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双子と皇紀の修学旅行 Ⅳ
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僕たちはホテルに戻って、他の生徒たちと一緒に夕飯を食べた。
豪華なディナーのフルコースだった。
とにかく量があり、希望者には肉と魚の両方が出て、アラカルトも自由に注文出来た。
妹たちはもちろん、「人生研究会」の幹部たちもみんな普通に食べた。
僕もだ。
夕飯を食べ終えると、自由時間だ。
先生たちも笑顔で夜の街に繰り出して行った。
女性の先生だけで出掛けるグループもある。
でも、日本と違ってマニラ市内でも危ない場所もある。
特に女性だけだと危険だ。
「危なくないのかな?」
「だいじょーぶ! デュールゲリエが監視してるから!」
なるほどー。
スイートルームで、ルーとハーに誘われた。
「皇紀ちゃん、飲みに行こうよ!」
「え?」
「いいじゃん。タカさんもいないんだしさー!」
「うーん」
ちょっと考えた。
ちょっとお酒を飲むくらいはいいんだけど。
「でもなー」
「なんでよ。前は毎晩風俗に行ってたじゃん!」
「それはもう勘弁してぇー!」
「「ギャハハハハハハ!」」
僕は、ちょっとした心配を打ち明けた。
「ほら、僕の格好って、この辺じゃ有名じゃない。だから街を歩くといろいろと面倒なんだよ」
「あー、そっかぁ!」
「大人気だもんね」
「そうなんだ。だからあんまり出歩きたくないんだよね」
僕の顔は知れ渡っていて、昼間もそうだったけど、やたらと声を掛けられる。
そういうことが恥ずかしかった。
二人が考えていた。
双子特有の「超高速思考」だ。
お互いに目を見詰め合いながら、何かを高速に遣り取りしている。
ルーとハーが僕を向いた。
「じゃあさ、変身しよっか?」
「はい?」
「皇紀ちゃん、女装しよ?」
「はい?」
バスルームに連れていかれ、一度髪を洗われた。
ストレートの金髪になる。
ルーとハーが僕に化粧をしてくれた。
髭を丁寧に剃られ、眉も綺麗に揃えられた。
ユニセックスっぽい上に着替え、ルーが腰回りが自由になるタイプのスカートを貸してくれた。
鏡の前に連れていかれる。
あれ、結構いいぞ?
「皇紀ちゃん! 綺麗だよぉー!」
「写真撮っとこ」
二人に散々ポーズを指示されて写真を撮った。
そして二人が金髪の髪をポンパドールにした。
「「ワハハハハハハ!」」
僕が一杯写真を撮らされた。
二人は僕のために、ポンパドールの手入れ方法を身に着けていた。
「じゃー、行こっか!」
夜の街に繰り出した。
なんか、楽しかった。
「皇紀ちゃん、どっかいいお店知ってる?」
「中華料理のお店なら。雰囲気もいいんだよ」
「じゃあ、そこ!」
タクシーを捕まえて、三人で向かった。
以前にフローレスさんに教わったお店だ。
あの人、中華料理が大好きだったなー。
タクシーの運転手が何度もバックミラーを観ている。
傍目からすると、二人の男に挟まれた女性に見えるのだろう。
きっとヘンな想像をしてるんだろうけど、まあしょうがない。
お店に着くと、結構混んでいた。
美味しくて雰囲気の素敵なお店なので、いつも混んでいる。
「カウンター席でしたらすぐにご案内出来ます」
「じゃあ、テーブルが空いたら移らせて下さい」
「はい」
三人で広いカウンター席に行った。
女性が一人で酢豚などを摘まみに老酒を飲んでいた。
カウンターの上に、タブレットを出して何か観ていた。
「隣、失礼しますね」
僕は声を掛けて隣に三人で座った。
「ああ、すみません。荷物どけますね」
タブレットを持ちながら、僕たちを向いた。
「!」
「!」
「「?」」
フローレスさんだった!
まさかここで再会するとは!
「コウキさん!」
「い、いえ!」
慌てて否定した。
フローレスさんは結構飲んでいたようだ。
「あ、すみません、人違いでした。女性の方ですものね」
「い、いえ」
ルーとハーも気付いた。
「ああ、三人ともあの人に似てる……」
「「「……」」」
僕は店を出ようと小声で言ったけど、フローレスさんにも聞こえたようだ。
「そんな! すみません、私がヘンなことを言ったせいで! お詫びに一杯奢りますから! ビールで宜しいですか?」
「いえ、そんな」
フローレスさんは生ビールを3つ頼んで、僕たちに座るように言った。
もう仕方ない。
ここは知らぬ存ぜぬで押し通すしかない。
早めに切り上げて店を出よう。
「本当にすみませんでした。前に別れた彼氏に似てたものですから」
「「「!」」」
ルーとハーが僕の脇を両側からつねった。
「そうなんですか」
「まあ、最初から一緒になるなんて出来なかった人なんですけどね」
「はぁ」
ハーが酢豚と川エビの唐揚げと牛肉の黒コショウ炒めを頼んだ。
長くなっちゃうだろー!
