受験はどうするんだ?」
「僕は山梨大学に行くつもりです」
「なんだ、東大じゃないのか」
「はい、ここを離れたくないんで」
「そうか」
まあ、大学に行かなくてもいいのだが。
きっと、自分が実家を護る決意でいるのだろう。
「じゃあさ、俺が御堂に頼んで東大の卒業資格をもらってやるよ」
「えぇー!」
「記録なんて、どうにでもなるしな」
「ダメですよ!」
「そう?」
「はい!」
澪さんが笑っていた。
「うーん、それじゃ俺から「アヴァロン「虎」大学」の資格をやるな」
「なんですか、それ?」
「アラスカの都市の大学だよ。そこなら俺の自由だから」
「えぇ!」
「な!」
「うーん」
澪さんが笑って、宜しくお願いしますと言って厨房へ戻った。
「えーと、法学部と経済学部と経営学部と……」
「そんなにですか!」
「全部主席な」
「なんですかぁ!」
「ワハハハハハハハ!」
双子の論文でフィールズ賞も獲れると言うと、正利が驚いた。
「あいつら、「abc問題」まで解決したからなぁ」
「それってなんです?」
俺が説明してやったが、高校の数学の知識では理解は難しかった。
ただ、数学界の最大の問題ということは分かった。
「「abc問題」が解けると、数学の難問とされている問題の大半が解けると言われているんだ」
「そうなんですか」
「お前、分かってないよなぁ」
「はい!」
「しょうがねぇ」
「だから、石神さん、絶対に辞めて下さいね!」
「ワハハハハハハハ!」
亜紀ちゃんが夕飯の支度が出来たと呼びに来た。
正利と笑いながら、向かった。
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