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アラスカ 砲撃訓練

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 正月2日朝7時。
 私とハーとで、アラスカに来ている。
 今日から「虎」の軍のソルジャーと砲撃訓練をすることになってる。
 要するに、「花岡」の大技をぶっ放す訓練だ。
 一部「ヘッジホッグ」の稼働テストも行なう。
 亜紀ちゃんも一緒にとタカさんに言われたが、亜紀ちゃんは以前に「ヘッジホッグ」で酷い目に遭ったので嫌がった。
 髪、焦げちゃったもんなー。

 一応訓練内容はタカさん、ターナー少将と話し合っている。
 訓練を受けるのは、アラスカの「花岡」上級者以上のソルジャー2000名と、栞ちゃんと士王と桜花さんたち三人。
 それに「セイントPMC」から聖と社員50名。
 日本から斬さんと千両さん、それにジョナサンも来る。

 場所は基地から500キロ離れた荒れ地。
 一応、ミミクンが破壊衝撃を緩和してくれる予定。
 ワキンは上空で結界を張り、訓練内容が外から探られないようにする。

 高速機動車「ファブニール」に分乗して、みんなで訓練場所まで移動する。

 「しのちゃーん!」
 「お嬢!」

 東雲さんの顔を見つけた。
 うちの工事をやってくれてた頃よりも、顔つきが精悍になっている。

 「諸見さーん!」
 「お久し振りです!」

 諸見さんが綾さんと一緒に来た。
 諸見さんは「花岡」上級のソルジャーに昇格していた。
 綾さんとは初めて会ったが、本当に綺麗な人だった。
 それに魂が綺麗。
 あの諸見さんが明るく笑っていた。
 なんか嬉しくなってきた。
 他にも懐かしい人たちがいて、挨拶しまくった。

 ターナー少将が訓練の概要を説明し、全員で出発した。
 今回の訓練の総指揮は東雲さんが執るようだ。
 偉くなったなー。
 一応私とハーは総監督。
 何が違うんだろー。


 


 2時間近くも走って、ようやく砲撃訓練場に着いた。
 「ファブニール」だからこその性能だけど、時速300キロで走行してもそれほど揺れは感じなかった。
 結構な悪路を走って来たのだが。
 
 東雲さんが全員の前で砲撃の方法を説明した。
 2000人のソルジャーと「セイントPMC」の社員さんたちは「ブリューナク」「トールハンマー」「轟閃花」をそれぞれ指定の方向へ指示通りに撃って行く。
 耐久力もテストするので、指示された技をどんどん撃って行くことになる。

 その後に幹部クラスや特別枠の人たちが順次やっていく。
 その時はミミクンだけじゃなくて、クロピョンも来る予定だ。
 破壊力が大き過ぎるためだ。

 午前9時半。
 ソルジャーたちが200人ずつ砲撃を開始した。
 15分程続けて行く。

 「あー、結構いいね」
 「うん。一人でどこの軍事基地でも壊滅出来そうだね」

 ミミクンが破壊衝撃を吸収しているので、地表はそれほど荒れていない。
 みんなで見学しているが、斬さんは千両さんを連れて二人で遣り合っている。
 千両さんも大変だなー。
 それと、聖も自分の社員たちに別途「オロチストライク」を練習させていた。

 訓練場に、10トントラックが5台来た。
 食事だぁー!

 大体ソルジャーたちと「セイントPMC」の社員さんたちの訓練が終わり、昼食になった。
 でかい寸胴に野菜スープとコーンスープ。
 ステーキが2枚500gと、ポテトや豆の付け合わせのプレート。
 ロールパンとライス。
 みんな地面に座って食事をしていく。

 「ルーさん、ハーさん! こっちです!」
 「「はーい!」」

 東雲さんに呼ばれ、私たち専用のバーベキュー台に行った。
 ステーキ肉が30キロある。

 「「いただきまーす!」」

 他のソルジャーたちが大笑いして観ていた。
 これだけの大勢で食べる食事は美味しい。

 



 午後からは超上級者たちのエキシビジョン的な技の披露会だ。
 最初に桜花さんが「桜雷」、椿姫さんが「紅嵐」、睡蓮さんが「黒雷」を見せた。
 先ほどまで連続しての「花岡」の大技にびくともしなかった大地が抉れた。
 みんな拍手をして見ている。
 クロピョンの巨大な触手が地面から出た。
 これ以降はクロピョンが防御に加わるという合図だ。

 栞ちゃんが「星魔」を撃つ。
 クロピョンが護っているので大地は大きく破壊されないが、全員がその威力を理解していた。
 一つの国を消滅させる威力がある。
 さすがだなー。

 士王が斬さんに手を引かれて前に出た。
 ちっちゃい士王ちゃんがヨチヨチと歩いて行くので、みんなが喜んだ。
 「震花」を放った。
 一直線に向かう波動だが、ソルジャーの「ブリューナク」の威力に匹敵していて、全員が驚いた。
 斬さんが顔中を綻ばして士王を褒めて抱き上げた。
 士王も喜んでいた。