「その人ね、仕事でこっちに来ていたんですけど、日本人だったのよ」
「そうなんですか」
「優しい、真面目な人でね。毎日一緒にいて、どんどん好きになっちゃった」
「そうなんですか」
「私が一方的に好きになってしまって」
「そうなんですか」
ルーがもっと違う台詞を言えと耳元で囁いた。
「日本に帰る前に、私を受け入れてくれたんだけど」
「へ、へぇ」
「最後の一週間は、毎晩私を可愛がってくれてね」
「!」
ルーとハーが僕の脇に強烈なフックを放った。
少し咳き込んだ。
「一回だけじゃなかったの!」
「皇紀ちゃん、後で覚えててね!」
両側で耳に囁かれた。
帰りたいよー。
「今でもその人のことが好きなんですかー?」
隣になったルーが言った。
「ええ。でも、もう会えないし」
「そうですかー」
フローレスさんが老酒のグラスを両手で挟んで、それを観ていた。
寂しそうな顔だった。
「もしも会えたらどうします?」
「え?」
「何か伝えたいこととかない?」
「それは……」
「ほら、全然関係ない私たちなら言っちゃって楽になるかもよ?」
「そう……そうね……」
一瞬ルーを見て、またグラスに視線を戻した。
「そうね。子どものことは心配しないでっていうことかな」
「「「!!!」」」
「フローレスさん! 子どもが出来たの!」
「え、ええ。あれ、私名前を教えたっけ?」
三人で激しくうなずき、「さっき聞いた」と言った。
「ちょっと会議してくるね!」
「会議?」
僕は二人にトイレに連れ込まれ、高速で30発殴られた。
「皇紀ちゃん! 大変だよ!」
「どうすんのよ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「待てないよ! 子どもがいるんだよ!」
「責任取らなきゃ!」
「う、うん」
大変なことになった。
豪華なディナーのフルコースだった。
とにかく量があり、希望者には肉と魚の両方が出て、アラカルトも自由に注文出来た。
妹たちはもちろん、「人生研究会」の幹部たちもみんな普通に食べた。
僕もだ。
夕飯を食べ終えると、自由時間だ。
先生たちも笑顔で夜の街に繰り出して行った。
女性の先生だけで出掛けるグループもある。
でも、日本と違ってマニラ市内でも危ない場所もある。
特に女性だけだと危険だ。
「危なくないのかな?」
「だいじょーぶ! デュールゲリエが監視してるから!」
なるほどー。
スイートルームで、ルーとハーに誘われた。
「皇紀ちゃん、飲みに行こうよ!」
「え?」
「いいじゃん。タカさんもいないんだしさー!」
「うーん」
ちょっと考えた。
ちょっとお酒を飲むくらいはいいんだけど。
「でもなー」
「なんでよ。前は毎晩風俗に行ってたじゃん!」
「それはもう勘弁してぇー!」
「「ギャハハハハハハ!」」
僕は、ちょっとした心配を打ち明けた。
「ほら、僕の格好って、この辺じゃ有名じゃない。だから街を歩くといろいろと面倒なんだよ」
「あー、そっかぁ!」
「大人気だもんね」
「そうなんだ。だからあんまり出歩きたくないんだよね」
僕の顔は知れ渡っていて、昼間もそうだったけど、やたらと声を掛けられる。
そういうことが恥ずかしかった。
二人が考えていた。
双子特有の「超高速思考」だ。
お互いに目を見詰め合いながら、何かを高速に遣り取りしている。
ルーとハーが僕を向いた。
「じゃあさ、変身しよっか?」
「はい?」
「皇紀ちゃん、女装しよ?」
「はい?」
バスルームに連れていかれ、一度髪を洗われた。
ストレートの金髪になる。
ルーとハーが僕に化粧をしてくれた。
髭を丁寧に剃られ、眉も綺麗に揃えられた。
ユニセックスっぽい上に着替え、ルーが腰回りが自由になるタイプのスカートを貸してくれた。
鏡の前に連れていかれる。
あれ、結構いいぞ?
