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バレンタインデー ワールド・ワイド
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またバレンタインデーの季節が来た。
去年はまた、本当に酷い目に遭った。
だから今年は断固とした姿勢で秘書課と広報課に接した。
「とにかくだぁ! 俺は今後一切チョコレートを受け取らないからな!」
「石神部長! 横暴です!」
「それは君たちだぁ!」
相変わらずの平行線だ。
院長はニコニコしているだけだ。
この人は自分がチョコレートを貰えればそれでいい。
俺が出した電子チョコレートの案は、その年だけしか効果が無かった。
昨年に、「一万人に一人だけ現物を許す」ということを言ってしまったために、とんでもない量のチョコレートが来た。
一江の仕業だが。
今年は数によって公開する俺の映像やCGを流したが、今年はそれも許さないと言うと、秘書課と広報課から猛反発を喰らった。
仕方なく、去年までのCGは許可すると言ったが、それでも納得しない。
そこは俺が折れて、俺の許可が出たものだけはCGの製作を許した。
問題は現物チョコレートだ。
それだけは断固死守しなければならない。
だが俺が1月末に《オペレーション・ティアドロップ》のために数日休みを取った。
その前にも、千石に付き合って石神家本家に行っていた。
それが痛かった。
俺が不在の間に秘書課と広報課が結託して根回しをしていた。
「私たちは十分に話し合いを持とうとしていたのですが、石神部長はいらっしゃいませんでしたよね?」
「うぅ……」
「ちゃんと話し合うつもりだったのですよ?」
「いや、それはさ……」
俺、結構頑張ってたんだけど?
「もう、今年は時間もありません。石神部長の御意志も理解は出来ますので、どうでしょうか? 今年の現物チョコレートは100万人に一人ということでは?」
「100万人かよ……」
去年は2億人を突破したと記憶している。
じゃあ、200個かぁ。
「まあ、仕方ないか」
「それで手を打ちましょうよ」
「君らなぁ」
「ね?」
俺、この病院で結構偉い方なんだけど。
何で子どもが諭されるようなことになってんだか。
「分かったよ。でも、あんまり頑張らないでくれよな。君たちの労力も心配なんだよ」
「石神部長! 優しい!」
「いや」
院長は終始何も言わずにニコニコしているだけだった。
このやろう。
まあ、俺も悪かったわけではないのだが、仕方なく認めた。
この辺りが落としどころだろう。
そして当日を迎えた。
先月にあまり病院に来られなかったので、俺もオペは結構入っていた。
一江たちも優秀なのだが、いろいろな兼ね合いで俺の執刀が望ましいものもある。
特に俺は嫌なのだが政治的というか、相手によっては俺のオペでなければと言う連中もいる。
病院の経営的に断りにくい人間たちだ。
それが2月に入ってから立て込んで行った。
本当にバレンタインデーどころではなかったのだ。
バレンタインデー当日も、俺は目一杯のオペのスケジュールだった。
第一外科部のスケジュール管理は一江に任せている。
一応俺の眼を通すものだが、俺が口を出すことは全くない。
一江は優秀で信頼出来る人間だ。
バレンタインデー当日のオペが多少込み合っていた感じもあったが、別に無理なスケジュールではなかったので、俺はいつも通りにこなして行った。
午後2時に2つのオペを終えた俺は、ようやく昼食にありつけた。
鷹と一緒に六花に頼んでおいた平五郎の弁当を食べた。
「鷹、午後からも頼むな」
「はい!」
俺は昼食を終えて、一度自分の部に戻った。
廊下に段ボール箱が積み上がっている。
山岸がいたので呼んだ。
「おい、あれってまさかチョコレートじゃねぇよな?」
「あ、部長! 正午に広報課の人が運んできましたよ」
「じゃあ、まさか全部チョコレートかよ!」
「はい、そのようですが」
一函に50も入っているとして、全部で段ボール箱は12個あった。
600個だ。
2億人でも200個のはずだ!
どうなっている!
内線で広報課へ連絡した。
「ああ、石神部長! 今年も大盛況ですね!」
「おい、話が違うだろう! 2億人だとしても最大200個のはずだぞ!」
俺は広報課が何か細工して水増ししたと思っていた。
冗談じゃねぇ。
「何言ってるんですか。現在石神部長には既に10億人を超える応募があるんですよ?」
「にゃんだって!」
「後でまた持って行きますからね」
「おい! どういうこどだ!」
俺が怒鳴った所へ、鷹が俺を呼びに来た。
「石神先生、次のオペの準備をお願いします」
「いや、鷹、それがさ」
「お願いします! この後もまだまだオペがあるんですから」
「わ、分かったよ!」
一江がどうしているか聞くと、俺が来る寸前に昼休憩に出たと山岸が言った。
あの野郎のせいかぁ!