 「もう、おじいちゃんは」
 
 栞ちゃんが私たちの傍に来て笑っていた。
 次にジョナサンの「デモン・ブレイク」。
 原子融合で途轍もない破壊力を生み出す。
 クロピョンが結界で囲んで放射線が外に出ないようにした。
 青いコヒーレント光で、大地が包まれた。

 「綺麗だねー」

 ハーが言うと、ジョナサンが笑っていた。
 千両さん。
 「虎王」を抜いて、石神家の奥義を幾つか見せた。
 他の人には分からない。
 斬る対象が無いからだ。
 千両さんはしばらく石神家本家に行って修行していた。
 もう、相当強い妖魔とも渡り合えることが分かった。

 そして斬さん。
 「月光花」を撃った。
 一瞬周囲が闇に閉ざされ、螺旋の光が放たれて行く。
 以前に見た時よりも格段に威力が上がっていて、クロピョンが維持している大地が数キロ先まで大きく抉れた。
 全員がまた拍手する。
 多分、斬さんはもっと大きな威力の技を持っているだろう。
 栞ちゃんの「星魔」よりも威力の高い技だ。
 でも、あの人はここで他人に見せるつもりはない。

 最後に聖がやる。
 最初にハンドガンの「散華」を構えた。
 100メートル先に、クロピョンのでかい触手が生えた。

 「聖! あれを狙って!」
 「お、おう」

 私が言うと、聖はちょっとビビってた。
 妖魔系がまだ苦手なのだ。
 聖は構えて「散華」を撃った。
 銃とは思えない美しい発射音がして、クロピョンの触手が吹っ飛んだ。
 それが何を意味しているのかは、一部の人間にしか分からない。

 聖は続けて「聖光」を構えた。
 今度はさっきよりもずっと太い触手が出て来る。
 直径は2キロあるか。
 聖はそれへ向かって「聖光」を撃った。
 また美しい発射音が響き、クロピョンの触手が爆散した。
 全員が盛大な拍手を送った。
 あの斬さんまで驚いて手を打っていた。

 「お前、凄い武器だな」
 「ああ」
 「お前自身も相当強いな」
 「そうかな」
 「おい、やろう」

 斬さんの血が止まらない。
 私たちが止めようとしたけど、聖が笑って手で制した。

 離れた場所まで移動して二人が向き合い、すぐに激しくぶつかり合った。
 激突する手足から白光が煌めいている。
 二人とも「花岡」を使って攻撃をしている。
 レジストして返し技を使っているので、エネルギーが光になっているのだ。

 「ちょっと! 加減してぇ!」
 
 一つ間違えれば大変なことになる。
 訓練での組手では無い。
 斬さんの顔が歓喜に満ちて行く。

 「お前! やるな!」
 
 聖の表情は変わらない。
 段々こっちまで熱気が届いて来た。
 激突のエネルギーが熱量にも変換されているためだ。
 時々巨大な光と熱が放たれている。
 「ブリューナク」級の大技がショートモーションで使われているためだ。
 威力は変わらない。
 短い動きで実現する、超高度の技だった。
 止めたいのだが、あの達人二人の間に割って入れない。

 斬さんの動きが変わった。
 物凄く嫌な予感がした。
 聖の身体の周囲に光の珠が幾つも浮かんだ。

 「分かった! ここまでじゃ!」

 斬さんが両手を上げて、聖も珠を消滅させた。

 「お前にも届かんかったか!」
 「なんだ?」
 「あやつと同じよ。まさかわしよりも強い奴がこの世に二人もおるとはな」
 「トラのことか!」
 「フン!」

 二人とも着ているものがボロボロになっていた。
 オチンチン、みえてるよー。
 斬さんには千両さんが着物を渡し、聖さんは社員さんから新しいコンバットスーツを渡されていた。

 「終わったかぁ」

 東雲さんが泣きそうな顔で地面にへたり込んだ。
 40分も遣り合っていた。
 観ていた全員が、この世のものではない戦いに呆然としていた。

 「じゃあ、総監督! 締めでお願いしやす!」
 「「おっけー!」」

 私とハーは、新技「ウンコ7分身からのウンコビーム」を披露した。
 7体ずつに分かれた身体から、全てをウンコに変える超絶ビームを撃つ。
 14カ所の地面が大量のウンコになった。
 物凄い臭いが風に乗ってこっちに来た。
 200人くらいが、お昼ご飯を戻した。
 栞ちゃんと斬さんと聖に物凄く怒られた。
 スゴイ技なんだよ?

 
 
 しかし、最後に斬さんは何をやろうとしてたんだろう。
 聖のあの光球も気になる。
 多分、あれらが出たら、二人とも無事には済まなかっただろうけど。
 なんであそこまでやるかなー。

 「ほんとの虎の穴」で豪華な食事をして、栞ちゃんのとこで一泊して帰った。
 斬さんと聖のことを聞いて、東雲さんが、タカさんから電話でめっちゃ怒られていた。

 しのちゃん、ガンバー。
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