「皇紀ちゃん! 綺麗だよぉー!」
「写真撮っとこ」
二人に散々ポーズを指示されて写真を撮った。
そして二人が金髪の髪をポンパドールにした。
「「ワハハハハハハ!」」
僕が一杯写真を撮らされた。
二人は僕のために、ポンパドールの手入れ方法を身に着けていた。
「じゃー、行こっか!」
夜の街に繰り出した。
なんか、楽しかった。
「皇紀ちゃん、どっかいいお店知ってる?」
「中華料理のお店なら。雰囲気もいいんだよ」
「じゃあ、そこ!」
タクシーを捕まえて、三人で向かった。
以前にフローレスさんに教わったお店だ。
あの人、中華料理が大好きだったなー。
タクシーの運転手が何度もバックミラーを観ている。
傍目からすると、二人の男に挟まれた女性に見えるのだろう。
きっとヘンな想像をしてるんだろうけど、まあしょうがない。
お店に着くと、結構混んでいた。
美味しくて雰囲気の素敵なお店なので、いつも混んでいる。
「カウンター席でしたらすぐにご案内出来ます」
「じゃあ、テーブルが空いたら移らせて下さい」
「はい」
三人で広いカウンター席に行った。
女性が一人で酢豚などを摘まみに老酒を飲んでいた。
カウンターの上に、タブレットを出して何か観ていた。
「隣、失礼しますね」
僕は声を掛けて隣に三人で座った。
「ああ、すみません。荷物どけますね」
タブレットを持ちながら、僕たちを向いた。
「!」
「!」
「「?」」
フローレスさんだった!
まさかここで再会するとは!
「コウキさん!」
「い、いえ!」
慌てて否定した。
フローレスさんは結構飲んでいたようだ。
「あ、すみません、人違いでした。女性の方ですものね」
「い、いえ」
ルーとハーも気付いた。
「ああ、三人ともあの人に似てる……」
「「「……」」」
僕は店を出ようと小声で言ったけど、フローレスさんにも聞こえたようだ。
「そんな! すみません、私がヘンなことを言ったせいで! お詫びに一杯奢りますから! ビールで宜しいですか?」
「いえ、そんな」
フローレスさんは生ビールを3つ頼んで、僕たちに座るように言った。
もう仕方ない。
ここは知らぬ存ぜぬで押し通すしかない。
早めに切り上げて店を出よう。
「本当にすみませんでした。前に別れた彼氏に似てたものですから」
「「「!」」」
ルーとハーが僕の脇を両側からつねった。
「そうなんですか」
「まあ、最初から一緒になるなんて出来なかった人なんですけどね」
「はぁ」
ハーが酢豚と川エビの唐揚げと牛肉の黒コショウ炒めを頼んだ。
長くなっちゃうだろー!
「その人ね、仕事でこっちに来ていたんですけど、日本人だったのよ」
「そうなんですか」
「優しい、真面目な人でね。毎日一緒にいて、どんどん好きになっちゃった」
「そうなんですか」
「私が一方的に好きになってしまって」
「そうなんですか」
ルーがもっと違う台詞を言えと耳元で囁いた。
「日本に帰る前に、私を受け入れてくれたんだけど」
「へ、へぇ」
「最後の一週間は、毎晩私を可愛がってくれてね」
「!」
ルーとハーが僕の脇に強烈なフックを放った。
少し咳き込んだ。
「一回だけじゃなかったの!」
「皇紀ちゃん、後で覚えててね!」
両側で耳に囁かれた。
帰りたいよー。
「今でもその人のことが好きなんですかー?」
隣になったルーが言った。
「ええ。でも、もう会えないし」
「そうですかー」
フローレスさんが老酒のグラスを両手で挟んで、それを観ていた。
寂しそうな顔だった。
「もしも会えたらどうします?」
「え?」
「何か伝えたいこととかない?」
「それは……」
「ほら、全然関係ない私たちなら言っちゃって楽になるかもよ?」
「そう……そうね……」
一瞬ルーを見て、またグラスに視線を戻した。
「そうね。子どものことは心配しないでっていうことかな」
「「「!!!」」」
「フローレスさん! 子どもが出来たの!」
「え、ええ。あれ、私名前を教えたっけ?」
三人で激しくうなずき、「さっき聞いた」と言った。
「ちょっと会議してくるね!」
「会議?」
僕は二人にトイレに連れ込まれ、高速で30発殴られた。
「皇紀ちゃん! 大変だよ!」
「どうすんのよ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「待てないよ! 子どもがいるんだよ!」
「責任取らなきゃ!」
「う、うん」
大変なことになった。
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