俺は怒涛の勢いでオペをこなしていったが、それでも終わったのは夜の6時だった。
チョコレートの件は、何も手が出せなかった。
部に戻ると、大森が青い顔をして待っていた。
「一江はどうしたぁ!」
「帰りました!」
「呼び戻せ!」
「先ほどから携帯が繋がりません。家にも戻っていないのだろうと」
「あんだと!」
制服を着替えた広報課と秘書課の人間がニコニコしてやって来た。
「ああ、やっと終わったんですね! 石神部長、おめでとうございます!」
「……」
「今年は84億9234万2812人でしたぁ!」
「おい! 地球の人口を超えてるだろう!」
「そこは我々もよく分かりません。一江副部長が集計した数字ですので」
「あの野郎!」
8492個もの現物チョコレートが来た。
流石に広報課たちも予想以上だったので、5000個しか用意が無いと言って謝られた。
「三日以内にの頃に3492個をお持ちしますので」
「いらねぇよ」
「ダメですよ! もう当選者の方たちから入金されてるんですから!」
「……」
俺は自分の部屋の椅子にへたばって腰かけた。
「おい、どうしてそんな数になったんだよ」
「一江副部長が、アメリカとヨーロッパ各国の政府、それに南アフリカ共和国やトルコ政府、フィリピンやその他各国政府に情報を流したらしいですよ?」
「なんだそりゃ」
「私たちも意味は分かりませんでした。でも、その後にそれらの国々から大量の抽選申し込みと電子チョコレートの申し込みがありました。もうハッキングレベルで回線がパンクしそうになると、一江副部長が助けてくれまして」
「あー」
《セラフィム》をこんなことに使いやがったかぁ。
「でもよ、世界人口以上っておかしいだろう!」
「そこは我々には。確かに同一人物からの複数IDの応募があったんでしょうけど」
「それは無効じゃないか!」
「そう言われましても! 私たちにどれが無効なものなのかなんて分かりませんよ!」
「!」
まあ、言われてみれば確かにその通りだ。
「そんなことより、石神部長! バチカンのローマ教皇から来たんですよ!」
「なんだって?」
「それにアメリカ大統領とかEC各国の首脳からも! スゴイですよ!」
「……」
「それに、今年は電子チョコレートに100字までのメッセージが登録できるようにしてますから!」
「それ、聴いてねぇけど?」
「読んであげてくださいね!」
「……」
80億×100字だぞ。
「いやぁ、今年も私たち、大満足です!」
「よかったね」
「「「「「「はい!」」」」」」
全員が握手を求めて来たので、握ってやった。
チョコレートは何とかいつも通りの伝手でこなした。
一江は3日間有休を使って休んだ。
温泉旅行に出掛け、行方をくらましていた。
その週の金曜の夜に、一江を拉致してアラスカで「ワキン・バンジー」をやらせた。
大森が号泣して俺に謝って来るので、3回で終わった。
一江は5時間ほど糞便を垂れ流して、気持ち悪い笑いを振りまいていた。
ら、来年は絶対にぃー!
去年はまた、本当に酷い目に遭った。
だから今年は断固とした姿勢で秘書課と広報課に接した。
「とにかくだぁ! 俺は今後一切チョコレートを受け取らないからな!」
「石神部長! 横暴です!」
「それは君たちだぁ!」
相変わらずの平行線だ。
院長はニコニコしているだけだ。
この人は自分がチョコレートを貰えればそれでいい。
俺が出した電子チョコレートの案は、その年だけしか効果が無かった。
昨年に、「一万人に一人だけ現物を許す」ということを言ってしまったために、とんでもない量のチョコレートが来た。
一江の仕業だが。
今年は数によって公開する俺の映像やCGを流したが、今年はそれも許さないと言うと、秘書課と広報課から猛反発を喰らった。
仕方なく、去年までのCGは許可すると言ったが、それでも納得しない。
そこは俺が折れて、俺の許可が出たものだけはCGの製作を許した。
問題は現物チョコレートだ。
それだけは断固死守しなければならない。
だが俺が1月末に《オペレーション・ティアドロップ》のために数日休みを取った。
その前にも、千石に付き合って石神家本家に行っていた。
それが痛かった。
俺が不在の間に秘書課と広報課が結託して根回しをしていた。
「私たちは十分に話し合いを持とうとしていたのですが、石神部長はいらっしゃいませんでしたよね?」
「うぅ……」
「ちゃんと話し合うつもりだったのですよ?」
「いや、それはさ……」
俺、結構頑張ってたんだけど?
「もう、今年は時間もありません。石神部長の御意志も理解は出来ますので、どうでしょうか? 今年の現物チョコレートは100万人に一人ということでは?」
「100万人かよ……」
去年は2億人を突破したと記憶している。
じゃあ、200個かぁ。
「まあ、仕方ないか」
「それで手を打ちましょうよ」
「君らなぁ」
「ね?」
俺、この病院で結構偉い方なんだけど。
何で子どもが諭されるようなことになってんだか。
「分かったよ。でも、あんまり頑張らないでくれよな。君たちの労力も心配なんだよ」
「石神部長! 優しい!」
「いや」
院長は終始何も言わずにニコニコしているだけだった。
このやろう。
まあ、俺も悪かったわけではないのだが、仕方なく認めた。
この辺りが落としどころだろう。
そして当日を迎えた。
先月にあまり病院に来られなかったので、俺もオペは結構入っていた。
一江たちも優秀なのだが、いろいろな兼ね合いで俺の執刀が望ましいものもある。
特に俺は嫌なのだが政治的というか、相手によっては俺のオペでなければと言う連中もいる。
病院の経営的に断りにくい人間たちだ。
それが2月に入ってから立て込んで行った。
本当にバレンタインデーどころではなかったのだ。
バレンタインデー当日も、俺は目一杯のオペのスケジュールだった。
第一外科部のスケジュール管理は一江に任せている。
一応俺の眼を通すものだが、俺が口を出すことは全くない。
一江は優秀で信頼出来る人間だ。
バレンタインデー当日のオペが多少込み合っていた感じもあったが、別に無理なスケジュールではなかったので、俺はいつも通りにこなして行った。
午後2時に2つのオペを終えた俺は、ようやく昼食にありつけた。
鷹と一緒に六花に頼んでおいた平五郎の弁当を食べた。
「鷹、午後からも頼むな」
「はい!」
俺は昼食を終えて、一度自分の部に戻った。
廊下に段ボール箱が積み上がっている。
山岸がいたので呼んだ。
「おい、あれってまさかチョコレートじゃねぇよな?」
「あ、部長! 正午に広報課の人が運んできましたよ」
「じゃあ、まさか全部チョコレートかよ!」
「はい、そのようですが」
一函に50も入っているとして、全部で段ボール箱は12個あった。
600個だ。
2億人でも200個のはずだ!
どうなっている!
内線で広報課へ連絡した。
「ああ、石神部長! 今年も大盛況ですね!」
「おい、話が違うだろう! 2億人だとしても最大200個のはずだぞ!」
俺は広報課が何か細工して水増ししたと思っていた。
冗談じゃねぇ。
「何言ってるんですか。現在石神部長には既に10億人を超える応募があるんですよ?」
「にゃんだって!」
「後でまた持って行きますからね」
「おい! どういうこどだ!」
俺が怒鳴った所へ、鷹が俺を呼びに来た。
「石神先生、次のオペの準備をお願いします」
「いや、鷹、それがさ」
「お願いします! この後もまだまだオペがあるんですから」
「わ、分かったよ!」
一江がどうしているか聞くと、俺が来る寸前に昼休憩に出たと山岸が言った。
あの野郎のせいかぁ!
俺は怒涛の勢いでオペをこなしていったが、それでも終わったのは夜の6時だった。
チョコレートの件は、何も手が出せなかった。
部に戻ると、大森が青い顔をして待っていた。
「一江はどうしたぁ!」
「帰りました!」
「呼び戻せ!」
「先ほどから携帯が繋がりません。家にも戻っていないのだろうと」
「あんだと!」
制服を着替えた広報課と秘書課の人間がニコニコしてやって来た。
「ああ、やっと終わったんですね! 石神部長、おめでとうございます!」
「……」
「今年は84億9234万2812人でしたぁ!」
「おい! 地球の人口を超えてるだろう!」
「そこは我々もよく分かりません。一江副部長が集計した数字ですので」
「あの野郎!」
8492個もの現物チョコレートが来た。
流石に広報課たちも予想以上だったので、5000個しか用意が無いと言って謝られた。
「三日以内にの頃に3492個をお持ちしますので」
「いらねぇよ」
「ダメですよ! もう当選者の方たちから入金されてるんですから!」
「……」
俺は自分の部屋の椅子にへたばって腰かけた。
「おい、どうしてそんな数になったんだよ」
「一江副部長が、アメリカとヨーロッパ各国の政府、それに南アフリカ共和国やトルコ政府、フィリピンやその他各国政府に情報を流したらしいですよ?」
「なんだそりゃ」
「私たちも意味は分かりませんでした。でも、その後にそれらの国々から大量の抽選申し込みと電子チョコレートの申し込みがありました。もうハッキングレベルで回線がパンクしそうになると、一江副部長が助けてくれまして」
「あー」
《セラフィム》をこんなことに使いやがったかぁ。
「でもよ、世界人口以上っておかしいだろう!」
「そこは我々には。確かに同一人物からの複数IDの応募があったんでしょうけど」
「それは無効じゃないか!」
「そう言われましても! 私たちにどれが無効なものなのかなんて分かりませんよ!」
「!」
まあ、言われてみれば確かにその通りだ。
「そんなことより、石神部長! バチカンのローマ教皇から来たんですよ!」
「なんだって?」
「それにアメリカ大統領とかEC各国の首脳からも! スゴイですよ!」
「……」
「それに、今年は電子チョコレートに100字までのメッセージが登録できるようにしてますから!」
「それ、聴いてねぇけど?」
「読んであげてくださいね!」
「……」
80億×100字だぞ。
「いやぁ、今年も私たち、大満足です!」
「よかったね」
「「「「「「はい!」」」」」」
全員が握手を求めて来たので、握ってやった。
チョコレートは何とかいつも通りの伝手でこなした。
一江は3日間有休を使って休んだ。
温泉旅行に出掛け、行方をくらましていた。
その週の金曜の夜に、一江を拉致してアラスカで「ワキン・バンジー」をやらせた。
大森が号泣して俺に謝って来るので、3回で終わった。
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